J-Winダイバーシティ・アワード

2022年03月11日

「2022 J-Winダイバーシティ・アワード」特集

2022 J-Winダイバーシティ・アワード

2022 J-Winダイバーシティ・アワードで企業賞を受賞された4社より寄稿いただいた、各社のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の優れた取り組みや女性活躍推進について、以下にご紹介します。

「2022 J-Win ダイバーシティ・アワード」受賞企業4社の取り組み紹介

受賞結果・授賞理由はこちら

 

企業賞【アドバンス部門】準大賞 日本アイ・ビー・エム株式会社

社員が輝ける環境の実現
~トップのコミットメントと継続した取り組みの大切さ~

日本アイ・ビー・エム株式会社
人事 ダイバーシティー&インクルージョン パートナー 杉田 緑氏

日本IBMでは、「社員が輝ける環境の実現」のために、経営トップの強いコミットメントのもと、社員自らが変革する文化を推進し、時代の変化や社員の新たなニーズから生じる課題を解決すべく、柔軟に取り組んできています。
女性がキャリアを継続していく上で直面する課題を自ら確認し、結果に結びつく施策を実行していくため、1998年には社長直下の諮問委員会として「Japan Women's Council(JWC)」を発足しました。JWCでは現場で活躍する女性役員自らがリーダーとなり、JWCメンバーと共に現状把握・課題分析を行い様々な施策を実行しています。加えて、2005年からは女性技術者・研究者コミュニティーCOSMOS(コスモス)を立ち上げ、技術者・研究者ならではの課題にも取り組んでいます。
こうして社員と経営層が一体となって、柔軟な働く時間・場所に関する制度を1980年代から取り入れて仕組みづくりをしてきました。

日本IBM「社員が輝ける環境の実現」

その甲斐もあり、順調に各レイヤーにおける女性比率も伸び、このまま順調にいきそうという段階で、5年ほどコミュニティー活動を停止した期間が2010年代にありました。すると、シンクロしたように、管理職比率が13~14%で停滞し、全く伸びませんでした。
そこで、管理職比率が伸びない原因を特定・解決すべく活動を再開し、改めて「意思決定の場にダイバーシティー&インクルージョンを」を目標に掲げ、2019年からは多様な声を取り入れるべく男性社員も複数人、JWCに参画するなど、多角的な視点での議論を活性化させています。また、原因を特定する調査の中で明らかにされた、「マネージャーのアンコンシャス・バイアス」や「マネージャーになりたくない女性社員の声」などの気づきは、外部に調査レポートとして公開しています。

ジェンダー・インクルージョン施策の危機(外部リンク)

上記の調査結果などを通じ、明らかになった課題に対し、改善する取り組みとして、2019年から女性管理職育成プログラム「W(ダブル)50」を開始しました。W50では、各部門からノミネーションされた女性が約1年かけてマネージャーとなるため、互いにネットワーキングをしながらスキルやマインドを学びます。また、一人ひとりにスポンサーがつき、スポンサーは責任を持ってW50メンバーの成長やキャリア開発を支援します。プログラム卒業後2年で約60%、1年で約30%が管理職へ登用されています。

「同じタイミングでマネジメントへ挑戦する女性社員との交流は予想以上に有意義でした」
「これまではマネージャーになりたいと考えることはありませんでしたが、機会があればそれも選択肢の1つかと考えられるようになりました」
「プログラム卒業後、冷静にチームを見渡すと、自分が最もマネージャーに向いているかもと思えました」

社長自身もW50メンバーとの交流や、自身のダイバーシティー&インクルージョンへの想いをラウンドテーブルや社内SNSツールを通じて積極的に発信しています。トップのコミットメント無くして、このW50プログラムの成功はありませんでした。

もちろん変わるべきは女性社員のみではありません。リーダーのアンコンシャス・バイアス改善のための取り組みや、誰もが一人ひとり異なるキャリア志向に沿ってスキル・キャリアを伸ばせる環境が必要です。IBMでは、これらをTechnologyでサポートしています。昇給における公平な昇給判断をするために、AIがメンバー一人ひとりのデータをもとにマネージャーに昇給判断の示唆を与え、バイアスを軽減させています。
また、1つのAIプラットフォーム上で、社員は自身のキャリア志向やこれまでの経験にマッチするOpen positionを確認し、次のチャレンジをするためにどのようなスキルが求められているかを理解、そのスキルを学ぶための研修コンテンツを推奨、メンター・コーチのマッチングを受けることができます。

