トップインタビュー

2026年10月13日 NEW

株式会社ベルシステム24ホールディングス
代表取締役 社長執行役員 CEO 梶原 浩 様

インタビュー動画

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「D&I推進は、5つの経営課題を解決してくれる」
3万人を支えるベルシステム24のダイバーシティ経営

目次
  • 日本初のコールセンター専業企業──ベルシステム24の歴史と強み
  • 「多様な人材が企業を強くする」 ベルシステム24のD&I推進戦略
  • 地方拠点の意識改革から評価制度まで── 女性管理職比率向上の舞台裏
  • AIを活かしたダイバーシティ&インクルージョン施策はすでに始まっている
  • ダイバーシティは「特定の誰か」のためではなく「全ての人」のため

横尾理事長(以下、横尾)  第10回のJ-Winトップインタビューは、ベルシステム24ホールディングスの代表取締役 社長執行役員 CEO梶原浩様にご登場いただきます。
J-Winトップインタビューでは、CEO会議にご参加いただいている経営者の皆様に、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)推進のお考えや直面する課題への取り組み、そして経営トップとしてのご決意などをお聞きしてまいります。
まずは梶原社長のご経歴からお聞かせいただけますか。

梶原社長(以下、梶原)  私は1990年に伊藤忠商事株式会社へ新卒で入社しました。 大学では理工学部で衛星通信を学んでおり、当時、伊藤忠商事が衛星通信事業を民間で初めて手掛けようとしていたんですね。その募集をきっかけに、通信関係の仕事に携わりたいと思って入社しました。

その後、ニューヨークに2年半ぐらい駐在し、衛星通信に関しては向こうの方が進んでいましたので、新しい技術を取り入れて戻ってきて、今の「スカパー!」を立ち上げる仕事をしていました。
その後も、大手企業と組んで光ファイバーを使った映像配信ビジネスをしたり、携帯電話の普及に携わったりと、いろいろな新規事業を手掛けてきました。
伊藤忠商事に34年間在籍し、新規事業としていろいろなものを作ってきた、というのが、私の前半の経歴になります。

その後、2024年にベルシステム24ホールディングスの社長に就任し、現在で2年半になります。
ベルシステム24は1982年にコールセンター専業としてスタートしました。当時は新しい会社と言われていましたが、創業から44年が経ち、今は成熟期を迎えていると感じています。

横尾  就任3年目をお迎えになったということで、ベルシステム24について、ご自身のご感想をお願いします。

梶原 就任前の2020年から2022年まではコロナ禍でした。
コロナ禍では、人と人との接触を避ける動きが広がり、コールセンター業界には新たな需要が生まれました。“コロナバブル”とも呼ばれ、2020年から2022年にかけて売上・利益は大きく伸びました。
その後、2023年頃にバブルが終息して業績は落ち込みましたが、その局面を引き継ぐ形で、私は2024年に社長へ就任しました。
まずは、コロナバブルの影響で増えていた人員や拠点を適正な規模に戻し、組織を筋肉質な体質へ改善していきました。
2024年から2025年にかけてようやく戦う体制を整えることができ、2026年からはAIも活用しながら、会社の成長に取り組んでいます。今がちょうど3年目ですね。

日本初のコールセンター専業企業──ベルシステム24の歴史と強み

横尾  次に、先ほども少し触れていただきましたが、ベルシステム24の歴史と事業内容について教えていただけますか。

梶原 創業は1982年9月20日です。当時、システムインテグレーター会社の先駆けであったCSKの大川 功 社長が「これからの日本はコールセンター専業が必要だ」と確信して、新しく作った会社がベルシステム24です。
今、日本には「コンタクトセンターの日」という記念日があるのですが、実はベルシステム24ができた9月20日なんです。
ですので、コールセンター専業としては、老舗中の老舗という企業となります。

横尾  なるほど、日本初の本格的なコールセンター専業企業として創業されたということですね。
また現在は、他社の業務プロセスを一括で受託するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)に業務を拡大させているとも伺っています。
ベルシステム24の強みは何でしょうか。

梶原 まずは、今お話ししたとおり、1982年創業で歴史が長いということですね。
コールセンターを44年間ずっとやっていますので、ノウハウがたまっているということが非常に大きいです。
今、年間5億件の対話データを扱っていますが、5憶件のデータがたまっているのも強みですし、従業員一人ひとりにノウハウが蓄積されているのも強みです。

顧客となる企業数としては、約1,700社です。業種は多岐にわたり、金融系、製造業系、サービス系からエネルギー系まで、幅広い分野のお客様がいることも強みの一つですね。

これからはAIも使って、コールセンターをもっとより良いものにしていこうと思っています。このAI活用も、他のコールセンターに先駆けてやっていますので、その辺りも強みだと思っています。

