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発行日:2022年11月22日

内永会長理事×横尾理事長 特別対談(J-Winレポート41号)を掲載しました

特別対談「J-Winのはじまりと現在地」

2022年7月より新体制となったJ-Win。
新理事長に就任された横尾敬介氏と、15年間の長きにわたりダイバーシティ・マネジメントを推進されてきた内永ゆか子会長理事との特別対談が、広報誌「J-Winレポート」41号に掲載されました。
J-Winの歩みを振り返りながら、今解決すべき課題とこれからについてお話しいただきました。

新理事長 横尾氏とJ-Winとの出会い

内永 2022年7月よりJ-Winは新体制となりました。新理事長になられてから、J-Winの印象で何か思っていたものと違ったなと感じることはありましたか?

横尾 ご心配、ありがとうございます(笑)。これまでもJ-Win理事として活動し、活動状況についてもある程度理解できていたので、理事長になって印象が一新されたということはないですね。

内永 横尾さんと初めてお会いしたのは確か2003年。横尾さんがみずほ証券で常務執行役員経営企画グループ長、私が日本IBMで常務取締役だったころだと記憶しています。

横尾 そうです。もう20年近くも経つんですね。
当時の社長より、これからのみずほ証券は多様性の観点より、積極的に女性活躍や女性の地位向上を目指すべきだというお話がありました。私が推進責任者として選ばれ、実践の機会が与えられましたが、どうやって取り組んでいいのかわからない、という時に紹介されたのが日本IBMの内永常務でした。

内永 多様性の必要性を説き、IBMの業績をV字回復させたルイス・ガースナー氏の取り組みや日本IBMでのダイバーシティ推進活動「ウィメンズカウンシル」の運営などについてもお話ししたことを覚えています。

横尾 経営としてダイバーシティをどう位置づけるか、私が抱えていた問題意識のようなものを伝えたところ、多様性の第一歩である女性活躍は女性のためにやるのではなく経営戦略であること。さらには、多様性を受容できる環境を整えることが大切であり、それが個々の力を発揮し組織力を高めることにつながることなど、具体例を挙げながら丁寧に教えていただきました。
経営の継続的な成長を支えるイノベーションを生み出すためにダイバーシティを推進することの必要性を学んだ私は、すぐにプロジェクトチームをつくり、経営理念、ビジョンの見直しからスタートさせました。

内永 私からも横尾さんに相談させていただきました。女性リーダーの育成を目指したNPO法人J-Winを立ち上げたいが、どう思うかと。2007年にはJ-Winを設立し、みずほ証券取締役社長であった横尾さんにはアドバイザリーボードのメンバーになっていただき、2014年からはJ-Winの理事をお務めいただいています。

共に歩んだ15年間の活動の軌跡

内永 J-Win設立後、2年目にベルリッツコーポレーションのCEOに就任しました。海外出張の機会も多くJ-Winを続けるのは無理かなとも思いましたが、何とかやり続けることができました。
続けることができたのは、「ウィメンズカウンシル」での考え方や運営方法を基に、会員企業の女性リーダーを育成するための仕組みづくりをさらに強化することができたからです。それは「女性メンバーが自分たちで考えて、自分たちで運営する」というス キームの実装です。
最初から、Women to the TOP!というコンセプトを掲げていましたが、設立当初はHigh Potentialネットワークしかなく、TOPへとつなげることができませんでした。卒業生からの声も後押しとなり2010年にはNext Stageネットワーク、2011年にはExecutiveネットワークがスタートしています。

横尾 メンバーが自分たちで考え、自分たちで主体的に運営に携わる。そういった意識をもって活動できれば自身の成長へとつながります。さらには3層の女性ネットワークが連携して相互研鑽を積む。このような活動が続けられているのはJ-Winだけだと思います。

「女性3層ネットワーク」とGive back

内永 女性リーダーを輩出することが難しいのは、なぜだと思いますか?

横尾 女性活躍やダイバーシティ推進ということを「国も推進しているから」「女性社員に優しい企業イメージづくり」「他社 でもやっているから」などといった理由で取り組み、女性自身の意識の問題として真剣にとらえていないからだと思います。
女性の活躍推進、キャリアアップをどう考えるか、というのは、男性の問題もありますが、女性の意識の問題が本質的にあると思います。女性がしっかりと自分の考えをもって、物事を進めていく力や能力を身につけなければ、いくら周りが女性活躍推進といってもそうはなりません。

内永 海外では女性エグゼクティブが上級管理職の女性をサポートし、上級管理職はノンマネージャーの女性をサポートする、というスキームがあります。自分がキャリアップできたのは周りのサポートがあったからと考え、私もこれからチャレンジする若い人にお返ししなきゃ、という思いが彼女たちを動かします。「Give back」という行動です。
残念なことに、日本の多くの女性エグゼクティブは、「出世できたのは自分が苦労して頑張ったから。今度はあなたたちが頑張るのよ」という考え方なんです。
これは違うなと。だからこそJ-Winには連携して切磋琢磨する3層構造があり、Women to the TOP!を目指すメンバーに向けた後進育成「Give back」があるのです。

横尾 そうですね、男性にはGive backという意識はなくても、上の立場の人が後輩や部下に対しアドバイスやサポートを日頃からしていますよね。日本では上の立場にいる女性の絶対数が少ないということも原因なのかもしれません。

内永 数が少ないからこそ、もっと助け合ってほしいですよね。
でも日本では、女性同士が足の引っ張り合いをすることもあります。「私の肩を使ってあの人は塀を乗り越えていった」とか。でもそんな時は「いいじゃない、肩を貸してあげれば。それでその人が塀を越えて上に行ったら、手を差し伸べて引っ張り上げてもらえばいい」って言いたいです。人数が少ない中で選ばれた女性たちが反発し合うのは問題ですよね。「けんかするなら男性としろ、女性同士でするな」って(笑)。