IBM-Good Tech

今後も、こうしたTechnologyを活用しながら、経営層・コミュニティーが一体となって、社員の声を聞きながら一人ひとりが輝ける職場づくりに努めていきます。

 

企業賞【アドバンス部門】準大賞 株式会社ベルシステム24ホールディングス

マテリアリティは人材と働き方の多様性 ~全社で取り組むD&I推進~

株式会社ベルシステム24ホールディングス
人材開発部 人事企画局 ダイバーシティ推進グループ 上村 こころ 氏

当社の最重要課題は「人材と働き方の多様性」と定め、全社で取り組むD&I推進活動

当社で働く約32,000名の社員(契約社員含む)のうち約7割が女性社員です。当社では行動理念に「我々は一人ひとりが常に新たな挑戦を続け、楽しく、安心して働ける、人に優しい職場(コミュニティー)を作ります」 と掲げており、女性社員の活躍および様々な属性をもつ社員の活躍は、当社のビジネスを継続させる上での最重要事項と認識しています。
ダイバーシティの重要性が社内に根付き、当社ホールディングスのみならず、100%子会社である事業会社の本部ごとでも各管掌役員がダイバーシティを方針に盛り込み、本部単位でのD&I推進活動が活発化しています。

ダイバーシティ推進体制と組織横断型のD&Iプロジェクト

D&I推進責任者の管掌役員のリーダーシップのもと、ダイバーシティ推進グループが中心となってD&I活動を推進しています。
ダイバーシティ推進グループの活動以外に、毎年、事業本部社員参画型の全社横断プロジェクトが発足し、変革のコア人材となる社員が自組織でもD&I推進を伝播することにより風土醸成を図っています。これにより、人事部門だけでD&I推進に取り組むのではなく、全社横断プロジェクトでも経営層に定期的なレビューや報告を行い、ボトムアップでも変革が進む組織体制になっています。プロジェクトメンバーは手上げや上長推薦、または指名など様々な形で参画します。

また、D&Iプロジェクトの一環として、ネットワーキング活動と企業風土の醸成を目的とした社内コミュニティ活動である『MMMC(スリーエムシー)』を実施しております。有志でメンバーを募集し2021年度は130名、2022年度は120名の社員が参加しています。
活動テーマは毎年5-8テーマ用意し、継続テーマのほかに社員が興味を惹かれそうなテーマを新規設定するなど、一定数の参加者が集まるよう工夫しています。活動内容、最終報告はポータルサイトで周知展開し、活動を目にした方や口コミで参加する方など年々参加希望者は増加しています。

D&IプロジェクトによるMMMC活動(2022年度のコミュニティ構成)

D&IプロジェクトによるMMMC活動

トップダウンとボトムアップ両面からの組織風土醸成

当社では経営会議で女性社員比率の目標値・実績値を公開し本部ごとに比較できる形で報告しています。また、各事業本部の階層別女性社員比率は全社員が閲覧できるようダッシュボード化し公開しています。
これにより、競争意識と危機意識が生まれ、各管掌役員からトップダウンでの活動促進につながり、今まではあまり見られなかった事業本部単位でのD&I推進活動及び発信が増えました。
更に、各事業本部から1-2名ほどの男性管理職が本部長推薦で参画する男性管理職ネットワークをD&Iプロジェクトの1チームとして毎年発足しており、そのうち2-3名の男性管理職がJ-Win男性ネットワークに参画しています。現状を知りダイバーシティについて学習することからスタートし、自分たちで課題解決に向けた企画立案、実行していくうちにメンバーの意識変化が起こり、プロジェクトとしての成果だけではなく、周囲に広げたいというメンバーの意識醸成に繋がりました。

取組による社内意識の変化

取組による社内意識の変化

女性管理職パイプライン形成と新目標の設定

2019年に全階層の女性比率に対するKPI目標を新たに設定しましたが、2021年度、2022年度と社内目標値を上方修正しております。
目標に対する進捗が堅調であり、更にスピード感を持ち推進していくべきという経営層や人事部門の考えのもと2025年までに女性管理職比率20%以上という目標を掲げることといたしました。
そのためには若手女性社員の育成、意識改革も重要ですが、役員登用を見据えた女性部長職者の育成にも力を入れる必要があると考えております。