横尾  顧客基盤、つまりお客様の基盤や、従業員の方々を含む事業基盤の大きさ・幅広さというのが、最も大きな強みということですね。

梶原 その中でも、人が基盤です。なにより人が一番大事ですね。
これまで私はいろいろな事業をやってきましたが、「人」がこれだけの利益を生み出す事業は初めてなんです。

商社では「ものを買って売る」が基本でした。
ここでは「人が売上原価」になっていて、「人が利益を生み出す」んです。

そういう仕事は初めてなので、やはり「人が資源」と言いますか、「人が全て」というのは、この会社の社長を2年半やってみて、大きく実感しているところですね。

「多様な人材が企業を強くする」ベルシステム24のD&I推進戦略

横尾  2年半で「人が全てと気づいた」というお話は印象的ですね。
御社が、女性活躍を含む「人材と働き方の多様性」を、経営上の最重要課題と位置付けられている、ということにもつながります。
社長として、なぜ経営にD&Iが必要だとお考えですか。

梶原 私が社長として確信を深めてきたのは、「D&Iは、この会社にとって非常に重要である」ということです。つまり、D&I施策を進めることによって、いろいろな課題が解決すると思っています。

まずは、「人材不足の解消」です。今はどの企業も人材確保に苦労しています。
当社グループには約3万人の従業員がいますが、年間でおよそ1万人が退職し、新たに1万人を雇用しています。この1万人の採用が非常に難しいのですが、D&Iを進めることで、より幅広い人材を採用できるようになります。
人材不足の解消につながるという点は、大きな意義だと感じています。

次に、多種多様な人々が働いていることで、イノベーションが起こりやすいと感じています。
従業員の中に、女性や、ハンディキャップのある方、LGBTQ+の方もいらっしゃいます。
いろいろな発想や意見が生まれますから、そういうところでイノベーションが起こりやすいというのは、日々感じていますね。

横尾  なるほど。人材面のメリットをまずは感じているということですね。

梶原 さらに「顧客の理解促進」という面でもいい影響が生まれています。
当社の約1,700社のお客様はいろいろな業界にわたりますので、画一的な人材だけで対応していては、お客様の多様なニーズや価値観を十分に理解しきれず、きめ細かな対応が難しくなることもあると思います。
いろいろな人がいることによって、いろいろな業界・人々の対応ができる。顧客の理解促進による、サービスの質向上への効果もあると思っています。

加えて、従業員のエンゲージメントという意味でも、プラスがあります。
従業員に多様な人がいることで、働きやすく、長く活躍できる環境を作れると思いますので、エンゲージメントにとっても重要です。

そして最後に、当社は上場しているので、投資家目線からも価値を生んでいると思っています。D&Iを推進している会社となると投資をしやすくなります。

この辺りが、D&I推進の源泉になっています。

横尾  今、経営のいろいろな観点から、1つの軸として、また経営戦略として、D&Iの推進を続けているというお話がありました。
では、具体的にどのような取り組みをなさっているか、ご紹介いただけますか。

梶原 私が社長になる前の話になりますが、当社のダイバーシティ推進は「Bell-Win」という女性活躍支援・両立支援の仕組みからスタートしました。
2016年からは、人事に「ダイバーシティ推進グループ」を組織しまして、約10年間、その組織で様々な取り組みを行ってきました。

ダイバーシティ推進グループの活動は、人事だけではなく、現場の社員も参加する「D&Iプロジェクト」をメインとしたボトムアップ型の活動です。
LGBTQ+、子育て、男性育休、健康経営、多様な働き方、介護など、いろいろな課題を現場から吸い上げ、制度を作って終わりではなく、声を拾いながら進化させている組織です。

D&Iプロジェクトは、非常にいい取り組みだと思っていますし、本当にボトムアップができていると感じています。

横尾  人事主導の活動だけではなく、現場からのボトムアップ活動も盛んに行われていることがよくわかりました。
つまり、D&I推進活動を「経営と現場の両輪」で進めているのが御社の特徴と理解しました。

梶原 はい、社長である私が、自ら率先してやらなければいけないとも思っています。
ですので、経営者の観点から、トップがちゃんとメッセージを出して、D&Iの考え方を浸透させるということも意識してやっていますね。

横尾  トップのメッセージやコミットメントは、とても重要ですから、折に触れて社内にメッセージを出していらっしゃるのはすばらしいですね。

J-Win活動においても、梶原社長はJ-WinのCEO会議に全ての回にご出席されて、いろいろとご議論いただいています。
私どもも大変助かっていますし、社長としてのご自身の意味付けみたいなものをしっかり持ってやってらっしゃるので非常に心強い限りです。引き続きよろしくお願いできればと思いました。

