トップインタビュー

2023年08月28日

「内永ゆか子のTOP INTERVIEW」第42回を掲載しました

ダイバーシティ&インクルージョンの推進を企業変革のドライバーに
アフラック生命保険株式会社 代表取締役社長 古出眞敏氏

上層部から変化を起こし 明確なメッセージを伝える

内永 本日はよろしくお願いします。 以前お伺いしたときと、役員フロアの雰囲気が随分変わりましたね。

古出 昨年、役員フロアの個室をなくしフリーアドレスにしました。 社長室もありません。
社員の働き方を変えるためには、上層部から変化を起こし、明確なメッセージを伝えることが必要だと考えています。 その一つが、役員フロアのリニューアルでした。

内永 アフラックさんは、さまざまな変革を進めているとお聞きしていますが。

古出 DXやアジャイル型の働き方の浸透など、さまざまな変革を進めていますが、そのドライバーになっているのがダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)の推進です。
当社のD&I推進については2013年に内永さんにご相談に伺い、2014年から本格的に取り組んでいますが、D&Iがその後の企業変革のきっかけとなり、触媒として作用しています。

内永 「企業変革はダイバーシティ推進から」と訴えてきた身としては、本当にうれしいお言葉です。 古出さんは、これまで海外のご経験もおありですが、海外と国内でギャップを感じたことはありましたか。

古出 銀行に在籍していた当時、日本では女性は補助的な仕事を担っているケースが多かったように思います。 一方、海外の企業では当然のように女性が活躍していましたが、日本と海外では違うものだというダブルスタンダードに、何の疑問もありませんでした。
しかし、1998年にアフラックに転職したら男女の違いはなく女性の管理職が活躍していて、私自身はとても心地良かったですね。 女性が活躍している企業は、オープンな企業風土がありますから。

内永 おっしゃる通りです。 女性活躍は、いかにオープンか、個を尊重しているかの指標となっています。

古出 まさにD&Iですね。 社員を同質に染めよう、金太郎飴を作ろうとする風土は、女性だけでなく男性も辛いですよ。

内永 日本経済は「失われた30年」と言われますが、このままでは40年、50年になってしまうと思っています。 テクノロジーの進化による急激な変化から取り残されています。 本当に変革せざるを得ない時に来ているのですが、変革の第一歩である女性活躍、多様性の包摂が進みません。
貴社は、そこを理解した上で取り組みを進めていらっしゃるのが素晴らしいと思います。

古出 今後は、経営戦略の一環としてD&Iの推進に取り組んでいる会社が勝ち残ります。 競争原理の中で「やらなければ負ける」となれば、取り組む企業が増えていくのではないでしょうか。 当社の企業戦略としては、圧倒的に先に行きたいですね(笑)。
しかし、一企業で取り組むより、社会全体で底上げしていくことで自社の変革も進めやすくなると思います。

内永 そうですね。 ビジネスパートナーやお客様も変わらないと、総合力が発揮できません。
話は変わりますが、私はダイバーシティとDXはつながっていると思っています。 会社の仕組みをシステムで見える化すると、バックグラウンドや価値観が違っても共通理解が生まれるからです。

古出 DXなどの先進的な分野には、オールド・ボーイズ・ネットワークがありません。 そのため比較的女性が入り込む余地があって活躍しやすいと思います。
当社ではDXなどの先進的な取り組みを、女性が牽引しています。 もちろん女性だからではなく、能力があるからアサインしている訳ですが、これまでの固定観念の通用しない新しい分野には、女性を配置することが適していると考えています。

変革を阻む本音と建前のダブルスタンダード

内永 古出さんが、ダイバーシティ・マネジメントを意識するようになったきっかけは何ですか。

古出 アフラックに入社して、女性のリーダーがたくさんいると思っていたのですが、調べてみたら、実は女性管理職比率が約9%で、自分が思い描いていたイメージとデータにギャップが
あったことにショックを受けました。
これは、うかうかしていられないと思って、J-Winに駆け込みました。

内永 そうなんです。 「我社は女性活躍推進を頑張っているよ」と多くのトップの方が仰るのですが、事実確認をしていただくと、そうではなかったということがよくあります。
そういうこともあってJ-WinではCEO会議をスタートさせています。 参加されてみていかがですか。

