トップインタビュー

2026年02月05日

一歩を踏み出す勇気が未来を拓く
多様な人材が自分らしく力を発揮できるNTTテクノクロスへ

NTTテクノクロス株式会社 代表取締役社長 岡 敦子 様

インタビュー動画

インタビュー動画は下記をクリックし、再生してください。

目次
  • 「多様性を確保すること」は、企業の持続的な成長に寄与する
  • 女性活躍は女性のためではない。企業成長に必要な経営課題
  • 全社講演会では「9割」がダイバーシティや女性活躍推進に納得
  • 社内ワークショップで男性幹部自らが「組織としてのアクション」を宣言
  • チャンスの神様は前髪だけ。NTT株式会社で初の女性取締役が語る「挑戦の勇気」
  • 多様性を力に変えるリーダーを育て、社会の持続的発展に貢献

「多様性を確保すること」は、企業の持続的な成長に寄与する

横尾理事長(以下、横尾)  本日は、NTTテクノクロスが推進するダイバーシティ&インクルージョン(D&I)と女性活躍への取り組みについてお伺いしたいと思っています。まずは御社の事業内容、事業としての強み、注力されている分野などについてお話しいただけますか。

岡社長(以下、岡)  NTTテクノクロスは、NTTの研究所による研究成果と、国内外の先端技術をかけあわせて、社会やお客様の課題解決に貢献する企業です。私たちは、お客様ビジネスをより良くするために、特に「CX(お客様体験)」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「EX(従業員体験)」「セキュリティ」の4つの分野で、役立つ製品やサービスの提供と、システムインテグレーション(SI)を行っています。

CX(お客様体験)分野では、NTTの研究所が開発した高精度な音声認識技術やAIを活用し、コンタクトセンター向けのサービスを提供しています。これにより、企業の顧客接点の質やスピードを向上させ、業務の効率化も実現します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)分野では、金融や交通、公共などさまざまな業界で、データ分析を活用した新しい価値の創出を支援しています。これにより、業務の効率化や新サービスの開発が加速し、競争力アップにつながります。
EX(従業員体験)分野では、リモートワークなど多様な働き方を支えるツールやサービスを提供し、社員の生産性向上や働きやすい職場づくりをサポートします。
セキュリティ分野では、さまざまなサイバー脅威から企業を守る製品やサービスに加え、情報セキュリティマネジメントシステムにかかわる専門的なコンサルティングも行っています。これにより、安心してビジネスを展開できる環境を整えます。

これらの取り組みを通じて、お客様の課題解決や成長をしっかりと支援し、より良い未来を共に創っていきます。

横尾  AIやセキュリティといった最先端の分野で成長を続けるためには、多様な視点とともに事業環境の変化にも柔軟に対応して、持続的な競争力を維持することが大切だと思いますが、この辺りはどのようにお考えですか。

  近年、テクノロジーの進化やグローバル化、社会課題の複雑化で企業の課題は多様化し、対応のスピードも求められています。こうした環境では、異なる価値観や背景を持つ人材が意見を出し合い、新しいアイデアを生み出すことが不可欠です。これは、企業の方向性を決める意思決定層においては特に重要です。経営層と現場の両方で多様性を確保することが、企業の持続的な成長に欠かせません。だからこそ、私たちはD&Iを経営戦略の中心に据えています。

女性活躍は女性のためではない。企業成長に必要な経営課題

横尾  岡社長は現在、J-Win CEO会議メンバー、さらにJ-Win Executiveネットワークメンバーとしても活動されています。D&Iについて、日頃から深くお考えの岡社長から見て、「日本の女性活躍がなぜ進まないのか」について、現状と課題をお聞かせいただけますか。

  日本の女性活躍は、世界経済フォーラムのグローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2025でG7最下位、世界148か国中118位と低い状況です。国を挙げて取り組んでいますが、他国の進展が速いため順位は上がっていません。改善が進まない背景には、D&Iの重要性が十分に理解されていないことや、意識変革の遅れがあります。また、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)により、育児中の女性への一方的な業務負担軽減がかえって活躍の機会を制限している場合もあります。
女性活躍は女性のためのものではなく、企業成長に必要な経営課題です。多様な意見が企業の持続的成長に不可欠であり、多様性推進の第一歩がマイノリティの中のマジョリティである女性、つまり女性活躍推進なのです。単に多様な人材をそろえるだけでなく、多様な人材を活かす組織の成熟が求められています。

横尾  岡社長がNTTテクノクロスの社長に就任されたことにより社内のD&I推進、女性活躍推進の取組にはどのような変化が表れたのでしょうか。現状の認識や、課題と感じている点をお聞きします。

  就任当初、NTTテクノクロスにおけるD&I推進、特に女性活躍については、進展はしているものの、課題もまだあると感じました。
就任前の2020年には、人事部にダイバーシティ&インクルージョン推進室を設置し、パイプライン管理と積極的な女性管理職の登用を始めていました。就任翌年の2024年には、重要な経営課題として推進を加速させるため、経営企画部にサステナビリティ推進部門を新設し、その他のサステナビリティの課題解決とともにD&I推進をさらに強化しています。

横尾  どんな変化がありましたか?

