オールド・ボーイズ・ネットワーク

2025年06月17日

成長の機会を奪う見えない壁「オールド・ボーイズ・ネットワーク」とは

世界経済フォーラムから男女格差を測る「ジェンダー・ギャップ指数」が発表されています。
2025年版の日本の順位は148カ国中118位。男女格差の是正平等を力強く推進する諸外国と比べ、大きく取り残されている結果となっています。
変化が激しい事業環境にあって、企業競争力を継続的に強化するためには、イノベーションを起こし、新たなビジネスモデルにチャレンジしていくことが極めて重要となります。そのためには組織の中核を成す意思決定層に多様な価値観を持つ人材の登用が必要であり、グローバルでは多くの企業がダイバーシティ&インクルージョン(D&I)、女性活躍の推進を有効な経営戦略であると認識して、積極的な取り組みを行っています。
日本では女性活躍に向けた制度、施策が整っているにも関わらず、女性の管理職はなぜ増えないのでしょうか。NPO法人J-Winでは女性活躍を阻む問題は大きく3つあると考えています。「将来像が見えない」「仕事と家事/育児とのバランス」、そして「オールド・ボーイズ・ネットワーク」です。

女性活躍を阻む3つの問題

D&I、女性活躍を阻む壁となっている「オールド・ボーイズ・ネットワーク」とは何でしょう。
終身雇用、年功序列が長く続いた多くの日本の企業では男性がマジョリティであり、同じ成功体験を持つ彼らが中心となって企業風土や仕事の約束事がつくられてきました。しかし、性別による役割分業意識や組織の中で仕事を進めるために大切な教育や暗黙知はマイノリティである女性にはほとんど伝えられていないことから、これが女性活躍を阻む要因となっているわけです。
「私たちの会社にはオールド・ボーイズ・ネットワークはない」と感じている方もいらっしゃいます。しかし、それはもしかしたら、ご自身がそのネットワークの中にいるからこそ、その存在や影響が見えにくいだけかも知れません。


そこでJ-Winの女性ネットワークメンバーに「オールド・ボーイズ・ネットワーク」と考えられるものに、どんなものがあるのかを聞いてみました。

男性がつくってきたビジネスルール

自分達の経験によって得た知識前提で話を進めていく/暗黙の了解/根回し文化

男性だけのネットワークの場

男性同士の雑談、タバコ部屋、飲み会、ゴルフコンペなどでの情報交換・意思決定

上司(役員)に対する忖度文化

上位職の会議になるほど意見がでない/議論が少なくなる/本音を言わない

無意識の行動・バイアス

昇格者を無意識に男性から選ぶ/必要な会議に女性を呼ばない/資料・情報を共有しない

女性への過剰な配慮、思い込み

チャレンジングな業務、緊急・トラブル対応は男性/サポート業務は女性がおこなう

職場環境

空調温度設定/食事の時間/歩く速さ/深夜・長時間労働/早朝出勤


つまり、「オールド・ボーイズ・ネットワーク」とは

組織に根強く残る「同質性のネットワーク」。
明文化されていない約束事やルール、仕事の進め方といった、その組織を支えてきた文化や風土が、無意識のうちに多様な人材の成長や挑戦の機会を阻む構造を指します。

これまでマジョリティであった男性を中心に培われてきた為、「オールド・ボーイズ・ネットワーク」 または 「オールド・ボーイズ・クラブ」と言われています。

さらに特徴的なものを加えれば、「世界中に存在しているが、特に日本ではその度合いが強い」こと、それは「モノカルチャー、年功序列、終身雇用」が生んだもの。それでも、オールド・ボーイズ・ネットワークは悪いことばかりではなく、「時代の変化がゆるやかな時には意志統一がやりやすい、安心感と結束力が高い」などの評価を受けてきました。

かつて日本は高い経済成長により、世界から<JAPAN AS No.1>と言われていました。 多くの日本人が共有した成功体験です。しかし、一度 勝ち取った成功体験を打ち破ることは難しく、デジタル技術の革新によって世の中がどんなに変化しようとも、多様な発想や新しい価値観を排除し、変革することを無意識のうちに拒み続けてしまったのです。

「オールド・ボーイズ・ネットワーク」の壁を低く、薄くする

世界中、どこにでもある「オールド・ボーイズ・ネットワーク」。マジョリティであり、長い期間、実権を握ってきた人達にとっては都合のよい暗黙の文化や雰囲気です。グループ以外のメンバーには積極的に知らせていない、苦労して築き上げてきた自分たちの地位や役割を奪われたくないと考える「オールド・ボーイズ・ネットワーク」の壁を少しでも低く、薄くするにはどうすればいいのでしょうか。

先ずは「オールド・ボーイズ・ネットワーク」に気づき、自分事化すること。そして「見える化」することが必要となります。
世の中が大きく変わろうとしている時に、これまでのやり方を続けるのは難しいことです。これまで、閉ざされたコミュニティで受け継がれてきた約束事やルール、仕事の進め方といったことを、誰もが知ることのできる、誰もが理解できるように言語化や数値化によって「見える化」することなのです。
ここでの「見える化」とは、多様性を受け入れる新たな「文化」を生みだしていくことです。そして、この文化こそが、企業経営の継続的な強化へと繋がっていくことを理解しなければなりません。

J-Win活動プログラム

J-Winの活動プログラムには、女性リーダー育成支援の「女性3層ネットワーク」と、企業支援の「D&I推進3層システム」があります。 「女性3層ネットワーク」と「D&I推進3層システム」

J-Win男性ネットワーク

D&I推進3層システムにおいて、男性管理職層を対象にChange Agent(組織変革の仕掛け人)を目指していくのが、3層の中央に位置する「男性ネットワーク」です

男性ネットワークでは女性活躍を阻む問題「オールド・ボーイズ・ネットワーク」をテーマに、グループワークやディスカッションなどを通じてダイバーシティ推進の本質価値に気づき、理解を深めていきます。
女性活躍を推進するために男性管理職がとるべき行動や施策を自らが考え、実行に結び付けていく活動となっています。2025年度は100名の男性ネットワークメンバーが参加しています。

男性ネットワークの目的

「オールド・ボーイズ・ネットワーク」に関する情報

内閣府男女共同参画局より広報誌「共同参画」が発行されています。
女性の所得向上・経済的自立に向けた取組の推進として、固定的な性別役割分担意識やアンコンシャス・バイアスの解消に加え、「オールド・ボーイズ・ネットワーク」に着目した広報啓発が行われました。

・月刊総合情報誌「共同参画」

2025年10月号:指導的地位への女性登用を組織の成長につなげる。『オールド・ボーイズ・ネットワーク』から『新しいリーダーの時代』へ

2025年11月号:男性管理職たちが 『オールド・ボーイズ・ネットワーク』 を理解し、自分事として受止めることから始まる - J-Win男性ネットワーク

2025年12月:OBNがつくってきた企業文化を変革する。経営トップに必要なのは D&I推進への『本気の覚悟』 と 『徹底したコミットメント』

・「オールド・ボーイズ・ネットワーク」 に関する啓発動画

2025年4月公開:『オールド・ボーイズ・ネットワーク』をご存知ですか?
ご自分の企業や組織に古い慣習やルールが存在していないか考えてみませんか?

・「チェンジエージェントに訊く」男性ネットワーク卒業生インタビュー

2025年6月公開:男性の行動こそがDEI推進の鍵! J-Win男性ネットワークOBの栗原健輔氏(有限責任監査法人トーマツ)が語る自身の意識改革と組織を動かす熱意とは