特定非営利活動法人ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワーク(以後J-Winと記載)は、以下の目的に沿って活動を行っています。
- 業種や専門分野を超えて相互研鑽の機会を提供し、女性リーダー育成を支援する
- 企業の「経営戦略」である、ダイバーシティ&インクルージョンの促進を支援する
- 日本社会へのダイバーシティ&インクルージョンの浸透、理解促進をめざした活動を行う
【総括】
2024年度、NPO法人J-Winは設立17年目を迎え、会員企業88社、グループ企業を含めた活動参加企業201社から1,000名を超えるメンバーに活動参加をいただきました。
女性リーダー育成を支援する「女性3層ネットワーク」、企業におけるD&I推進を支援する「D&I推進3層システム」と、D&I推進状況を数値化、見える化する「D&Iアセスメント」を活動の中心に据え、各活動の相互連携や他団体との活動機会創出に注力し、「仕組みとして成果の出る活動」と「経営戦略としてのD&I推進の支援」を進めて参りました。また、今年度はJ-Winとしての改革にも取り組み、その一歩として、パーパスとミッションを職員一丸となって策定いたしました。
パーパス
多様性から生まれる新たな価値を、人、企業、社会の成長へとつなげる
ミッション
J-Winは、女性リーダー育成とダイバーシティ&インクルージョン推進支援を通じて
チャレンジングな組織風土、イノベーションの促進による企業の持続的な成長に貢献します
我々は常にこのパーパスとミッションに立ち返り、すべての人が可能性を最大限に生かし、一人ひとりが自己実現へと結び付けられる社会の実現に寄与してまいります。
【女性リーダー育成支援活動】
J-Winの女性リーダー育成に向けた女性ネットワーク活動は、管理職一歩手前を対象とした「High Potentialネットワーク」、部長層・課長層を中心とした「Next Stageネットワーク」、執行役員以上が集まる「Executiveネットワーク」の三層から成り立っています。
2024年度においては、三層共通の活動指針として「自分を/企業を/社会を変えるためのチャレンジ・ラボ」を掲げ、業界・業種の枠を越えてさまざまな活動に取り組みました。
三層が連携した活動では、Next Stage後進育成委員会メンバーがHigh Potentialネットワークの分科会活動にアドバイスを行い、ExecutiveネットワークメンバーはHigh PotentialおよびNext Stageネットワークメンバーに対してラウンドテーブルを行いました。加えてExecutiveネットワークメンバーによるNext Stageネットワークメンバーとの1対1のメンタリングも実施され、メンター、メンティー共に多くの気づきが得られました。
2025年3月に実施した「第一回三層合同イベント」では、三層から立候補したメンバーが一体となって立案・運営にあたり、大学生35名をゲストに迎え総勢120名でキャリアについての意見交換が行われ、次世代の女性たちを巻き込んだ「チャレンジ・ラボ」にふさわしい新規企画となりました。
1) 第14期High Potentialメンバー活動(2024年度メンバー数 246名)
J-Winの掲げる「自分を/企業を/社会を変える」ための「チャレンジ・ラボ」を踏まえ、キャリアアップに対する意識のSwitch-onをはかるため、2024年度 第14期メンバーは「創る、をえがく Think⇔Action」をスローガンに一年間の活動を行いました。High Potentialネットワークでは、第14期活動を「新生J-Winのスタート」と捉え、幹事会が中心となって分科会活動・実行委員会活動の改革に取り組みました。
分科会活動では、分科会の編成単位、カテゴリー別の研究テーマ設定、活動時間のタイムマネジメント手法などを抜本的に再構築し、メンバーが主体的かつ効率的な活動ができるよう新しいルールをつくり上げました。また、定例会などの実行委員会活動では、メンバー自らが何を目的にどんな成果を目指すのかを考え、企画・運営を組み立てる体制づくりを目指しました。具体的にはオンライン海外研修において、実行委員会メンバーの人脈を活用した結果、新しい海外スピーカーに登壇していただくことができました。
年度末の拡大会議ではメンバー全員を代表して5つの分科会が研究結果を発表するなど、リーダーシップとチームビルディングを学ぶ1年間となりました。
2)Next Stageメンバー活動(2024年度メンバー数 230名)
