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2023年11月07日

「2023 J-Winダイバーシティ・アワード」特集

2023 J-Winダイバーシティ・アワードで企業賞を受賞された4社より寄稿いただいた、各社のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の優れた取り組みや女性活躍推進について、以下にご紹介します。

「2023 J-Win ダイバーシティ・アワード」受賞企業4社の取り組み紹介

アドバンス部門
ベーシック部門

 

企業賞【アドバンス部門】 大賞
株式会社ベルシステム24ホールディングス

「その声に、どうこたえるか。」 ベルシステム24らしいダイバーシティ&インクルージョンを目指して

株式会社ベルシステム24ホールディングス
人材開発部 人事企画局 ダイバーシティ推進グループ 上村 こころ 氏

人事部門だけではなく全社巻き込み型のD&I推進活動

ベルシステム24には有期雇用社員も含め約3万人働いており、それぞれ多様なバックグラウンドを持っています。そのため多様性が受容されやすい企業風土である一方、女性管理職比率は、2013年の時点で、9.5%と低い状態にありました。
そのような環境において、女性社員の他、様々な属性をもつ社員の活躍が経営上の最重要課題であると位置づけ、D&I活動を支援して参りました。
近年では、CEOの提案により次期経営計画策定プロジェクトメンバーのうち3割を女性とした他、「多様性」をテーマにした経営層 からの発信や、事業本部独自のD&I施策が行われるなど、人事部門やダイバーシティ推進を管轄する組織のみならず、全社を巻き込んだD&I活動を推進しています。
2022年5月に制定された「ダイバーシティ&インクルージョン基本方針」では、「すべての業務における人員構成にも多様性や機会の均等を尊重する」旨の記載がされたことに加え、それまで未設定だった「女性役員比率を2025年までに1割を目指す」ことが明文化、対外公表されました。

自身を過小評価してしまう女性社員に自信獲得とキャリアデザイン創出の場を提供

2021年から「Women's Challenge Program」という、課長職一歩手前または課長職の女性社員に向けた選抜型ビジネス基礎力強化研修を開始いたしました。普段関わりが少ない各本部の女性社員が、横断的に4、5名のチームとなり、5か月間で新規ビジネスプロジェクト立案の基礎を習得し、役員や本部長への新たなプロジェクトの提案を行うというプログラムです。
研修を通じ、自信を持つこと、意識変革、上級管理職に必要なビジネス視座を習得することを目的としており、修了した21年度、22年度ともに参加者の満足度は90%を超え、多くの参加者が「ビジネスパーソンとして成長できた」とコメントしています。最終発表会でのプレゼンテーションは、経営層に向けて行なわれるため、優秀な女性社員の発掘の場にもなっています。

その他に、役職で2段階の差をつけた上位職社員と年2度面談を実施する「Skip Level Meeting」により、視座を高め、視野を拡げると共に、コネクション形成の機会を設けており、このような個人のキャリア形成を支援する面談機会を、全社として3,600時間創出しています。
併せてキャリアパスを明確化し、ジョブディスクリプションを再整理することで、職種を細分化・多様化し、キャリアの幅の拡大に繋げています。

新たなコーポレートボイスは「その声に、どうこたえるか。」 社員の声にこたえ続ける

2022年に40周年を迎えた当社は、今年度コーポレートボイスとブランドイメージを刷新しました。
変化の激しい時代に企業力を高めていくには、「様々なバックグラウンドを持つ社員が自分らしく働くことのできる職場を創る」ことによって、多様性を生み、イノベーションを起こすことが必要です。コーポレートボイス「その声に、どうこたえるか。」には、社員一人ひとりの声をしっかりと聞き、こたえていこうという想いも込められています。
CEOそして経営層と、様々なバックグラウンドを持つマイノリティ属性の社員が少人数で対話をするラウンドテーブルも、社員の本音を聞く場として今年度から始まりました。
こういったD&I推進の取り組みをさらに浸透させ、女性社員のみならず当社で働くすべての社員が公正で平等な機会を持てるよう、社員の声にこたえ続けていこうと考えています。

 

