Next Stageネットワーク

開催日:2021年09月27日

「J-Win Next Stageネットワーク第3回定例会」を行いました。

「J-Win Next Stageネットワーク第3回定例会」を開催しました。
今回のオンライン開催にはNext Stageネットワークメンバー200名が参加しました。

マクロ経済政策や、日本の経済リカバリーの鍵は何か - DX/GX その実現に向けた課題を知ると同時に、ビジネスや社会の変化における着眼点やアンテナの張り方を学び、自身の日々の行動において何が実践できるかを考える機会としました。

経済のリカバリーの鍵を握る

以下に講演の様子をダイジェストでご紹介します。
(*肩書き等は講演当時のものです。)

講演「ポストコロナの経済回復への道」
東京大学名誉教授 学習院大学国際社会科学部教授
伊藤 元重氏

リバウンドかリカバリー

新型コロナウイルス感染症拡大前、世界は長期停滞の状況にあり、その背景には、低金利、民間投資の低調さ、実体経済との温度差、生産性があがらないこと等々、さまざまな要因が複雑に絡み合っていた。
経済は低金利に支えられて、低迷していたが安定している状態であった。他国においても同様の構造的問題だが、日本は顕著。企業の資金需要が低く、コロナ直前は最悪の状況。そして、新型コロナウイルス感染症という外的要因によって意図しない消費抑制が続いており、感染拡大の緩和はリバウンドとして一定の経済効果をもたらす。これは、ある意味特殊な状況である。その後の経済回復にどうつなげていくのか、それはリバウンドではなく「リカバリー」であり、どう持続・拡大させていくのか、ということになる。

経済のリカバリーの鍵を握るDXとGX

各国政府は財政出動などを含めて、様々検討しているが、潜在成長率をどうあげていくかが重要である。コロナを機に一気に打破しようとしているのが欧米の戦略。DXやGXがそのカギを握っている。
DXやGXにうまく対応できなければ、市場からの撤退という厳しい現実につながる可能性もある。DXは技術革新を伴うため、企業が主役になるが、大企業は何事にもスピード感が鈍く、危機感をどこまで持っているのか。
経済回復のカギの一つとして気候変動やカーボンニュートラルがある。GXはより政治的な意図をもった経済改革。特に欧州の積極的な、法制化を含めた環境対応要請は、多くの企業が半強制的に参加せざるをえない。どちらかというと地球環境保全という人類社会全体への貢献がメインだと思われてきた環境への取り組みも、よりよい経済構造をめざす成長戦略の一環でもある。

DXは加速するのか

長期停滞の構造要因を受けて、生産性は低下し続けている。生産性の伸びを回復させられるかがカギとなる。 他国のマクロ経済状況にも関心を向ける。アメリカは低金利で財政負担の軽い間に、供給サイドを刺激する政策を検討している。 欧州はコロナ後の経済活性化に向けて大規模財政支出を計画している。日本では政策の縛りが大きく、同じような策は難しい状況である。
日本はグローバルから見て3周遅れ状態。加速度的に進むデジタル革命と技術の複合で、世界はさらに進化している。DXに関して、イノベーションによる既存ビジネスの破壊が論じられるが、「イノベーション=既存ビジネスの破壊」だけにせず、両利きの経営に持っていけるかが重要である。
少子高齢化が進む中、労働力の担い手として、女性や外国人を使う必要性に迫られている。そういった労働力不足への対応や顧客課題の解決、価格競争に巻き込まれないための付加価値へ技術を活用するなど、価値の実現のために技術を活用することが必須である。

~全体の感想 参加者アンケートより~

・職業柄、相場の見通しについては話をします。その際に日本はダメだから米国へ投資しましょうということが多いのですが、そうではなくて日本企業(自分たち)が変わる必要があるという話をお聞きし、自分にそういう視点が抜けていたことが発見できたのは大変有意義でした。
・今までぼんやりと見えていた経済潮流の方向性をはっきりと明示頂いたように思う。既存日本企業の事業構造変換の課題を実感するとともに、当社では何をしているか?何ができるのか?という危機感及び経営陣の方向性への納得を得ることができた。
・1990年代からの経済の流れをわかりやすく解説いただき、自分の経験と合わせて考え、よく理解することができました。ポストコロナの経済回復への課題も明確で、今後のビジネスや政府、日銀の動向を注視していきたいと思います。
・GXとDXへの対応が必要な本当の理由、国家レベルの経済政策等、国として、企業として、個人として幅広く考え直すことができる時間でした。
・最近、ミクロな業務ばかりでしたので、広い視野を持つ重要性を思い起こさせていただきました。
・イノベーションによる既存ビジネスの「破壊」というワードが刺激的でした。現在のビジネスの延長ではなく、切り離ししかもスピード感を持って取り組まなければ生き残れない。かねてより感じてはいましたが、現実をはっきりと突き付けられたように感じた。

【伊藤 元重 氏のPROFILE】

東京大学名誉教授 学習院大学国際社会科学部教授
1951年生まれ。静岡県静岡市出身。東京大学経済学部卒業。
東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。
ロチェスター大学大学院経済学部博士課程修了。 1993年 東京大学経済学部教授(~現在 名誉教授)
2006年 政府税制調査会委員
2012年 社会保障制度改革国民会議委員
2013年 経済財政諮問会議民間議員
2016年 学習院大学国際社会科学部教授(~現在)
2021年 気候変動対策推進のための有識者会議委員
社外取締役 東日本旅客鉄道㈱、㈱静岡銀行、住友化学㈱
社外監査役 はごろもフーズ㈱