「D&I推進3層システム」の現状

横尾 一方で、D&I 推進3層システム。仕組みこそでき上がっているようですが、それぞれの活動は見直しを含め、プログラムの 内容をさらに充実させていかなければならないと感じています。

内永 そうですね。CEO会議/実行リーダーの会が2021年にできて、3層システムの形が整ったところです。男性ネットワークの スタートは2017年。それまでの8年間はダイバーシティ推進責任者会議しかありませんでした。そのプログラムもダイバーシティ推進者同士が議論するといったものではなく、J-Winからの情報提供という位置づけで始めたものです。これをお互いに必要な情報を共有し、切磋琢磨するスキームに変えようとしています。

横尾 D&I推進3層システムを活用できている会員企業は、D&I推進をアグレッシブに進めている先進企業。単なる情報提供だけではなく、会員企業がD&I推進を加速させるための必要な情報を整理して提供すべきと感じていました。
まずは、各企業のダイバーシティ推進責任者、担当者同士が意見交換を行って情報を共有し、問題の本質を探り、J-Winの事務局はそこを吸い上げてアドバイスしていくべきだと思っています。

内永 私の考えをつけ加えると、ダイバーシティ推進責任者会議のメンバーに対して「J-Winではこう言っています」ということ を、提供できるようにすることだと思っています。
企業が抱える問題には共通するテーマが多く、他社のベストプラクティスや課題が共有できます。それぞれの企業の中で、上司に「こうすべきです」と言いにくいのであれば、「J-Winではこう言っています」と提言できるよう、研究会などで発信していくべ きです。

J-Winのこれから

内永 High PotentialネットワークだけでスタートしたJ-Win活動も、15年間の活動の中で女性3層ネットワークへと積み上がり、企業におけるダイバーシティ&インクルージョンの推進支援を目的としたD&I推進3層システムとともに、2つの活動基盤をつくりあげることができました。

横尾 繰り返しにはなりますが、女性3層ネットワークに関しては、私が思っていたよりも企業から参加されているメンバーの皆さんが自律的に活動されています。それぞれの役割をもったメンバーが運営にも積極的に関わっていることを知り「ここまで来ているんだ」と驚きました。素晴らしいことです。
自律的に考え、議論して行動する、そういった意識で活動されていることがご自身の成長にもつながっていきます。女性3層ネットワークはこのままで、これをさらに充実させて活動していけばいいと思っています。

内永 女性3層ネットワークのメンバーには自己満足に浸るな、とも伝えたいですね。周りよりも私は頑張っていると満足すれば成長は止まります。だからWomen to the TOP!と言い続けているんです。

横尾 私はもっと多くの人にJ-Winの存在を、活動を理解してほしい、と感じています。J-Win理事長という立場で企業のCEO、実行リーダーの皆さん、ダイバーシティ推進の企業責任者の皆さんにお会いし、お話しする機会も多くなりました。
そこで気づかされたのは、私たちが企業の抱えるD&I推進の課題を充分に理解できていないことです。そして企業の経営層、上級管理職の皆さんもJ-Winの活動を詳しくご存知ではないということです。メンタリングや上司会といったプログラム、男性ネットワークの活動などを紹介すると「知らなかった」と驚かれることがあります。

内永 特に、女性3層ネットワークにメンバーを派遣する立場の上司の方にはJ-Win活動を充分に理解していただきたいですね。
J-Winに参加していることは知っている、忙しそうにしているけど何をしているのか分からない、というのが印象のようです。High Potentialネットワークでは上司会を開催し、500名を上回るメンバーとその上司の方が参加します。上司の皆さんにはメン バーが目指す姿とJ-Win活動への理解を深め、活動を通じたメンバーの成長を知っていただく絶好の機会になっています。

横尾 多様な価値観をもつ人材の活用がイノベーションを生み、企業競争力の強化につながる経営戦略であること。その実装に向けた活動として、J-Winには女性3層ネットワークとD&I推進3層システムがあることを会員企業の皆さんには知ってほしいですね。そして、それぞれが自分ごと化して参加してほしいと思っています。
皆さんを受け入れるJ-Winとしても、さらに充実、拡大させていくものと活動内容や運営方法、会員企業メンバーとの連携などにおいて早急に改善させるべきものを明確にして、責任をもって対応していきます。
私も内永さん同様、ダイバーシティ・マネジメントはライフワークと考えています。これからも2人3脚で頑張りましょう!

PROFILE

横尾理事長横尾敬介(よこおけいすけ)NPO法人 J-Win理事長 
1974年株式会社日本興業銀行(現 株式会社みずほ銀行)入行。みずほ証券株式会社 常務執行役員経営企画グループ長を経て、2007年取締役社長就任。2011年取締役会長。2015年公益社団法人経済同友会 副代表幹事・専務理事。2019年株式会社産業革新投資機構 代表取締役社長CEO(現任)。2022年7月NPO法人J-Win理事長に就任。

 

内永会長理事内永ゆか子(うちながゆかこ) NPO法人 J-Win 会長理事
1971年日本IBM入社。1995年取締役就任。2000年常務取締役ソフトウェア開発研究所長。2004年4月取締役専務執行役員。2007年4月NPO法人J-Winを設立し、理事長に就任。2008年4月ベネッセホールディングス取締役副社長、並びにベルリッツコーポレーション会長兼社長兼CEOを経て、2013年6月ベルリッツコーポレーション名誉会長を退任。2022年7月NPO法人J-Win 会長理事に就任。

※このインタビューは2022年10月におこなわれました。肩書等は実施当時のものです。