企業賞【アドバンス部門】 準大賞
大日本印刷株式会社

人的資本ポリシーを制定し、D&I推進を重要な経営課題と位置づけ、着実に定着

大日本印刷株式会社 D&I推進室 室長 根本 和子 氏

<経営方針と人的資本ポリシー>

DNPは企業理念に「人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する」を掲げ、多様性に満ちた社会と人々に新しい価値を提供しています。
2023年からの中期経営計画基本方針の中では、「非財務資本」として、「人的資本ポリシーに基づき、人への投資を拡大する」を掲げています。
「人的資本ポリシー」は、社員に対する普遍的・基本的な考え方であり、代表取締役社長による「DNPグループダイバーシティ宣言」など、これまでも発信してきた人に対する方針・ビジョン・宣言における、最上位の概念として位置づけたものです。このポリシーは、「一人ひとりが強みを伸ばし、社内・社外で活躍できる人材として育ってもらいたい」という思いと、「社員を大切にし、大切にした社員によって企業が成長し、その社員が社会をより豊かにしていく」という信念を示しています。
「人への投資」を企業価値向上に結びつけるため、「社員のキャリア自立支援と組織力の強化」「社員の幸せを高める健康経営」「人材ポートポートフォリオに基づく採用・人材配置・リスキリング」「多様な個を活かすD&I推進」を4つの重要課題として設定しました。
その中の「多様な人材が活躍できる風土の醸成」として、女性活躍推進(意思決定層の多様化)を経営課題として明確に位置付けています。

<D&I推進体制>

多様性に富んだ組織への変革に向け、女性活躍推進をはじめとした、あらゆるジェンダーギャップの解消に向けた目標の達成や制度改定を計画的に進めていくため、D&Iの推進体制を確立しています。トップのコミットメントがあり、共通のビジョンのもと、各事業部門での推進活動、そして「多様な人材の育成」「多様な働き方の実現」「多様な人材が活躍できる風土醸成」の3つの方針をもとに全社員に向けての施策を策定し実行しています。
DNPグループでは、D&Iを浸透・定着させるために、各事業部、グループ会社にD&I推進委員会を設置し、部門長である事業部長、グループ会社社長が委員長の役割を担い活動をしています。部門のアクションプログラムの中に女性管理職の登用計画をKPIとして持つと共に、その成果、実績を委員会で開示、共有しています。

<女性社員の育成と経営層の理解促進>

意思決定層の多様化に向けて、部長クラス以上の女性人数増を加速させるため、2021年度より「スポンサーシッププログラム」を開始しています。
女性対象者を部門長が推薦し、オーナーとなります。女性部長には他部門の役員、事業部長クラス、女性課長には副事業部長、センター長クラスがスポンサーとなり、能力開発計画書をつくることから始めます。それぞれの対象者に研修を実施後、半年間にわたり計画書に基づくリフレクションと、課題について面談を実施し、経験の機会を与え、上位職の視座視点を伝えます。
途中には進捗報告やコンサルティングを入れることで、変化の確認や育成上の悩みなどの解決に向け事務局も含め議論しながら進めていきます。スポンサーが客観的な視点で育成する点が受講者からは好評価となっています。スポンサーにとっても他部門の役員との人脈ができることのメリットを感じ、積極参加につながっています。
成果として1期はプログラム修了後、半年で半数が昇任し、次のステップである「次世代経営リーダー研修」受講者の女性比率は、2018年度2.46%から、2021年度16.6%へと上昇しています。
また、上級管理職への継続した登用を行う女性を増やすため、リーダークラスからのパイプラインの拡大に向けて、リーダークラスの女性社員全員に、キャリアビジョンを早い段階で持ち経験を積めるよう、「実践型リーダーシップ研修」を実施しています。
2022年度には約380名、2023年度には約285名が受講しました。約半年間に渡るインプットと職場実践を繰り返す内容となっており、職場実践における学びのグループ活動では、お互いに実践したことを共有し、気付きを得ています。所属と異なる部門の本部長クラスであるD&I推進リーダーがメンターとして入ることで、女性の新たな視座の高まりや視野の広がりのみならず、D&I推進リーダーの自職場でのD&I活動にも活かし、マネジメントの意識改革にもつなげています。