古出 CEO会議に参加されている企業は、グローバル企業が多いですが、海外拠点では女性が活躍しているものの、国内ではまだそこまでいっていないケースもあるようです。 今後は、海外拠点からの突き上げもあり、グローバル人材戦略としてD&Iを進めざるを得なくなるのではないでしょうか。

内永 グローバル人材戦略を進めるためには、ジョブディスクリプション(職務記述書)が明確なジョブタイプのほうが、人事制度を統一しやすいと思います。 貴社はいかがですか。

古出 当社は、社長から社員までジョブディスクリプションがあり、社内で公表しています。
自分が将来就きたいポジションの要件に向けて自己啓発を行ったり、キャリアディベロップメントプランを作成することができます。 まだ外部から注目されていないのですが、ジョブディスクリプションが明確な企業が増えれば、ベストプラクティスとして参考にしてもらえるのではと思っています。

内永 どの企業のトップも変革を実行したいと思っていますが、なかなかうまくいきません。 貴社が次々と改革を押し進めている秘訣は何でしょうか。

古出 2018年に日本法人化し、日本における第二の創業というセンティメント(気運)が変革を後押ししたと思いますね。 前社長の山内が、熱心にダイバーシティ推進に取り組んでいた下地もありました。
変革にはトップのコミットメントが最も重要であると考えています。 トップからのメッセージは、本音と建前のダブルスタンダードがあると進みません。 社員は「会社は本気かな」と様子を見ています。 一過性ではなく本気で会社が変わってきていると社員に実感してもらうことが重要です。

内永 社員の2割が変わったら、流れが変わりますよね。 最初から100%が動くことはあり得ません。

ダイバーシティ&インクルージョン推進の輪を広げたい

内永 オールド・ボーイズ・ネットワークについては、どうお考えですか。

古出 初めて内永さんからこの言葉と説明を聞いたときには、大変衝撃的で、目から鱗が落ちました。 今では社内であからさまなオールド・ボーイズ・ネットワークは見られなくなってきましたが、まだ一部残っていることも事実です。
そのアプローチとして、J-Winの男性ネットワークに参加したメンバーが中心になって、社内のオールド・ボーイズ・ネットワークをどうやって壊していくか議論しています。

内永 オールド・ボーイズ・ネットワークを壊すためには、中間管理職の粘土層に穴を開けなければなりません。 その穴の開け方ですが、配偶者が仕事をしている方、女性のお子さんがいる方に集中的にお願いすると、じわじわ水が通っていきます。

古出 確かに、旧い考え方だと思っていた友人が、お嬢さんが就職するときにD&Iを推進している、女性が活躍できる会社に就職させたいと話していたので、驚きました。

内永 そういった方に先頭に立っていただいて、粘土層に穴を開けていただいきたいと思います。 また、東京から地方、大企業から中小企業へもこの流れを広げていきたいと考えています。

古出 当社は一部の代理店に我々の社内研修を活用していただいたり、提携先と合同で研修を実施するなど、社外へのD&I推進にも取り組んでいます。 社内だけでなく、周囲へも働きかけを行い、D&I推進の輪を広げていきたいですね。

内永 今後、J-Winに期待することについてお聞かせください。

古出 J-Winから助言をいただき実行してきたことが成果を出し、本当に感謝しています。
また、卒業生同士のネットワーク作りにも役立っています。 もしJ-Winがなかったら、日本企業のD&I推進はここまで進んでいなかったと思いますよ。

内永 ありがとうございます。 今後とも頑張りますのでよろしくお願いいたします。

PROFILE

古出眞敏氏(こいで・まさとし) アフラック生命保険株式会社 代表取締役社長
1984年東京大学法学部を卒業後、同年日本長期信用銀行入行。1990年6月ニューヨーク州弁護士登録。1998年11月アフラック入社。2006年12月日興アセットマネジメント株式会社入社。2008年12月アフラック再入社、執行役員に就任。2017年7月日本における代表者・社長。2018年4月より現職。

 

内永ゆか子(うちなが・ゆかこ) NPO法人J-Win 会長理事
1971年東京大学理学部物理学科卒業後、日本IBM入社。1995年取締役就任。2000年常務取締役ソフトウェア開発研究所長。2004年4月取締役専務執行役員。2007年4月NPO法人J-Winを設立し、理事長に就任。2008年4月ベネッセホールディングス取締 役副社長、並びにベルリッツコーポレーション会長兼社長兼CEO を経て、2013年6月ベルリッツコーポレーション名誉会長を退任。