梶原 お願いします。

横尾  そして社員の皆さんが、ダイバーシティ・インクルージョンへの理解が深まり、やりがいを持って働くことが、最終的にクライアント企業への「質の高いサービス」として還元される。
この好循環を創り出すことこそ、経営者の役割だとお考えになっている、そう理解しました。

写真左/「ベルプライド月間」を盛り上げる本社カフェでのPR活動(中央が梶原社長)、
写真右/社員一人ひとりの声を活かすD&Iプロジェクトの取り組み

地方拠点の意識改革から評価制度まで──女性管理職比率向上の舞台裏

横尾  次に、現状と課題についてお伺いします。
貴社では2026年度初めに女性管理職比率が24.8%に達したと聞いております。
当初の計画を大きく上回ったということですが、非常に大きな成果であり、私自身も大変驚きました。

2016年当時の女性管理職比率は10.8%だったと聞いておりますが、この9年間かなりの工夫があったのでしょうか。あるいは推進力としてのリーダーシップが効いたのでしょうか。

梶原 私が社長になってからは、なるべくリーダーシップを発揮して、女性管理職比率を上げるようにしてきました。
具体的な例としては、この間のJ-WinのCEO会議でも発言させていただいたのですが、数値目標を明確にして、役員とか本部長以上には、例えば報酬の評価指標にこの数値目標を入れました。意識しますから、おのずと上がってくる…という手法を取りました。

横尾  この手法が効果的だったということですね。それにしても、この大幅な達成はなかなかのものです。あまり見ない例です。遅れる会社はいっぱいあるんですけど…(笑)。

梶原 そうですね。やっぱりまじめな社員、まじめな役員が多いのではないでしょうかね。

横尾  そして現在は、女性管理職比率30%を目指していらっしゃると。

梶原 そうですね。 2031年度に女性管理職比率30%を目標としています。

横尾  では、先ほどお話しに出た、前回のJ-Win CEO会議での発言について、さらに深掘りしてお伺いします。
会議では、参加した社長の皆様に「社内変革に必要な、意識変化を促す工夫」についてお尋ねし、有意義な議論が数多くありました。

その中で、梶原社長からは「①本部長の評価指標に女性管理職比率を加えたこと」、「②都市と地方における意識格差」、「③エンゲージメントを高めること」というご発言がありました。このご発言は、私自身も非常に印象的でした。

①は先ほど言及いただいた「報酬の評価指標」にもつながる話ですよね。
私自身は「②都市と地方における意識格差」について、改めて感じるところがありました。

この3 つのポイントについて、少し詳しくお聞かせいただけますか。

梶原 こちらの3つの工夫ですね。順にご説明します。

「社内変革に必要な、意識変化を促す工夫」
(1)評価・責任の明確化 (役員株式報酬制度の非財務指標)
(2)都市と地方での意識差という全国展開企業ならではの課題はある
(3)D&I推進がエンゲージメントと顧客価値につながる

(1)は、先ほどもお話しした、評価・責任の明確化です。
D&Iの目標を評価指標にちゃんと入れて、人事考課に響かせるということ。数字を目標にすることで、結果的に意識改革ができます。

(2)は、都市と地方の差についてですね。
当社の拠点は、全国に35あります。毎年1回は必ず行って、そこで働く従業員と対話するようにしています。そこで感じるのは、D&Iに関しては、地域で意識に格差がある点です。
なるべく各拠点に行った時には意識を改革していただくために、「世の中こうなってきていますよ」とか「我々の会社として、こういう目標を立てているんですよ」とか「D&Iは重要ですよ」という、経営としても重要視していることを伝えています。

(3)はエンゲージメントについてで、全社員が働きやすい環境を作ることにつながります。
各拠点でも、全ての方が働きやすい環境を作るには、全国の格差も是正していくことが重要です。
これがエンゲージメントの向上につながっていくと考えていますので、D&I推進活動をこれからもしていきたいと思っています。

横尾  なるほど。 評価という仕組みで本気度を示しつつ、地方特有の意識の壁にも丁寧にアプローチされているのですね。
確かに、地域の意識差というのは、生活とか文化、昔からの習慣に根付いているので、まさにおっしゃったように、必ず1年に1回行かれて対話することで、経営トップのコミットメントを示すことにつながりますよね。それによって現場の意識・雰囲気が変わっていくという、好循環を生む施策だと感じました。

AIを活かしたダイバーシティ&インクルージョン施策はすでに始まっている

横尾  D&Iを社会的価値創造につなげているか、というテーマに関して、冒頭お話が出た、「AIとの共生」についてもお伺いします。
現在、御社では、ユーザー企業参画型の生成AI活用プログラム「生成AI Co-Creation Lab.」を始動させ、数年以内に生成AIと人によるハイブリッド化、さらには完全自動化を目指すとされています。
業務プロセスがAIに置き換わっていく中で、とくにコールセンターでお客様とのやりとりを行う社員(コミュニケーター)にはより高度な役割が求められていくと考えられます。
このテクノロジーの進化は、コミュニケーターをはじめとする従業員の方々の働き方をどのように変えていくとお考えでしょうか?