<男性社員の意識改革>

女性の育成・意識改革だけでなく、男性管理職の、「オールド・ボーズ・ネットワーク」や「アンコンシャス・バイアス」に対する気付きと行動変容をもたらすことも、女性活躍推進に関する必須要素としています。
女性の人材育成と並行して、管理職の年次有給休暇取得率や、男性の育児休業取得率の目標も設定し、両輪で進めています。また、今後の展開としては、全社員に向けたアンコンシャス・バイアス研修の実施を予定しています。

DNPでは、創業以来イノベーションを支えてきた、かけがえのない財産である社員の活躍支援に力を入れ、一人ひとりのあらゆる「違い」を尊重し、それらを強みとして掛け合わせることで新しい価値の創出につなげていきます。

 

企業賞【ベーシック部門】 ベーシックアチーブメント大賞
エーザイ株式会社

ヒューマン・ヘルスケア(hhc)理念の実現に向けたエーザイのDE&I推進

エーザイ株式会社 グローバルHRキャリアディベロップメント部
部長(兼)DE&I担当 新庄 浩子 氏

当社は、2022年に定款にある企業理念を一部変更しました。ヒューマン・ヘルスケア(hhc)理念の主役を「日常と医療の領域で生活する人々」ととらえ直し、貢献すべき主役を従来の「患者様とそのご家族」から「患者様と生活者の皆様」へと拡大しました。
また、他産業やアカデミア、行政などと連携するエコシステムモデルを構築し、「健康憂慮の解消」と「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現することを通じて、インパクト (社会的課題への取り組み)の最大化を果たし、人々の全生涯を支える企業へと変化することをめざすことについて、株主をはじめとするステークホルダーズと当社のめざす姿について共有しています。

これらを通して一貫しているコンセプトは他者との連携、協業の精神であり、まさにDE&Iによる効率性や創造性の獲得を目指そうとするものです。つまりエーザイにとってDE&Iを推進するということは、企業理念の実現にむけた活動そのものなのです。
2012年に「エーザイダイバーシティ宣言」 を発出、2021年に「ダイバーシティ&インクルージョン2021」 を掲げ、多様な人財価値を最大化する取り組みを推進しています。さらに2022年の定款の一部変更においては、会社の憲法と位置付けられる定款を変更し、従来の「安定的な雇用の確保」に加えて「人権および多様性の尊重」「自己実現を支える成長機会の充実」「働きやすい環境の整備」を追加しました。

加えて、「Data Driven HR」にも積極的に取り組んでいます。エンゲージメントスコア・人事評価コメント・勤務時間など、多様なデータを結びつけ、勘や経験だけに頼らない、根拠ある意思決定体制の構築に取り組んでいます。

事業戦略の実現に向けたDE&I推進において、当社が重視しているKPIを開示し、改善に向けて継続的に取り組むことによって、社会善の効率的な実現に寄与するものと確信しています。2023年にはHuman Capital Reportを発行しました。 Human Capital Report 2023 (eisai.co.jp)

<主な取り組み>

【経営トップ】全社「DE&I推進コミッティを設置し、各部門の「DE&Iプロジェクト」を推進
チーフHRオフィサーを中心とするDE&I推進コミッティ体制のもと、エーザイD&I 2021の目標ならびに行動計画に基づき、全社および各職場の状況に応じた実効性ある具体的施策を企画・推進しています。

「ダイバーシティ&シナジー」を行動評価項目として、多様性をより重視した人事評価制度をFY23より導入
2023年4月から運用を開始した新人事制度では、多様性への対応にとどまらない「シナジー、相乗効果」を生み出すことが行動評価項目に加わりました。

【組織風土/意識】月次エンゲージメントサーベイ(wevox)を活用した、組織内対話の推進と組織風土・意識改革への取り組み
2020年から開始したエンゲージメントサーベイwevoxは毎月約8割の社員に活用されています。対話の促進や内容の更なるに充実に向けて、新たな施策を展開中です。

【働き方】EパパEママパスポートの導入と運用支援
育児休職取得に対する不安を解消できるよう職場全体でフォローできる仕組みを構築しています。育児休職期間中は、社内の育児コミュニティでの情報交換に加え、自己啓発のサポートを充実させるなど、早期に従前どおり・以上の活躍ができるよう支援しています。