  まず正社員の女性比率は、18.8%となり、過去8年で1.7倍に増加しました。女性管理職比率は9.0%となり、3倍に伸びました。ただ、経営層や技術系管理職の女性比率はまだ低く、積極的なポスト割り当てが必要です。
また、ライフイベントと仕事の両立については、キャリアを分断しないことが大切です。安心して休める環境を整えるだけでなく、キャリアにブレーキをかけずに成長し続けたい人に向けたスキルアップの施策など、選択肢を増やして働ける環境をサポートし、キャリア形成を後押しすることが必要であると考えます。

全社講演会では「9割」がダイバーシティや女性活躍推進に納得

横尾  社長就任の2023年以降、新たに取り組まれた女性活躍推進について、具体的なお話をお聞かせいただけますか。

  幹部社員を含めた社員一人ひとりの意識改革と、社外ネットワークへの積極的な参加を推進しています。意識改革では、社内での共通認識を醸成するために、「女性活躍が企業の成長になぜ必要なのか」について、全社員を対象とした講演会を開催しました。

横尾  講演会の目的が、女性活躍が企業の成長に必要であることを社内の共通認識とするためのもの、というのがとてもいいですね。 具体的な講演内容や社員の皆さんの反応について教えてください。

「なぜ組織や会社の成長には、ダイバーシティが必要なのか?」「女性活躍は逆差別?」など、現場からよく挙がりがちな声や、もやもや解消に答えるため、外部の講師に講演をお願いし、全社員に参加を呼びかけました。なお、当社は技術者、理系の社員が多いので、定量的な数値データで示すことで納得感を高めるように講演内容に工夫もしました。
講演後のアンケートで、「必要性が理解できた」と答えた社員は9割を超え、多くの社員に納得感を得てもらえたようです。とはいえ、こういったメッセージは一過性では定着はしません。幹部が社員に繰り返し伝え続けていくことが必要であると考えています。

横尾  J-Winではダイバーシティ経営を加速させるには4つの戦略視点が必要であるとしています。「女性の意識改革」「男性の意識改革」「働く環境・制度の整備」そして「経営トップのコミットメント」です。
1番目の「女性の意識改革」については、無意識の自己限定により「どうせ自分には無理」「あんな働き方はできない」と思い込んだり、昇進・昇格への意欲の低さといった問題がよく例に挙げられますが、NTTテクノクロスでは、どのような取り組みをされていますか。

  一律対応ではフィットしないため、個人に応じた支援が必要と考えています。当社は女性の技術系管理職が少ないため、外部のメンタリングサービスを活用し、聞きたい内容に応じて社外メンターをアサインして多様な女性リーダーとの対話を促進しています。社内で言いにくいことも心理的安全性を確保して自由に発言しやすくなりますし、新たな視点や気づきを得ることにもつながります。
また、女性社員の課題や悩みを、NTTグループ各社の女性役員がサポートする「ラウンドテーブル」への参加や、J-Winへの派遣など、社外交流も積極的に進めています。さらに、女性社員の成長に大きく影響する上司に向けては、コミュニケーションやフィードバック研修を実施して、サポート体制を強化しています。

社内ワークショップで男性幹部自らが「組織としてのアクション」を宣言

横尾  男性の意識改革の取り組みについてはいかがでしょうか。古い価値に縛られ、異なる視点を排除しがちなオールド・ボーイズ・ネットワークに代表されるような男性管理職の意識改革についてはどのような取り組みをされていますか。

  男性管理職も含めた組織風土、さらには全社を変えていくためには、組織長や役員の腹落ちとアクションが重要です。男性の経営幹部に対しては、J-Win男性ネットワーク出身の外部講師を招いたワークショップを開催し、全社員講演会と同様に「D&I推進が経営戦略であること」の理解促進と、その第一歩となる「女性活躍推進を自分事としてコミットして、行動すること」を促しています。
男性管理職にとって当たり前と思っていた行動や発言が、実はアンコンシャス・バイアスであり、多様性を阻む壁になっていることがあります。ワークショップはそこへの気づきを与えることにもつながったと考えます。

今年度は、D&I推進や女性活躍推進について、組織長自らが「組織としてのアクション」を宣言し、今期の事業計画として取り組みを進めています。組織長が宣言し施策化することで、男性管理職のマネジメントにおいても本気度が高まり、さまざまな気づきや行動の変化につながっていくでしょう。また、この取り組みを継続することで、組織的・全社的な推進が定着するものと考えています。

