J-Winダイバーシティ・アワード
2021年08月17日
「2021 J-Winダイバーシティ・アワード」特集
2021年5月、6月に開催したダイバーシティ推進責任者会議では、「2021 J-Winダイバーシティ・アワード」で企業賞を受賞された千葉銀行様、日本航空様、東急様、リコー様より、ベストプラクティスを発表いただきました。ダイバーシティ&インクルージョンの取り組み、女性活躍推進について、受賞各社より寄稿いただきましたので以下にご紹介します。
「2021 J-Win ダイバーシティ・アワード」受賞企業4社の取り組み紹介
企業賞【アドバンス部門】大賞 株式会社千葉銀行
ダイバーシティ推進は「経営戦略」!
株式会社千葉銀行 ダイバーシティ推進部 調査役 新井 仁美 氏
千葉銀行は、多様な人と人とが連携し、お互いの持ち味を活かすことで環境の変化に柔軟かつスピーディーに対応できる組織を創ることを目指し、働き方改革・DXの促進と並んで「ダイバーシティ推進」を中期経営計画の主要課題に位置づけて、役職員一体となって取り組んでいます。
経営トップのコミットメントと推進体制
「ダイバーシティで 強く しなやかに~価値観の多様化で新たな発想を生み出そう~」をスローガンに、数値目標や行動指針を行内外に発信し、経営トップの強いリーダーシップのもとさまざまな取組みを進めてきました。
特に職員の4割を占める女性の活躍推進を最重要課題に位置づけ、「2021年7月までにリーダー職(※1)に占める女性の比率を30%とする。管理職に占める女性の割合を20%にする」という数値目標を設定(※2)し、対外公表したうえで、育成・登用を進めています。
※1 リーダー職とは、支店長代理など部下を持つ職務にある職員及びそれと同等の地位にある職員
※2 2021年7月時点でリーダー職の女性比率31.6%、管理職の女性比率20.0%を達成。
推進体制では、専任組織である「ダイバーシティ推進部」を設置している他、全ての部室・営業店に「ダイバーシティ統括責任者(所属長)」と「ダイバーシティ推進リーダー」を置き、各職場で半年に1回「ダイバーシティ推進会議」を行い、職場毎の課題を洗い出し、課題解決に向けたPDCAを回す仕組みを作っています。 ダイバーシティ統括責任者は自身の「イクボス宣言」を作成し、行内LANで公開するなど、ダイバーシティを率先して推進しています。
また、さまざまな部門に所属する職員がダイバーシティ推進の当事者として積極的に関わり現場発信の施策を進めることを目的に、横断組織「ダイバーシティ推進委員会」を設置しています。
推進委員会では人事担当役員を委員長とし、指名・公募による多様なメンバーが、テーマ毎の部会に所属し、ダイバーシティ推進に関する課題検討、施策立案、周知活動を行っています。営業現場の男性管理職も参加することで「男性管理職の意識改革」に繋がっているほか、各部会の部会長を若手~中堅の女性が担うことで、リーダーシップ経験を積む場としても機能しています。
女性の育成と従業員の行動変革
女性の育成や従業員の行動変革に向けた具体的な取組みは以下の通りです。特に女性については、役員、部長によるメンタリングやラウンドテーブルを通じ次世代幹部候補者の育成を行う他、企業内保育所の設置や両立支援制度・スキルアッププログラムの拡充による育児休業者からの早期復職支援、職域拡大に向けKPIを設定し、配置育成を強化しています。
管理職の意識・行動変革や性別役割分業意識の課題に対し、全従業員にアンコンシャス・バイアス研修を行っているほか、各種評価にダイバーシティ推進度や生産性向上に関する項目を導入することで、一人ひとりの行動に繋げていくことを目指しています。
また、育児・介護など仕事と私生活の両立を支援する取組みや、男性の家事・育児参画(男性の育児休業取得率100%達成)、性的マイノリティ(LGBT)への理解促進、など、多様な職員が能力を最大限に発揮できる環境整備を進めています。
地方銀行業界や地域と連携したD&I推進活動
地域経済を支える地方銀行として「地域・業界に活動の輪を広げる」ことにも力を入れています。
地方銀行業界の「輝く女性の活躍を加速する地銀頭取の会」、千葉県の産・官・学のリーダーによる「輝く女性の活躍を加速するちばのリーダーの会」を通じ、地域・業界で働く女性の早期復職とキャリア形成に向けた活動を連携して進めています。
当行は、今後も多様な人と人とが連携し、互いの持ち味を活かすことで環境の変化に柔軟かつスピーディーに対応できる組織をつくるため、ダイバーシティ推進の取組みを一層加速させてまいります。