Next Stageネットワークは、「企業で上級管理職として活躍し、自らが企業・社会を変える原動力になる」というビジョンのもと、企業内で部長・役員層といったDecision Makingができる実力ある上級管理職として活躍できるよう十分な経験とスキルを習得することを目的とした活動を行いました。企業内で女性が意思決定層(役員・部長)に登用されていくために、まずはNext Stage世代がマインドチェンジして成長していくことが欠かせず、そのためにはメンバー自身がNext Stageネットワーク活動の「目的」「ビジョン」「価値」を認識し真に力を身に付けていくことが重要です。そこで2024年度は目指す姿を「経営の実践者 ~『本質をつかむ力』を身につけ、実践に向けた舵を切る航海~」として、「組織運営の経験」を深め、「知識・学びの深化」に取り組み、「実践」に移すという活動方針を掲げ、定例会・勉強会・研究会・合宿などのプログラムに取り組みました。
3)Executiveネットワーク活動(2024年度メンバー数 81名)
Executiveネットワークは「日本を代表する企業のExecutiveとして、経営戦略としての女性活躍推進を牽引し、企業および日本の更なる発展に寄与する」「日本最大級の女性役員コミュニティであるExecutiveネットワークの価値を最大限活用し、活動・連携を通して社会にインパクトを与える」という目標を掲げ、1年間の活動を行いました。そのために「Our Value」「Influence」「Social Impact」の3ステップを方針に掲げ、J-Winおよび国内外の様々な団体とのコラボレーションを進めました。
J-Winの中においては、企業支援部と連携してCEO会議においてパネルディスカッションを行うとともに、男性ネットワークでは中間管理職の男性メンバーと意見を交換し、女性の視点からの経営課題を共有することができました。また、駐日大使館とのコラボレーションでは、米国大使館でのラウンドテーブルなど各国からゲストとして招かれる機会が増え、Executiveネットワークの存在感を示すこととなりました。
さらには、メンバー同士の知見を共有する「ワイガヤセッション」、Executiveネットワークを卒業したメンバー同士の連携を継続するための「卒業生ネットワーク」など、新規プログラムにも積極的に取り組み、Executiveネットワークの新しい価値づくりへの一歩を踏み出す1年となりました。
【企業支援事業】
企業支援事業として、「CEO会議/実行リーダーの会」、「企業責任者会議」、「男性ネットワーク」、「D&I推進者会議」、「D&Iアセスメント/2025 J-Winダイバーシティ・アワード」の各プログラムを実施しました。特に2024年度は「連携と対話」を重点施策とし、「J-Win各プログラムとの連携」、「会員企業の各メンバーとの対話の機会」を重視し活動を行いました。
1)CEO会議/実行リーダーの会(22社)
CEO会議、実行リーダーの会は22社に参加いただき、それぞれ3回開催しました。2024年度初の試みとして、1月のCEO会議では、CEOと実行リーダーが一同に会し、違う企業のCEOと実行リーダーがグループディスカッションを行う場を設けました。また、J-Winプログラムとの連携として、Executiveネットワークメンバーとの意見交換を行いました。また、実行リーダーの会では、各社の実行リーダーから課題や取組事例を共有いただき、ディスカッションによりさらに議論を深めました。
2)企業責任者会議(約80名)
「J-Win活動の理解を深め、D&I推進の一助としていただくこと」を目的として発足した企業責任者会議は3年目を迎えました。J-Winダイバーシティ・アワード受賞企業や企業責任者による自社施策の紹介、D&I推進者等による活動報告、J-Winの様々な活動・プログラムのご紹介に加え、企業責任者同士の情報交換により率直な討議が行われる会議として定着し始めました。
3)男性ネットワーク(104名)
男性ネットワークは8年目を迎え、初めて100名を超えるメンバーが参加しました。定例会では ExecutiveネットワークメンバーやD&I推進者、男性ネットワークOBとのラウンドテーブルや講話を行い、D&I推進についての意見交換を行いました。分科会では、9つのチームに分かれ、それぞれのテーマで課題の深堀りを行い、気づきや提言をまとめ、3月には企業責任者やD&I推進者、Executiveネットワークメンバーに向けて活動報告会を行いました。最後に各自がチェンジエージェント行動宣言をまとめました。
4)D&I推進者会議(約300名)
会員企業のD&I推進に関わる方なら誰でも活動に参加できるという実態に合わせ、今年度は名称をD&I推進者会議としました。全6回の定例会のうち、2回は外部講師を招き、特に経営の観点からD&I推進について考える機会とし、グループ会社やプロジェクトメンバーを含む多数の方に参加いただきました。また、事例研究会では、初めて女性活躍以外のテーマも取り上げました。着任2年目未満の方を主な対象とするA to Z研究会も2期目に入り、活発な活動となりました。
5)D&Iアセスメント/「2025 J-Win ダイバーシティ・アワード」
