J-Winダイバーシティ・アワード
2025年09月22日
「2025 J-Winダイバーシティ・アワード」特集

2025 J-Winダイバーシティ・アワードで企業賞を受賞された4社より、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の優れた取り組みや女性活躍推進などについてご寄稿いただきました。
以下に紹介いたします。
「2025 J-Win ダイバーシティ・アワード」受賞企業4社の取り組み紹介
企業賞 アドバンス部門
企業賞 ベーシック部門
企業賞【アドバンス部門】 大賞
三井住友信託銀行株式会社
DE&Iで未来をひらく信託力
三井住友信託銀行株式会社
人事部ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン推進室 室長 中西 勝代
■三井住友トラストグループが目指すDE&I
2024年、三井住友トラストグループは創業100年を迎えました。三井住友信託銀行は、当グループの中核を担い、信託と銀行機能を融合した高度かつ多様な専門性を活かし、資産運用・管理、不動産などの分野で独自の価値を創造しています。三井住友トラストグループは、「託された未来をひらく」というパーパスのもと、DE&Iの考え方を経営理念のひとつとして位置づけています。「個々人の多様性と創造性が、組織の付加価値として存分に活かされ、働くことに夢と誇りとやりがいを持てる職場を提供する」ことをミッションの一つに掲げており、多様な社員の相互作用で独自の価値を創出することは私たちのDNAであると考えています。
■DE&Iの取り組みについて
当社のDE&I推進体制として、2016年より人事部内に「DE&I推進室」を設置しています。各事業統括部にも兼務者を配置し、事業部門と連携しながらグループ関係会社とも協働し、グループ一体で取り組みを進めています。社員に対しても、研修やEラーニング、社内広報などを通じて、DE&Iの浸透と風土醸成を図っています。
▼図①:DE&I推進室の歴史と主な施策のタイムライン
■女性活躍推進・両立支援について
当グループは、日本経済団体連合会の「2030年30%へのチャレンジ」に賛同し、2030年までに女性役員比率30%以上の実現を目指し、2028年3月末までに課長以上のラインのポストにつく女性比率を26%以上とするKPIを設定しています。
三井住友信託銀行では、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、2030年までに女性管理職比率30%の達成を目指し、2028年3月末までに課長以上のラインのポストにつく女性比率を26%以上、マネジメント業務を担う女性比率を34%以上とするKPIを設定し、女性登用のパイプラインの拡充と上位の意思決定層への登用加速に取り組んでいます。その一環として、役員自ら女性社員の育成を担う「サポーター役員制度」や、マネジメント登用前層を対象とした「女性リーダーシップ研修」などを実施し、女性のキャリア形成を積極的に支援しています。
また、社員一人ひとりのライフスタイルに応じた柔軟な働き方の実現と、ライフイベントに左右されないキャリア構築を支援するため、両立支援制度の充実や利用しやすい風土の醸成にも注力しています。三井住友信託銀行では、男性社員の育児休業取得を積極的に推奨しており、平均取得日数は20日以上に拡大しています。さらに長期の休暇が可能となる「ベビーケア休暇」の取得も奨励し、男性の育児参加を後押ししています。
DE&Iは、イノベーションを生む組織づくりの原動力であり、私たちはこれからも「託された未来をひらく」ために、挑戦と開拓を続けてまいります。
▼図②:女性管理職の状況
企業賞【アドバンス部門】 準大賞
NTT株式会社
NTTグループにおけるD&I推進10年のあゆみ
NTT株式会社
総務部門 ダイバーシティ推進室長 出口 直子 様
■NTTグループにおけるD&I推進の位置づけ
「新たな価値の創造とグローバルサステナブル社会を支えるNTT」をめざし「事業を通じた社会課題の解決」をミッションとしているNTTグループにとって、D&Iは重要な経営戦略です。私たちは、D&Iを、新たな価値創造に必要な企業文化の土台として位置づけています。特に変化への対応とイノベーション創出、ガバナンス強化をその意義として期待されており、D&Iトップメッセージや社内研修等を通じて発信をしています。
歴史的に、電話事業では交換手として女性が多く働いていたことから、女性にとって働きやすい環境の整備は進んでおりましたが、意思決定層への女性登用が本格化するのは、2010年代からです。2013年の「女性管理者倍増計画」以降、育成・制度・数値目標との三位一体でD&Iを強力に進めています。
■目標設定とパイプライン管理
NTTでは、意思決定層における多様性の確保の観点から、入社から役員登用までの一連のパイプラインを構築しています。役員、管理職など、各層のストックにおける比率および新たにその層に流入するフローについても数値目標を設定しています。