企業賞【アドバンス部門】準大賞 日本航空株式会社
多様な人財が生き生きと活躍することで、新たな価値創造を実現
~「女性管理職30%」を目指して~
日本航空株式会社 人財戦略部 部長 飯塚 久徳 氏
JAL Vision 2030 と 中期経営計画
JALグループでは、「2030年に向けたJALグループのあるべき姿」として「JAL Vision 2030」を掲げるとともに、2021年度からの5年間を対象として、新たな中期経営計画を策定しました。
これは、「安全・安心」と「サステナビリティ」を成長のエンジンとして、「世界で一番選ばれ、愛されるエアライングループ」になるというビジョンを描くものですが、その中でも、D&Iは最も重要な戦略の一つとして位置付けられており、多様な人財が一人ひとりの個性を発揮して活躍することで、新たな価値を創造してまいります。
これまでの取組み
2016年度までのフェーズで優先的に取組んだのが「意識改革と環境整備による定着推進」です。ライフイベントで女性社員が退職せざるを得ない環境を改善する、男性社員と女性社員を同じ土俵の上で勝負をさせるといった環境整備を進めました。
一方、2017年度以降は「異動配置と育成強化による登用推進」に力を入れました。女性の職域を広げ、責任あるポストに配置する取組みを推進してきています。
女性管理職30%に向けて
今後はこれまでの取組みを踏まえ、登用の一層の加速をしていくフェーズです。現状の到達点としては、JALグループの管理職比率は昨年度末時点で19.5%ですが、今回策定した中期経営計画では、この計画期間中に、JALグループの女性管理職比率を30%まで向上させるという目標を掲げました。
今後、この達成に向けて、
- 客室乗務員や女性の多い職場を中心に活躍する領域を広げるとともに
- グループ経営を俯瞰できるポストを経験させる
- また、女性社員に出向や社外研修を経験させ、視野を広げ、視座を高め、人脈を作ってもらう
等の取組みを通じ、女性社員の登用を一層加速していきます。
至近の取組み
ふるさとアンバサダー、ふるさと応援隊
昨年度、ふるさとアンバサダー、ふるさと応援隊という取組みを始めました。これは、約1,000人の客室乗務員が地域おこしに協力をさせていただくものです。
この事業には、
- コロナ禍で打撃を受けた全国の観光業をはじめ、高まる地域活性化へのニーズにこたえ、地域の発展に貢献する、
- インバウンド需要回復時に、外国人旅行客にとって魅力ある街づくりを支援する、という事業そのものの意義もありますが、一方で、客室しか経験したことのない社員に、企画・販売・保守まで一手にやってもらう、実践教育という側面もあります。
この事業を通じ、幅広い視野のもと、自ら考え行動する自律的な人財を育成し、将来のJALグループを牽引するリーダーを育ててまいります。
男性社員の意識改革、ワークスタイル変革
当社の男性社員がJ-win男性ネットワークに参加し、その結果を「男性を科学する」と題して社長・経営陣を含めたリーダー向け勉強会でプレゼンテーションをしました。このプレゼンは、社長をはじめとする当社の役員・男性陣に、男性の無意識な行動、男性の行動原理への気づきを与え、社内で大きな衝撃・反響を呼びました。
さらに、同時にワークスタイル変革も進め、例えば緊急事態宣言以降半年にわたって一度も出社せず家庭と両立する男性社員も出始めています。その結果として昨年の「イクメン企業アワード」特別賞をいただくことにもつながりました。
グループ会社社長・役員への登用、出向・研修を通じた育成
職種や出身会社に関わらず、女性社員の、グループ会社社長・役員への登用も進めています。客室乗務員出身のグループ会社社長、空港業務を担う会社出身の空港支店長、さらには地域限定で採用した社員の支店長への抜擢など、ここ数年で続々と女性役員が登用されています。
J-winの各種ネットワークに参加させていただいたり、他企業へ新任の女性管理職を出向させたりすることで、経験を積ませ、目指すべきリーダー像を意識させたり、社外への人脈を築くといった活動も行っています。
JALグループは、今後も女性をはじめとした多様な人財が生き生きと活躍できる会社を目指して強力にD&Iを推進してまいります。
企業賞【ベーシック部門】ベーシックアチーブメント 大賞 東急株式会社
東急のダイバーシティ推進 ~個性を尊重し、人を活かす~
東急株式会社 人材戦略室 労務企画グループ ダイバーシティ推進 課長 高橋 葉子 氏
制度・風土・マインドの観点からダイバーシティマネジメントを推進