ベルシステム24は様々な変化に柔軟に対処し、女性社員のみならず全社員が公正で均等な機会を持てるよう、今後も多様な人材による多様な働き方の実現に向け、ダイバーシティ推進の取り組みを進めてまいります。

 

企業賞【ベーシック部門】ベーシックアチーブメント大賞 株式会社日立ハイテク

日立ハイテクのダイバーシティ推進 ~ダイバーシティは経営戦略~

株式会社日立ハイテク
人事総務本部 ダイバーシティ推進グループ 部長代理 松本 愛子 氏

日立ハイテクでは、事業環境や社会情勢の変化に伴い、グローバルな顧客のニーズにスピード感を持って対応するためには、多様な感性と視点を持ち、さまざまな機会やリスクを迅速に察知する人財の活躍が不可欠であると考えています。グローバル市場で今後も持続的に成長し続けるためには、ソリューションの提供により顧客ニーズを具現化できる人財の確保やイノベーションを生み出せる組織風土の醸成がますます重要と考えています。

その実現のために、日立ハイテクでは人財を最も重要な経営資源の一つとして位置付けるとともに、「多様な人財の育成と活用」を、社会課題解決のために取り組むべき重要課題(マテリアリティ)の一つに設定しています。この「グローバルに通用する人財の育成」を図るため、一人ひとりの違いを尊重し、多様なバックグラウンドを競争優位の源泉として活かす「ダイバーシティ経営」を2014年度に経営戦略と位置づけ、女性活躍推進・働き方改革・多様な人財の活躍推進等に取り組んでおり、従業員一人ひとりが自身の持つ力を十分に発揮できるよう、風土の醸成や仕組みの充実に注力しています。

女性活躍推進におけるKPIとしては、意思決定層の多様化のため、2030年度に「女性管理職比率を2010年度の総合職女性社員比率と同率(10%)」とすることをめざし、2024年度KPIを「女性管理職比率:部長職以上・課長職ともに6.6%、役員相当女性人数:2名、新卒女性採用比率(総合職):30%以上」としています。実績(2022年度4月時点)は「女性管理職比率:5.4%(うち部長職以上:4.1%、課長職:5.9%) 、役員相当女性人数:4名、新卒女性比率(総合職)26.5%」であり、活動開始以前の2014年度と比べ、着実にすそ野が広がりつつあります。

なお、日立ハイテクの女性活躍推進についての課題意識と、J-Winの示す8領域における関係は以下の図の通りとなっています。

日立ハイテクの女性活躍推進についての課題意識

具体的な活動

経営トップのコミットメントとD&I推進体制

日立ハイテクでは、「経営戦略としてのD&I推進」について、経営トップ自らの言葉で語る機会として、社員との対話を積極的に実施し、社員の腹落ち感醸成、職場での実践推進の後押しを行っています。社長をトップとする「全社ダイバーシティ推進ワーキンググループ」を中心に、拠点毎に設置したダイバーシティ推進組織において、人事部門に限らず、営業・設計等各部門から参画して活動を推進し、役員会議において四半期に1回程度、D&I推進について議論を行って施策立案、計画見直し等のPDCAを実施しています。なお、日立ハイテクのD&I推進実行体制は以下の図の通りとなっています。

D&I推進体制

女性社員の育成

意思決定層への積極的な女性登用に向けて、役員・本部長候補の育成として、選抜教育、タフアサインメント、外部評価(アセスメント)等の育成プログラムを実施しています。加えて、女性管理職の着実な育成のため、タレントレビュー(人財の見える化)、個別育成計画策定や実行を通じて、一人ひとりのキャリアプランに応じた、積極的な育成を実施しています。
また、女性の意識改革として、女性社員をモチベートし、上位職へのチャレンジを促すため、J-Winをはじめとした研修への派遣や管理職一歩手前女性向けロールモデルインタビュー研修、若手女性向け社内メンタリングなど、キャリアオーナーシップを学ぶ機会を多数設定しています。

