Executiveネットワーク

開催日:2023年11月16日

「J-Win Executive ネットワーク11月度定例会」を開催しました

11月16日(木)、「J-Win Executiveネットワーク 11月度定例会」を会場とオンラインによるハイブリッドで開催しました。
今回の会場は、東京大学本郷キャンパス内 ダイワユビキタス学術研究館の「大和ハウス石橋信夫記念ホール」。 会場28名、WEB 19名、合計47名の参加となりました。

2023年度、Executiveネットワーク定例会のテーマは 「グローバル」 と 「STEM」です。
11月度定例会では、東京大学大学院情報学環の越塚昇先生をお招きし、「コンピュータ屋からみた”グローバル” ”STEM” ”ダイバーシティ”」の演題でご講演いただきました。

「コンピュータ屋」から見た、「グローバル」、「STEM」、「ダイバーシティ」
東京大学大学院 情報学環 教授
越塚 登 氏 

ご講演は、事前質問に回答いただく形でスタートしました。 【質問】 日本はデジタル化が遅れているのか?
イノベーションにデータを活用していると回答した日本企業の割合は20%しかない。 以前より意識が低くなっているのか、活用しなくても問題がないと考えているのか、データを前に立ち尽くしているような状況。
しかしデジタル敗戦とばかりでもない。インターネットが普及する以前に日本のデジタルはかなり綿密に作り込まれており、それを超えられない現状でもあるが、防災システム、地震速報など、IoTセンサーが全国に撒かれ実用として動いており、またゲームやエンタメは日本が世界をリードしている。
デジタル化をひとくくりにすることはできない。遅れているとすれば制度が変えられないことが課題であり、変化が遅いことが本質。

【質問】 STEM教育発展のための企業の役割について
STEM教育発展のための企業の役割を考えると、STEM(科学技術等)で企業に何を期待するか = 社会実践の場。
世界でも圧倒的に高いプログラミング技術を持った人財を日本はどうやって活かしていくかが課題。またSTEM系人財のサクセスストーリーとロールモデルが日本にはない。特に女性はいない。
今成功している人は、エンジニアに付いてビジネスをした人。STEM人財にどういう機会を与えられるかが日本の課題である。

【質問】 グローバルとSTEMと相関性や逆相関性
日本でも世界でも、自然科学、テクノロジーはグローバル。
サイバー世界は人間が作ったもの。インターネットの中はすべて人間が作ったもの。人間が決めているからグローバルではないのでは。
グローバルは一個にすること。インターナショナルはバラバラなものをつなげること。

デジタルはどんな時代か=データの時代。データを制する者は経済を制す。
データ経済圏構築が進む。最近のイノベーションはデータ駆動型。
1960年代-メインフレーム時代 1980年代-マイコン時代 2000年代-インターネット時代
20年ごとにテクノロジーは変わり、現在はインターネット時代から次の時代へと移る。
その中核がIOT、AI、重要な資源がデータの時代。産業の新しいフレームワークを創ろうとしている。

Executiveネットワークでは、これまで、研究会などで女性活躍やDXにおける日本の遅れについて議論を重ねてきました。 今回のご講演では日本のコンピューターサイエンスや日本文化への海外での高評価、未来を担う優秀な若者たちが多いことに注目しつつも、本質的な問題は他にあるとして、スピードの重要性やいくつかの制度に焦点を当ててお話しいただきました。
メンバーからは、「未来の日本のために役員である私たちが、まだまだやれることがある」「課題が多い中でも、新たな視点やアプローチを模索することで、前向きな未来が見えてきた」という声もあがり、計り知れない勇気や元気、そして希望をいただきました。

参加者コメント(アンケートより抜粋)
  • 各国との比較データで日本の位置づけが良く理解できました。危機感が不足しているのはもちろんありますが、日本の文化や気質を過剰評価することなく、客観視しながら、良いところは全面アピール、改善の余地あるところは真正面から立ち向かい、将来の日本が豊かに生活できるよう、頑張らねばという思いが生まれ、大いに勇気をいただきました。
  • 事前の質問にお答えいただく流れで、世界と日本の今に至る歴史的背景や、理不尽だった出来事、日本が評価すべきところ、今の研究開発の在り方等々、多面的な視点でお話しいただき、あっという間の興味深い時間でした。ご紹介いただいた本にも刺激を受けました。
  • 「どの国と比べて?」「どの視点で?」の問いは、目から鱗の部分がありました。ファクトは1つでも、目線を変えると全く違う見え方になることに改めて気づかされました。
    この観点はすべての事柄に通じると思うので、対話の中で互いの前提がずれている可能性を意識すること、また、現状打破をする際にはあえていつもと違う斜めからモノを見るなどしてみたいと考えます。
  • 「女性人材活用ができていない」ではなく、「女性に選ばれていない」という視点は自ら女性でありながら目からうろこだった。今後の女性活躍推進にあたり、検討視点としたい。
【越塚 登 様 ご略歴】

東京大学大学院 情報学環 教授
1966年生まれ。
1994年、東京大学大学院 理学系研究科 情報科学専攻 博士課程修了、博士(理学)。
東工大助手、東大助教授・准教授を経て、2009年より現職。
一般社団法人データ社会推進協会会長、一般社団法人スマートシティ社会実装コンソーシアム、JEITA Green×Digitalコンソーシアム座長、気象ビジネス推進コンソーシアム会長など、さまざまな領域の研究を主導する。 コンピューターサイエンスを軸に、近年はIoTやデータ基盤、スマートシティなどの研究に取り組んでいる。