トップインタビュー

2025年03月21日

[記事]多様性が導く企業変革
~NTTが描く未来型組織への挑戦~
日本電信電話株式会社 代表取締役社長 島田 明 氏

女性管理者倍増計画から始まったNTTグループ変革への道

横尾 本日はJ-Winトップインタビューにご参加いただき、ありがとうございます。NTTグループでは人材の多様性を活かすことで、変化する世の中に対応し、イノベーションの創出を実現するというお考えから、D&Iを重要な経営戦略として位置づけられています。まずは、そのような考えに至った経緯からお聞かせください。

島田 日本が停滞していると言われていますが、私はその大きな要因の一つが多様性に欠けているところにあるのではないかと考えていました。特に、日本社会では女性の活躍推進が諸外国から比べて遅れていることは大きな課題となっています。

私は2012年に持株会社の総務部門長に就任し、その翌年に「女性管理者倍増計画」を策定しました。当時、女性管理職比率はわずか約3%でしたが、この計画で倍増をめざしたのです。

おかげさまで順調に数字は伸び、前倒しで目標を達成することができました。そして次の目標として2025年までに15%まで引き上げる新たな計画を策定しました。

横尾 倍増して、さらに倍増というのは非常に意欲的な目標設定ですね。具体的にはどのように推進していらっしゃるのでしょうか。

島田 女性の管理職比率15%という目標を達成するためには、毎年新たに任用する管理職の約30%を女性にしていかなければならないことが逆算して数字で出てきます。そこで2021年にグループ全体で、新任女性管理職者登用比率30%(毎年)という新たな目標を設定しました。昨年度はおよそ28%まで来ています。
全体で15%という比率はまだまだ低いと認識しています。やはり「ポストが人を育てる」という側面もありますので、まずは一定水準まで着実に数字を伸ばし、組織に多様性を確保していくことが必要だと思います。

グローバルスタンダードから見えた日本の課題

横尾 島田社長ご自身が深くコミットされていることはよくわかりました。
このD&I推進への想いというのはどこから生まれたのでしょうか。海外勤務のご経験の影響などもあるのでしょうか。

島田 D&Iについて意識するようになったきっかけは、1990年代から2000年代のロンドンおよび米国での経験です。そこで私と同じポジションのリーダーは女性でした。主要メンバーには男女両方がおり、職場の中で女性が果たしている役割の大きさを強く感じていました。特に印象的だったのは、専門性を重視した採用の点においては日本とまったく異なっていることでした。
むしろ、グローバルスタンダードから見ると、日本の方が特殊な状況にあるのかもしれません。この認識から、現在では、NTTグループでも専門性を重視した人事制度への変革を進めています。

横尾 私も1980年代に海外勤務を6年ほど経験しましたが、職場には女性が比較的多く在籍しており、ビジネス交渉の場でも男女が対等に議論を交わしていました。一方、日本に戻ると男性中心の環境で、その違いに違和感を覚えました。その意味で、先ほどの社長のご指摘に強く共感いたします。

ジョブ型人事制度への大転換と人材育成プールの整備

横尾 数値目標として女性役員比率、管理職比率などを詳しくお話をいただきました。
この数値目標の達成に向けた新たな取組みや人材育成プログラムなどについてお聞かせいただけませんか。

島田 弊社の持株会社の取締役・監査役は合計15名おり、そのうち女性比率は40%となっています。取締役は40%、監査役も40%です。持株会社の中には部門長が11ポストありますが5名が女性ですので45%程度を占めています。幹部にはかなり女性が登用されていますが、最終的には50%に到達するのが当たり前だと思っています。

これを推進していくには人を育てていかなければならないことから人事制度そのものを大きく変えました。2020年7月から上級管理職を対象に、2021年10月からは全管理職を対象にジョブ型人事制度を導入しました。
このジョブ型人事制度に伴い職能資格やランクを廃止し、適材適所で人事を行うための人材プール、「NTT University(幹部候補人材プール)」を新たに構築しています。
この中には5年以内に役員をめざす「Next Executive Course」、その下に30代後半から一部40代で将来の幹部候補をめざす「Future Executive Course」を設置しました。
これらのプログラムにおいても、女性比率30%の女性幹部候補者をつくる仕組みを導入しています。

専門性重視の人事制度改革への挑戦

横尾 先日、島田社長にもご出席いただいたJ-Win CEO会議で、男性管理職の方から「数値ありきの目標設定」を疑問視する声が上がりました。そのとき島田社長からは、数値目標まで引き上げてから育成する、という考え方を示されたのがとても印象的でした。
一方で人材の質の担保も重要だと思いますが、NTTグループではどのようなアプローチで両者のバランスを取られているのでしょうか。