当社では、東急グループ経営理念のひとつである「個性を尊重し、人を活かす。」を背景に、ダイバーシティマネジメント(多様性を生かす組織づくり)をサステナブル経営のための戦略として位置づけ、「東急株式会社(連結)ダイバーシティマネジメント宣言」を策定し、「制度・風土・マインド」の観点から施策を展開しています。2014年のダイバーシティ部門設置以来、女性管理職数は増加しましたが、女性従業員比率と女性管理職比率間にギャップがあること、当社プロパーの女性取締役が不在である点が女性活躍推進における課題と認識しています。
ダイバーシティマネジメント推進体制
人事・経営戦略・鉄道事業(現在は東急電鉄㈱)部門によるダイバーシティ推進WG(月1回)が中心となって各種取り組みを企画・展開し、社内全部門横断によるダイバーシティ推進拡大WG(年1回)により全社の状況をモニタリング・情報共有しています。さらに、「人材戦略に関するアドバイザリー・ボード(社外取締役を含めた議論の場)」や取締役会等においてダイバーシティ推進状況を経営層に報告検討し、次の取り組みへと展開しています。
具体的な取り組み
制度
自身の職務・環境に合わせ、働く場所や時間を主体的に選択する「スマートチョイス」を導入しています。2020年度から、本社勤務員を対象として在宅勤務を制度化、2021年度から、フレックスタイム制を試行しています。
風土
風土醸成には経営層と管理職層のコミットが重要と認識し、2015年度から毎年、全役員と管理職対象の「管理職のマネジメントセミナー」において、ダイバーシティ経営に必須となるテーマについて各界リーダーからの講演会を開催し社長メッセージを発信しています。風土醸成の一例として、当社の男性育休取得率は2019年度82.1%となりました。
マインド
マインド醸成として、2014年度から毎年、女性管理職およびその上長、各社人事担当役員を対象とした「東急グループ女性管理職フォーラム」を開催し、2017年度から実施したメンター制度では、2019年度までの3年間で全役員がメンターを経験しています。
女性活躍推進の進捗状況と今後の取り組み
1988年度から女性総合職の採用を行い、1年目の全寮制教育も男女同様に実施するなど、従来から男女の区別なく採用を行い、配属においても性別に関係なく幅広く行ってきましたが、充実した「女性リーダーシップパイプライン」の構築を目的に、「育成にはゲタをはかせるが、登用にははかせない」をモットーとして、ここ数年実施した主な取り組みと結果は以下のとおりです。
- 採用:2016年度に「新卒女性総合職採用比率40%以上」という目標を掲げ、2016~2020年度の5年間平均で42%と目標達成
- 育成:女性限定の外部研修に管理職手前層および全女性管理職を派遣、女性管理職の上位職挑戦意欲は約7割
- 登用:2014年度に掲げた「2020年度までに女性管理職40人」という目標を1年前倒しで達成、女性部長級の多くが連結子会社の社長や経営幹部の要職に就任、若手女性従業員のロールモデルや連結子会社の女性管理職の増加にも寄与
今後は、制度面では働き方のさらなる拡充、風土面では全社員のD&I納得感醸成・管理職リーダーシップ向上、マインド面では自律的なキャリア意識醸成への取り組みを進め、新たな目標「2023年度末までに女性管理職比率10%以上・男性育休取得率100%」の達成および女性プロバー役員の誕生などを通し、「誰もが働き続けたい会社」の実現を目指していきます。
企業賞【ベーシック部門】ベーシックアチーブメント 準大賞 株式会社リコー
「デジタルサービスの会社に転換するためにD&Iは不可欠」
D&I推進を企業変革の柱と明確に位置づけ
株式会社リコー プロフェッショナルサービス部 人事サポート室
働き方変革・D&I推進グループ リーダー 斎藤 夕紀子 氏
リコーグループ Global Diversity & Inclusion Statement
「リコーグループでは、世界中すべての人びとのユニークな才能、経験、知見を結集し、新たなイノベーション創出に取り組みます。」
At Ricoh, we embrace and respect the collective and unique talents, experiences, and perspectives of all people. Together, we inspire remarkable innovation. That's how we live the Ricoh Way.