特に新任管理者における女性比率の目標については、役員・管理職への報酬連動を実施しています。
数値目標の設定により、新任女性管理者登用比率に連動して女性管理者比率も実績は着実に上昇しているものの、更なる取り組みが必要です。
そのため、女性社員本人のマインド醸成・スキルや経験の獲得促進、周囲や上長の理解醸成、長時間労働を前提としない多様な働き方の促進といった多面的な角度から施策を行っています。
■女性社員本人への支援
女性社員のマインド面への支援:女性役員と女性社員のラウンドテーブルを開催しています。「育児と両立する管理者像を描けない」、「周囲に女性管理職のロールモデルがいない」という声に応え、女性役員との対話を通じたエンパワーメントを実施しています。層別、悩み別(キャリア迷子/両立の悩み等)でグループ分けをし、少人数の親密な雰囲気で円卓を囲み、横のつながりも獲得できる工夫をしています(参加者の満足度99%)。初年度22年は首都圏のみでの開催でしたが、参加者の声から地方エリアの課題(地方コミュニティにおける出社前提の働き方や性的役割分業意識の強さ)がわかり、23年は地方を含め9都市28回で開催。24年はさらに実施規模を全国に拡大するとともに、女性部下を持つ男性社員向けの実施などの新たなアプローチにチャレンジし、56回開催し、1,200名の参加者がありました。今年度は、男性社員向けも含めてさらに進化させていきます。
■組織長・上長・周囲のD&I理解促進
女性社員のスキル・経験獲得には、組織長や上長のD&I理解促進、育成意識の向上が必要です。このため育児・介護・治療との両立支援、男性育休経験者のパネルディスカッション、アンコンシャスバイアスや過剰な配慮など多様なテーマで全社員向けセミナーを開催しています。
近年お客様のニーズは多様化し、社会課題は複雑化し、技術進化のスピードは増しています。このため、社員一人ひとりがそれぞれ専門性を高め、異なる分野や異なる文化の知識や価値観を結びつけながら、イノベーションの創出に挑戦する必要があります。そして意思決定の場において、多様性のあるメンバーが率直に意見を出し合うことで、同質的な組織が陥るリスクを乗り越えることができます。
日本国内約19万人、海外約14万人の多様性を成長の原動力とするためには、お互いの違いを尊重し、理解に努め、受け入れる姿勢を持つこと、インクルージョンが必要です。誰もがありのままに意見を述べられる場をつくり、真摯に議論を重ねてより良いアイディアを探求することで、多様性は力になります。
NTTグループはこれからも、多様な人材が活躍する組織づくりに取組むと同時に、社会におけるD&I推進にも貢献してまいります。
企業賞【ベーシック部門】 大賞
株式会社PFU
「PFUでのダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン推進に向けた取り組み」
株式会社PFU
人事統括部 人材開発部長 矢口 孝彦 様
PFUでは、2030年に向けた長期経営計画において「 多様な人材の創出」を掲げております。AI技術を取り入れた商品開発など、イノベーションを創出し続けていくためには、多様性のある人材ポートフォリオの実現が必要です。そのためにも、自律型人材を育成し、それらの人材が活躍できる環境づくりが不可欠だと考えております。
■ 目指す姿 「多様性を尊重し 誰もが自分らしく活躍できる企業文化の醸成」
PFUでは、多様性ある人材が活躍できるために、企業文化の醸成を重点施策に置いています。その柱が①女性活躍推進②障がい・外国籍・LGBTQ+理解促進③仕事とプライベートの両立支援の3つです。
■ 女性活躍推進の取り組み
全社でDEIを推進すべく、あらゆる女性活躍推進の取り組みを行っております。 経営トップのコミットの観点より、以下3点をピックアップしご紹介いたします。
■ 経営トップと女性リーダーとの対話
経営陣が積極的に現場の声を聞くべく、社長や部門担当役員が、社員との対話の場を設けております。2024 年度は、社長・副社長と女性リーダーとの対話の場を設けました。それ以外にも社長と社員との対話の場を設け、あらゆる部署の社員を対象に、男女を問わず、ざっくばらんに会話しています。
部門担当役員と社員との対話の場では、部門内で部署をまたいで、少人数で対話しております。対話テーマも年度ごとに変えております。2024年度のコーポレート部門での実施回数は、50回に及びました。
■ トップ・役員メッセージの発信
社内にDEIポータルを設け、経営陣自ら、DEIへの思いや経験を定期的に発信しています。 例えば「DEIと私」や「DEIに関するメッセージ」というテーマで、全役員がメッセージを発信しております。上述のように、経営トップ自らがDEIに取り組み、社員へ周知する姿勢を大切にしております。
■ 人事委員会
人事委員会のミッションは、将来のリーダー候補を計画的に選抜・育成する 「パイプライン構築」 です。全役員と人事にて開催しております。人事委員会では、DEI関連の数値についても議論しております。例えば、女性管理職比率の現状把握と目標値を共有し、次なる女性管理職候補者についても協議しております。委員会での議論を経て、2024年度は新たに18名の女性管理職が登用され、女性管理職比率が大幅に増加しました。