18回目となる「2025 J-Winダイバーシティ・アワード」を、内閣府、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、経済同友会のご後援をいただき実施しました。会員企業、非会員企業の合計46社からご応募いただきました。企業賞として、「アドバンス部門 大賞・準大賞」、「ベーシック部門大賞・準大賞」の合計4社、個人賞として、「経営者アワード」1名、「リーダー・アワード」2名を表彰しました。授賞企業・授賞者ならびに授賞理由等はNPO法人J-Winホームページでも公表しております。また、昨年度応募いただいた企業には、各社毎にアセスメントレポートを提供し、個別に説明会を実施しました。
【広報事業】
広報事業は会員企業を始め、広く社会に対し、NPO法人J-Win(ジェイ・ウイン)の認知拡大とともに、ダイバーシティ&インクルージョンの理解促進に向けた情報発信の強化に努めています。女性リーダー育成支援の女性3層ネットワークと企業支援のD&I推進3層システムでの定例会活動報告、さらには1年間の活動報告を行う拡大会議やJ-Winダイバーシティ・アワード表彰式などのイベント開催では、Facebookへの投稿、J-Winホームページへの掲載など、オウンドメディアを通じた積極的な情報発信を行っています。
2024年度より、印刷物による広報誌「J-Winレポート」の発行を中止。巻頭企画として連載していた「トップインタビュー」をJ-Winホームページに動画映像、記事原稿として掲載し、新たな公開の場としています。トップインタビューのインタビュアーは横尾敬介理事長が務め、会員企業の経営者でありCEO会議メンバーから、大日本印刷株式会社の北島義斉社長、株式会社商工組合中央金庫の関根正裕社長、日本アイ・ビー・エム株式会社の山口明夫社長、日本電信電話株式会社の島田明社長にご登場いただきました。
ホームページでは「トピックス」ページを増設し、内閣府 男女共同参画局との「オールド・ボーイズ・ネットワークに関する啓発」活動や人事院女性管理職養成コース研修での「J-Winセッション」の開催、女子大学生との合同で女性の活躍×キャリア形成を考える「三層合同イベント」など、J-Win内での活動に留まらず、広く外部団体との交流に関しても積極的な情報発信に取り組んでいます。これらの活動を通じて、J-Winは社会全体への意識啓発とネットワークの拡大を図り、多様な立場の人々と協働しながら、女性リーダーの育成とダイバーシティ経営の推進に貢献しています。
PR活動の強化として、記者、編集者といったメディア関係者とのリレーションを目的に、「J-Winメディア懇談会」を開催しています。毎回、D&I推進に関するテーマを設定し、J-Winとの情報共有、意見交換の場としています。
結果、メディア掲載はWebメディアを中心に年間52件の露出、掲載となりました。3月7日に行ったJ-Winダイバーシティ・アワード表彰式では、授賞企業各社の広報との連携強化が奏功し、30件の新聞、Webメディアに取り上げられています。
J-Winのプログラム、活動内容を伝えるツールとして「J-Winご案内パンフレット(日本語・英語)」「J-Win活動プログラムのご案内リーフレット」を作成しました。J-Winの価値を理解いただくとともに、新規会員企業の獲得に向けた渉外活動やグローバル活動など、さまざまな場面で活用できるように年度ごとの更新作業を行っています。
【拡大会議】
2024年度活動の総括の場である拡大会議は、2025年3月7日に会場(ベルサール新宿グランド)とZoomウェビナーによるオンライン配信のハイブリッド形式で行いました。拡大会議では、女性三層ネットワーク、D&I推進三層システムの活動報告と、2025J-Win ダイバーシティ・アワード表彰式、第14期High Potentialネットワーク卒業セレモニーが行われ、会場254名、オンライン374名、合計628名の方々にご参加いただき盛会となりました。■活動・収支報告、貸借対照表
2024年度の収入は、会員企業からの年会費が146,475千円、Executive、Next Stage、女性経営者育成塾等のネットワーク事業への参加会費が24,287千円、男性ネットワーク、CEO会議等の企業支援事業への参加会費が12,344千円、その他の収入が229千円で収入の合計は約183,335千円でした。
一方、ネットワーク事業として53,748千円、企業支援事業として28,076千円、広報として11,498千円、拡大会議として5,188千円、進捗診断事業として248千円、計98,758千円の支出となりました。
これら事業を進めるために管理費として、役員・管理部門人件費、IT関連費、家賃・光熱費、その他法人運営費等、54,898千円を支出しました。結果、2024年度経常増減額は、29,680千円の黒字となりましたが、定款・就業規則等改定費用を特別損失として計上した結果、2024年度経常増減額は16,741千円の黒字となり、次期繰越正味財産額は211,155千円となりました。