これは、リコーグループが今後、あらゆる多様性や価値観を互いに受け入れ、グローバルの社員が一つのチームとして働く決意を表すものとして制定し、22言語でグローバルに発信しています。
経営方針としてのダイバーシティ&インクルージョン
リコーグループが取り組む7つのマテリアリティの1つとしてダイバーシティ&インクルージョンを掲げています。
(参考:https://jp.ricoh.com/sustainability/materiality)
社会の持続的な発展やイノベーションのために、社員の多様性を尊重し、イキイキと働けるような環境整備に取り組んでいます。
そのための行動指針をリコーグループ企業行動規範に明記し、従業員の理解増進を図っています。
ダイバーシティ推進とワークライフ・マネジメントを両輪に
リコーグループが目指すダイバーシティ&ワークライフ・マネジメントの姿は「社員一人ひとりのやりがい(活躍)の実現と企業力の向上です。
多様な人材が個性・能力を最大限に発揮し、英知を融合させることで、イノベーションが創出され、多様な顧客ニーズに対応した付加価値の高い商品・サービスの提供につながります。 その実現のためには、多様な人材が活躍できる環境整備が必要であり、社員一人ひとりが仕事と仕事以外の生活の双方をマネジメントし、生産性の高い働き方をすることが必要となります。
このような考え方から、リコーでは、「ダイバーシティ推進」と「ワークライフ・マネジメント」を両輪として取り組みを進めています。
【女性活躍】能力と意欲のある女性を登用するための育成施策と活躍推進
多様性推進の一つとして、女性活躍推進の取り組みを継続的に行っています。
2020年度より女性管理職比率をESG目標として設定し、2023年度までにグローバルで16.5%(20年度実績15.1%)、日本で7.0%(同5.8%)を目指しています。
目標達成に向け、女性自身の育成支援では各階層別の課題に合わせた女性向けの研修やフォーラム等を実施し、更に、D&I推進のための職場環境整備としてマネジャー向けの意識啓発施策や、全社員に向けたD&WLMに関する情報発信、働き方変革やトップコミットメントなどを行っています。
主な取り組みとして、若手の早期育成として係長昇格後2年以内程度の若年層を対象とした、マインドセット、自己認知、コミュニケーションや相互理解などを学ぶ研修や、女性管理職を対象としたネットワーキング活動などを行っています。
女性管理職のネットワーキング活動"WING(Women's Initiatives for Networking & Growth)は、管理職に求められる期待・役割・成果に加え、ダイバーシティの観点でより大きな影響を周りに与えるキーパーソンとして「自分にしか出せない影響力、付加価値を発揮して成果を形にする」「自分たちの成長が、後輩女性の育成に繋がることを意識した活動で貢献する」ことを期待し立ち上げた活動で、今年で10年目になります。
具体的には、自己成長を図るための勉強会の企画や、後輩女性キャリア支援として、先輩社員を囲むキャリア座談会や社内ポータルで「こんな時どうしているの?」といったFAQや、色々な先輩社員を紹介するサイトを作り発信、また、組織からの要望として設計開発部門から「ユーザー(女性)視点を製品に反映させたい」ということで、製品の試作にWINGメンバー加わり、男性中心の設計者だけでは気付かなかった指摘を遠慮なく行い、製品仕様に反映させる、といった活動実績もあります。
リコーは今後も、社会の持続的な発展やイノベーションのために、社員の多様性を尊重し、イキイキと働けるような環境整備に取り組んでまいります。