また、登用後のアンケート結果を経営陣へ共有し、管理職同士の横のつながりを求める声があったことから、現場のフォローを依頼するとともに、女性管理職ネットワーク構築のためのプログラム企画にもつながりました。
■ 女性活躍推進指標の変化
様々な施策を実施するだけではなく、各指標を定期的に捉え、施策の効果を測っております。 各種女性活躍指標も全体的に向上しており、2024年度は、社員の意識調査においても 「多様性から新たな価値が生み出されていると思う」などについても、前年比伸び率が大幅に増加しております。
■ 今後の展望
上位職から一般社員まで、包括的なアプローチで、多様なバックグラウンドを持つ人材が自律的に活躍できる組織風土をつくってまいります。やりたいアイディアはたくさん沸いてきておりますが、優先度をつけ、効果が高い取り組みよりスタートさせていく所存です。
企業賞【ベーシック部門】 準大賞
株式会社商工組合中央金庫
「商工中金のダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン~変化につよい組織づくりに向けて~」
株式会社商工組合中央金庫
DE&I推進部 部長 船曵 泰雄 様
商工中金は、PURPOSE「企業の未来を支えていく。日本を変化につよくする」の実現に向け、お客さま・社会への価値提供と当金庫自身の企業価値向上の両立を目指し、経営戦略の礎となる組織文化の更なる変革を進めています。多様な視点や能力、価値観を持つ社員一人ひとりが公正・公平な機会を通して活躍できる環境を整備し、多様な人財の能力発揮と働き手のWell-being向上を実現するため、DE&I推進に積極的に取り組んでいます。
■ 組織風土・企業文化の形成
新たな時代に相応しい組織風土・企業文化を形成し、大切にすべき考え方を共有するために、2022年3月に企業理念(PURPOSE・MISSION)を制定しました。以降、全役職員を対象とした「パーパスワークショップ」を毎年開催し、一人ひとりが中長期的に実現したい姿「マイパーパス」を策定するなど、PURPOSEを中心とした価値観醸成に取り組んできました。2024年10月には「CHUKIN Way」を制定しました。CHUKIN Wayは、 PURPOSEに向けた具体的な行動を起こしやすいように5つのストーリーで構成し、当金庫が大切にしてきた価値観やDNAを言語化するとともに、中小企業が抱えるさまざまな課題に広く柔軟に対応できる組織となるべく、未来に向けて必要となる価値観も加えて編纂しています。
女性活躍推進にあたっては、2026年度末時点女性管理職比率20%を一般事業主行動計画にて掲げておりますが、課題として①上位職の育成・登用、②パイプライン形成のための女性社員育成、③働き方改革を認識しております。課題に対しての取組内容は下記の通りです。
■ 上位職の育成・登用
「役員メンター制度」
課長、次長層の女性社員(メンティー)を対象に役員(メンター)が1on1形式の面談を行い、キャリア形成上の課題解決に向けたサポートを受ける育成制度。キャリア形成における悩みを相談するだけでなく、月次でディスカッションテーマを設けることで、メンター・メンティー双方が互いの考えを学び、理解し合う場としても活用しています。
■ パイプライン形成のための女性社員育成
「チャレンジ・カレッジ」
受講者が近い将来のリーダーになるために、仕事やキャリアを振り返り、周囲からの期待を受け止めたうえで、職場でよりよい影響力を発揮できるようになることを目指し、成果をあげるチーム運営や組織視点の持ち方などビジネスフレームを学びつつ、自己変革に取り組む研修です。
「営窓キャリアプログラム」
本人の希望に基づき一定期間法人営業の業務に試行的に従事できる制度。バックオフィス業務からのキャリアの複線化、新たなキャリアパスへのチャレンジをサポートしています。
「つながるプロジェクト」
全国から手挙げで女性社員が集まり、ダイバーシティ経営に関する基調講演や会社づくり・家庭との両立に関する分科会を通じて自身のキャリアデザイン×組織貢献を考える労使共催の研修。今年度は約100名の女性社員が参加、部門や地域を超えた交流の場となりました。
■ 働き方改革
「YOHAKUプロジェクト」
タイムパフォーマンスを意識した働き方を推進することで、一人ひとりの時間に「余白」を生み出し、その「余白」を活用して家庭の充実、自己研鑽、社会課題への意識向上などに取り組むことで、個々の人財価値(=じぶんのきほん)を大きくしていきます。また、長時間労働からの脱却により、育児や介護などライフステージに応じた柔軟な働き方が可能となり、キャリアと家庭の両立を実現できる環境を目指します。こうした人財価値の向上は、当金庫のPURPOSEとの接点を広げ、一人ひとりが当金庫で働く中で描く自己実現(=マイパーパス)の集合体が大きくなることで、商工中金全体の成長につながります。そして、社会への貢献度を高めることで、PURPOSEの実現を目指していきます。