梶原 今、AIをかなり活用し始めていますが、全てがAIに変わるのは、時間がかかると思っています。
単純な業務はAIに任せる一方で、複雑なことは人間が担う。例えば、定型的な問い合わせはAIで自動化を進めつつ、人はより高度な対応に注力できる、などです。
その役割分担が進むことで、人間はより創造的な仕事に注力できるようになるのではないかと思っています。それを最初に実現できるのがコンタクトセンターではないかと考えており、なるべく早く実現するために、AIの活用をやっていければと思っています。

横尾  AIは人の仕事を奪うものではなく、人がより付加価値の高い業務に集中・挑戦するための力になるということですね。
社内ではプロジェクトチームなどで動いているのでしょうか。

梶原 そうですね。私直轄でAIのプロジェクトがあります。
これは社員向けですけれど、社員の皆さんがAIに慣れ親しんで、活用できるように、という活動を行っています。
ちなみに、中期経営計画2028でも、AI活用と人材活躍の両立をより強化して進めていく方針です。

AIを全社員の武器とし、ヒトならではの価値創出を強化する

横尾  御社のAIプロジェクトによって、多様な人材がそれぞれの強みを活かして、新しい役割に挑戦できる環境が、より広がる未来を期待しています。

ダイバーシティは「特定の誰か」のためではなく「全ての人」のため

横尾  最後になりますけれども、社長がダイバーシティや多様性に取り組む際に抱いている信念、本気の覚悟について、ぜひお聞かせいただければと思います。

梶原 D&I推進は、私たちにとって非常に重要だと思っています。 そしてD&I を推進することが、5つのことを解決すると私は思っています。

まずは、先ほども申し上げたように、人材不足の解消です。
D&I を推進することでいろいろな人を採用できるようになりました。これにより、会社にとって多様な人材が確保できるようになるのが、1つ目です。

2つ目は多種多様な人々がいることによって、イノベーションを起こしやすくできるということ。

3つ目は、顧客理解の促進。お客様が1,700社あれば、1,700通りの顧客対応があります。
そのとき当社に多種多様な人材がいることによって、お客様に寄り添ったきめ細かい対応ができます。その意味でも、多様性はコストではなく投資であり競争力そのもの、と考えています。

そして4つ目が、従業員のエンゲージメントの向上。
働きやすい環境を作ることは大前提ですが、そのうえでいろいろな従業員がいることによって「私も働けるんだ」と感じてもらえる、安心感につながるエンゲージメントの向上が期待できると思っています。

最後は、投資家目線ですね。
我々は上場企業ですので、投資家目線から見ると「D&Iを推進している会社には、投資をしやすくなる」という面もあると考えています。

これら大きく5つの課題に幅広く貢献できると考えており、私にとって、このD&I推進は経営指標の1つとなっています。
私にとって、ダイバーシティは「特定の誰か」のためではなく、従業員、顧客、投資家を含む「全ての人」のためになる考え方だと思っています。

横尾  よくわかりました。
梶原社長のお話を聞いておりますと、経営戦略の一環ではありますけれど、施策というよりは文化の醸成であり、多様性は企業の強みそのものであるという信念をお持ちということですよね。
ベルシステム24のD&Iの取り組みは、人の多様性がそのままイノベーションの源泉になり、企業の力になり、BPO業界をリードする御社の経営戦略であると理解しました。

梶原 はい、その通りです。

横尾  特に「安心して働ける職場の整備」「女性が活躍できる職場づくり」という抽象的な方針も、データドリブンで非常に着々と進化させているのが、おそらく梶原社長ならではの経営手法かなと感じましたね。
現代の経営者は、人手不足や管理職の成り手不足に悩んでいます。この点に悩む多くの経営者にとって、非常に示唆に富む取り組みであると強く感じ入りました。ありがとうございました。

本日はベルシステム24ホールディングス 代表取締役 社長執行役員 CEOの梶原 浩 様にJ-Winトップインタビューにご登場いただきました。
誠にありがとうございました。

インタビュアー : J-Win理事長 横尾敬介

●連載「J-Winトップインタビュー」 過去9回の動画・記事は下記よりご覧いただけます
https://j-win5.jp/topics_tax/top_interview/