【女性】女性リーダー育成を目的としたE-Winプログラムや座談会の実施

2014年度より「自己成長とキャリア意欲」の醸成、社内ネットワーキングを目的に開催しています
(累計参加者数146名)。また、管理職に挑戦するにあたっての不安の払しょくや挑戦を後押しすべく先輩管理職による座談会を実施しています(2023年度参加者数464名)。
エーザイは、ますます多様化する患者様や生活者の皆様のニーズに応えるため、今後も全社を挙げてDE&Iを推進してまいります。

 

企業賞【ベーシック部門】 ベーシックアチーブメント準大賞
三菱UFJ信託銀行株式会社

DE&Iの実現で「安心・豊かな社会」を創造する

三菱UFJ信託銀行株式会社
人事部ダイバーシティ推進室 調査役 大和 佑美子 氏

Ⅰ.DE&Iの推進体制、経営トップのコミットメント

今中期経営計画において、「DE&I推進」を、事業を支える重要戦略の中でも一丁目一番地と位置付けています。ダイバーシティ推進室が専任となり、人財育成委員会によるPDCA及び事業部門との連携でDE&Iを進めています。

年2回の「人財育成委員会」審議事項の1つをダイバーシティ推進とし、主に、女性活躍にかかる登用候補の一人別育成計画の策定や、数値目標の審議などを行っています。また、各部に「人事担当責任者」を置き、女性登用も含む人財育成全般について各事業部門、部署と連携を図っています。
DE&Iに関する主な取り組み領域として「女性活躍推進」「両立支援」「風土醸成・管理職の意識改革」「障がい者の活躍推進」「LGBTQへの理解促進」等を設定し、さまざまな取り組みを加速しています。

また、社会課題が次々と生まれてくる中、DE&I推進は、当社のサステナビリティ活動方針として掲げる「安心・豊かな社会を創り出す信託銀行」の実現に向けて不可欠な要素の一つであることなど、経営トップがDE&I推進の意義や取り組み内容について自分の言葉で都度社員にメッセージを発信しています。
当社が出来ていない点についても包み隠さず伝えており、社長の本気度を社員に示しています。

Ⅱ. 女性リーダーの育成・登用

女性役員・経営人財を戦略的に育成・支援すべく、各階層の課題に応じたプログラムを設定し、階層をつないだ継ぎ目のない研修体系を構築しています。信託銀行単独開催に加え、MUFGグループとしての開催もあり、グループ他社からの気付きも得られるよう設定しています。 上位層には役員メンタリングを軸に育成しており、次世代育成、ギブバックの仕組みも導入しています。次世代層には「管理職」に対する無意識のハードルを取り除き、管理職というステップアップの選択を視野に入れることを目的に長期的な視点でキャリアやリーダーシップスタイルを考えさせる研修を導入しています。加えて、多様なロールサンプルを多数示すことを目的に、DE&I専用サイトにて社内外で活躍する女性についての情報発信を強化しています。 また、2020年から人事制度改訂を行い、 総合職・基幹職といった職種区分自体を廃止して一本化、等級区分を簡素化することで、職種区分に捉われない多様なキャリアパス・働き方を促進し、実力本位による登用を加速しています。

Ⅲ.風土醸成~管理職の意識改革、経営層(役員・部長層)の巻き込み

多様な社員が「自分らしく」働き、「その人らしさ」を十分に発揮し活躍できる職場風土・カルチャーの醸成には、部下・後輩の実力を阻害する要因を取り除き誰もが活躍できるように支援するなど、管理職が重要な役割を担っています。そのため、今年度より管理職の課題設定・業績評定の項目に「DE&I推進」に関する業務課題の設定を追加し、評価しています。
また、前述のとおり、人財育成委員会にて経営によるPDCAを開始、事業部門とも協働して、ダイバーシティ推進(女性活躍)の審議を開始しています。常務役員は女性部店長候補者を対象としたメンタリングのメンター役を担い、マネジメントに関するアドバイスや精神面でのサポートを行っています。部店長には、経営にとっての女性育成・登用の必要性、その実践方法を外部有識者や社内女性役員から学ぶ機会として部店長向けフォーラムを複数回開催しています。

今後も、三菱 UFJ 信託銀行は DE&Iを加速させ、多様な人財の活躍を推進し、新たな信託ビジネスを継続的に創出し社会やお客さまのお役に立てるよう、取り組んでまいります。