島田 ジョブ型の人事制度では、一般社員に対しても専門性を重視した制度に変更しています。
ただ従来型の中で、新たな制度により追い抜かれるのではないかと心配される人も当然います。人事制度に限りませんが、常に変化をしチャレンジしてさらに上の仕事をめざしていくことを社員一人ひとりが学んでほしいと思っています。 学ぶ機会は平等に提供します。自らがそれを選択して次のステージに上がる中で切磋琢磨し、キャリアを築いていくことが重要だと思っています。

理系分野における女性人材の確保に課題

横尾 「日本の上場企業における女性活躍の現状については、一つの特徴的な課題があります。多くの企業で課長職までは一定の女性比率を達成できているものの、部長職以上や役員層になると、その比率が急激に低下する傾向が見られます。NTTグループの場合はいかがでしょうか。

島田 先ほど持株会社の取締役会女性比率が40%、執行役員で約45%と申し上げましたが、これはグループ会社から私が引き上げたからです。
グループ会社全体では、2025年までに25%から30%の役員の女性比率を目標にしています。

直近年度では、NTTグループ全体での女性の採用は約4割です。
研究所も直近年度では、かなり頑張って新卒採用予定の女性比率が5割を超えました。
もう少し理系専攻の女性が増えないと、我々のようなテクノロジーをビジネスにしている企業では厳しくなります。だからこそ理系専攻の女性を増やすための施策をこれから、いろいろな企業の方と一緒になって取り組む必要があると思っています。

再チャレンジできる仕組みをつくる
新たなチャレンジで自分の価値を上げる

横尾 人事制度改革、特に段階的なジョブ型への移行については、相当な困難があったのではないかと推察されます。社員の方々の受け止め方はいかがでしたでしょうか。

島田 2023年にジョブ型の人事制度を取り入れ、従来だと一つのランクごとの昇格体系だったものが、飛び級によりポストに就く人が約2割となりました。
最も早い人では最大7年分の飛び級となります。そうなると今度はポストオフになる人も出てくるわけですから、再チャレンジや別の分野でチャレンジしてもらうことを促す仕組みも必要になってきます。
海外では基本的に昇格しなければ外に出る仕組みです。日本の場合は基本的に終身雇用が前提となっていますが、自分のスキルに合っていないなら別の場所でチャレンジすることはやってもらえばいいと思っています。
過去にNTTグループ外に転職した社員の「アルムナイ(退職者)ミーティング」を行っています。今年は約300人が集まり、いったんNTTグループから外に出た方との意見交換を行い「いつでも戻ってきてもいい」というイベントも行っています。
現実に持株会社の役員の中にも、2社、3社とチャレンジして戻ってきている人もいます。
他流試合をして、またNTTグループに戻ってくることも含めて自分のスキルに合った仕事を選択していくこともこれからは必要だと思います。
グループ内で頑張るのも良し、新たなチャレンジにより自分の価値をもっと上げられる可能性もあります。要は人材の流動性が高まる仕組みにすること自体が、日本の成長力にも繋がると思っています。

リモートスタンダードが示す新しい働き方

横尾 最後に人材育成に限らずNTTグループとして変革を進められていくと思いますが、これからの来るべき世の中に向けてめざしていく方向性について教えてください。

島田 コロナ禍でリモートワークをせざるを得なかった期間がありました。最近は職場への出勤へ回帰する企業もあると聞いています。
私はリモートワークとオフィスに来て働くことの組み合わせだと思っています。
「リモートスタンダード」という制度を導入しており、約5万人の社員が対象ですが、組織ごとにリモートスタンダード適用の可否を指定し、利用可能な組織はどこでも働くことができます。
全国でリモート勤務している社員がおり、出張等で移動する費用については全額会社で負担する仕組みにしています。
その一方で、出勤して、チームが顔を合わせることも非常に重要です。
リモートワークで仕事をすること、例えば、育児中の方にはとても好評です。しかしグループとしてのベクトルを合わせるとか、経営方針、グループとしての方針を共有する場合は、集合して意識を合わせることも大事だと思います。

メンバーがオフィスに集合した際には楽しくあるべきと思います。
社員が読みたい本を揃えて自由に貸し出せる仕組みやビールサーバーが置いてあるフロアなどもあります。予約制ですが17時30分以降は無料で飲めます。
そこでコミュニケーションを取りながらチームビルディングを行うことができます。

オフィスには一人で集中できるボックス席や、リモートワークでお客様とのミーティングを集中してできるスペースをつくったり、従来とは違うオフィス環境づくりとともに、ハイブリットな働き方ができる仕組みを整えていく必要があると考えています。

横尾 ハイブリッドな働き方は多様性の時代においてとても重要な要素になっていくと思います。本日は、社長の強い決意と実行力、そして企業の競争力と人材育成の密接な関係性について学ばせていただきました。貴重なお話をありがとうございました。

島田 私どもNTTグループもJ-Winの活動に積極的に参加させていただき、さらなるD&I推進に向けて一層努力してまいります。本日は貴重な機会をいただき、ありがとうございました。

インタビュアー : J-Win理事長 横尾敬介

インタビュー動画