横尾  経営トップの本気の覚悟とコミットメント、女性の意識改革、男性の意識改革が企業文化の変革へとつながっていくわけですね。

  女性社員自身がキャリアを主体的に描く意欲を持つことと同時に、上司を含めた周囲が多様な働き方やキャリア選択を後押しする風土をさらに醸成していく必要があります。
課題はありますが、だからこそ私たちはD&Iを経営の重点課題とし、女性リーダー育成やキャリア支援プログラム、柔軟な働き方の整備を進めています。こうした取り組みを通じて、女性も自分らしいキャリアを描き、それを実現できる会社にしていきたいと考えています。

チャンスの神様は前髪だけ。NTT株式会社で初の女性取締役が語る「挑戦の勇気」

横尾  岡社長は、現在のNTT株式会社で2019年に女性初の取締役に就任され、現在はグループ会社の社長に就任されています。まさにご自身で道を切り拓いてこられた、働く女性のロールモデルですね。後進となる女性の皆さんに向けて、メッセージがありましたらお聞かせください。

  女性は、「リーダーとして、一歩を踏み出すこと」に躊躇してしまう方も少なくありません。皆さんは、自分の限界は自分でつくらないでください。上司や周りは、あなたができると思うから任せたいのです。周りの方の評価と自分の可能性を信じましょう。
そして、「チャンスの神様は前髪しかない」という言葉の通り、目の前に来たチャンスは絶対に逃さず、勇気を持って挑戦してほしいです。たとえ結果がうまくいかなくても、どうやって立て直したか、どうリカバリーしたかまでを会社はちゃんと見ているとお伝えしたいです。

横尾  心強いアドバイスありがとうございます。勇気をもって挑戦してもらうためにも、期待する上司や周りが、その思いを伝えることも大切ですね。

多様性を力に変えるリーダーを育て、社会の持続的発展に貢献

横尾  NTTテクノクロスがD&Iのビジョンとして「多様な人財がCROSSしながら能力を最大限発揮し、成長しつづける会社」を掲げる中で、人材育成、働く環境の制度改革などの取り組みとその成果などについても教えてください。

  当社には「自ら学び続け、社員同士で高め合う社風」があり、社員が主体となって運営する業務支援や学習コミュニティが多くあります。会社主導のキャリア形成から、本人のやりがいを重視し、自律型キャリア形成へシフトする一環として、会社としても支援をしています。さまざまな育成の成果により、述べ2,704名の社員が、ハイレベル&ミドルレベルの社外公的資格を保有しています。 また、多様な人材が柔軟に働ける環境整備にも力を入れています。成果の一例としては、出産や育児を経ても「在宅勤務やフレックスを活用しながら専門性を高め、プロジェクトリーダーを務めて活躍や昇進等につながった」といった社員の事例が出てきています。
制度が単なる仕組みにとどまらず、実際にキャリア継続や活躍の後押しになっていることを実感しています。
今後も制度を整えるだけでなく、それを積極的に活用し合える職場文化を広げることで、多様な人材が自分らしく力を発揮できる環境をさらに強化していきたいと考えています。

横尾  取り組みがきちんと見える形で成果に繋がっているのが素晴らしいですね。
最後に、本気の覚悟を持って、D&Iの推進を企業に根づかせようとされている岡社長に、改めて経営トップとしてのD&I推進にかける想い、さらには会社をどう導きたいのか、未来へのコミットメントについてお聞きかせください。

  NTTグループ全体としては、「NTTは挑戦し続けます。新たな価値創造と地球のサステナビリティのために。」を中期経営戦略として宣言しています。その実現には、多様性を尊重し、一人ひとりが力を発揮できる組織づくりが不可欠です。NTTテクノクロスもその一翼を担い、推進役として、D&Iを先導する存在を目指します。
未来に向けては、社員が自分らしいキャリアを描き、力を結集して価値を創出する文化を根付かせ、多様性を力に変えるリーダーを育て、社会の持続的発展に貢献していきます。
私自身も、社内外の仲間とともにD&I推進に本気で取り組み、挑戦を続ける覚悟です。

横尾  本日は、NTTテクノクロス 岡社長に、事業への想いとD&I推進にかける本気の覚悟をお聞かせいただきました。急速に変化する事業環境の中で、多様な人材の力を結集して未来を切り拓こうとされる姿勢に、大きな勇気と示唆をいただきました。

制度や仕組みを整えるだけでなく、それを活かし合える組織文化を育み、さらにはNTTグループ全体の方向性と結びつけて推進されている点は、多くの企業にとっても参考になると感じます。 そして、社員一人ひとりが自分らしくキャリアを描き、社会に新しい価値を生み出すという未来へのコミットメントは、まさにD&I推進の本質だと思います。

岡社長、本日は貴重なお話をありがとうございました。J-Winとしても、引き続き御社の取り組みを応援するとともに、日本社会のD&I推進に貢献してまいりたいと思います。

インタビュアー : J-Win理事長 横尾敬介