男性社員の意識改革

性別役割分担意識の払拭による女性活躍推進、ワークとライフの両立によるエンゲージメント向上、介護離職リスクへの備え等を目的に、2020年度下期より、男性育休取得率100%をめざす「全力育児応援プロジェクト」を開始しました。2021年12月現在、取得率84%、平均取得日数17.4日となっています。家族も対象とした「育児支援サイト」の構築や、ランチタイムの映画鑑賞会、男性料理教室の開催等、取得対象となる本人のみならず、家族や職場同僚も含めて、楽しみながら自分ごと化することを大切にしています。
また、アンコンシャスバイアス研修や、グローバルでの海外グループ会社とのD&Iコミュニケーションイベント等、Inclusionを実感する機会を多く設け、社員のD&I意識の向上を図っています。

日立ハイテクは今後も、ダイバーシティ・マネジメントを加速し、女性を含む多様な人財の活躍を推進してまいります。

 

企業賞【ベーシック部門】ベーシックアチーブメント準大賞  三井住友信託銀行株式会社

ダイバーシティ&インクルージョンは私たちのDNA

三井住友信託銀行株式会社
人事部審議役兼ダイバーシティ&インクルージョン推進室長 安念 千佳 氏

多様な社員の相互作用で独自の付加価値を創出するというD&Iの考えは信託銀行のDNA

三井住友トラスト・グループでは、「個々人の多様性と創造性を経営に活かす」というダイバーシティ&インクルージョンの概念そのものを経営理念(ミッション)として有しているとともに、個々人の多様性と創造性が組織の付加価値として存分に活かされることを人事の基本方針として掲げています。多様な社員の相互作用で独自の付加価値を創出するというD&Iの考えがまさに私たち信託銀行のDNAです。社員の多様性が当社の強みであり、社長を中心にダイバーシティ&インクルージョンを積極的に進めています。

D&I推進体制

ダイバーシティ&インクルージョン推進体制

人事部内にダイバーシティ&インクルージョン推進室を設置しています。人事部の専任担当者と兼務担当者および各事業統括部メンバーで構成されており、人事部と事業統括部の両輪で推進を図っていくという点が当社の特色です。人事統括役員をトップとし、各事業統括部長、社内外の有識者をメンバーとしたD&I推進委員会では、D&Iの推進施策の進捗状況や取組効果についての確認やディスカッションを四半期ごとに行っています。

更なる女性活躍推進に向けた新KPIの設定

女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画として、2023年3月末までに課長以上のラインのポストに就く女性の比率を12%以上、マネジメント業務を担う女性の比率を30%以上とする目標を掲げてきましたが、目標を前倒しで達成したため、2021年度に新たな目標を策定しました。策定にあたっては、まず2030年までに女性の部長や支店長を30%とするという社内目標を掲げることとし、そのバックキャストで3年後までに課長級以上のラインのポストにつく女性比率を20%、マネジメント業務を担う女性の比率を30%以上とする新たなKPIを策定のうえ、経団連の掲げる「2030年30%へのチャレンジ」へ賛同しました。

サポーター役員制度の導入

新KPIを達成するために2021年10月からサポーター役員制度をスタートさせました。サポーター役員制度とは、メンターとスポンサーの要素を組み合わせた当社独自のプログラムです。実キャリア以外の方法で、様々な経験を補完する機会の提供、部長や支店長級に必要となる知識、視座、人脈の習得をサポートするとともに、サポーター役員自身が女性活躍推進の必要性を理解し、育成スキルを習得することを目的としています。2021年度は、課長・チーム長の女性を中心に40名を選定し、20名の常務執行役員がサポーター役員としてそれぞれ2名の対象者を担当しています。2022年度、2023年度はそれぞれ60名、3年で計160名の実施を予定しており、サポーター役員制度を通じて女性活躍推進を加速させていきます。

男性育児休業制度の取得推進

2019年度から3年連続で男性育休取得率100%を達成していますが、2022年4月に男性育休1ヵ月取得推奨を掲げ、周知、意向確認面談の実施と育休取得計画シートの提出の義務化という新しいフローの導入や、様々な休暇を自由に接続・組み合わせることで柔軟に育児のための休暇が取得できるベビーケア休暇制度を新たに導入しました。男性育休のさらなる推進を図っていくことで、働き方改革やアンコンシャスバイアスの是正にも繋げていきたいと考えています。

三井住友トラスト・グループのパーパス

「信託の力で、新たな価値を創造し、お客様や社会の豊かな未来を花開かせる」これが三井住友トラスト・グループのパーパスです。新たな価値創造の源であるダイバーシティ&インクルージョンを推進させることで、社会課題の解決に繋げて参ります。