Next Stageネットワーク

開催日:2021年07月20日

「J-Win Next Stage ネットワーク第1回定例会」を開催しました

「J-Win Next Stageネットワー第1回定例会」を開催しました。
>今回はオンラインでの開催となり、Next Stageネットワークメンバー200名が参加しました。

研究のかたわら耐震教材を多数開発し、各地で「減災講演」を続ける名古屋大学減災連携研究センター教授 福和伸夫氏をお招きし、災害大国日本において知っておくべき様々なリスクと対応策についてお話をいただきました。Next Stageメンバーにとっても自身の企業やサプライチェーンにおけるBCPなどのリスク管理を考える機会となりました。

自然災害を防ぐことはできないが、被害を減らすことはできる

以下に講演の様子をダイジェストでご紹介します。
(*肩書き等は講演当時のものです。)

講演「災害大国日本 ~過去に学び、未来に備える~」
名古屋大学 減災連携研究センター教授
福和 伸夫氏 

経済格差のトレンドとコロナ危機

地域を育み協働で難を避け事前対策を進める

今後起こるであろう、富士山の噴火や、南海トラフの大地震、首都直下型地震など、起こった場合を想定し、それを乗り越える覚悟で今の時代を生きていく必要がある。
地震は発生後にやれることには限りがあり、何としても事前対策しかない。災害は絶対に起こることが前提で、危機感を持ちそのリスクを最小にする。地域主体の連携で危険回避ためにできることを、やっていかなければならない。
さまざまな災禍が重なった時に歴史が動き、百年に一度、世の中が大きく変化をしてきたという歴史背景がある。日本の248回の改元のうち125回は災異改元であり、過去に学ぶということで、自然災害・疫病と歴史変化のかかわりについて作成された年表などを用いて、歴史と災害の関係性について理解する必要がある。
例えば、天平の時代には、地震があり、天然痘が流行し、仏教を広めて社会の安定をめざした天平文化となった。疫病、地震のあった貞観の時代には遣唐使廃止したため国風文化となった。
令和、戦国時代、幕末の災害、大正デモクラシーから敗戦、東京を襲った3震災(元禄地震、大正地震、大戦)、阪神・淡路大震災。東日本大震災からは、進まぬ危険回避、高層ビル対策、ライフライン強化、関連死の影響が大きいことが課題として挙がっている。

見たくないことを見る

本当に大切な、見たくないものを直視することが求められている。危険の存在を認め、危険に正対して議論できる文化を作っていくことが重要である。
国力が落ちている現在の日本において、国を救うためにできることを真剣に民間企業が国全体を俯瞰して捉えて、一極集中型から分散型社会へ移行するために今からやるべきことを真剣に考え取り組んでいかなければならない。縦割り社会から柔軟な地域連携のできる社会への移行も急務であり、災害に耐えることのできる新たな国土構造を作り上げていく必要がある。
自分の目で見て自分の頭で考え、判断・行動することが重要であることを認識し、そのような能力を涵養して欲しい。

~全体の感想 参加者アンケートより~

・福和先生のようなお話は初めてで、大変刺激的でした。普段自分自身がどれだけ緊張感なく生きてきたのか、思い知らされました。
・災禍と歴史の関係を体系的に示していただき、これまで考えたことのない視点を得ることが出来た。また、東京一極集中がダメ、企業のBCPはダメ、メガバンクはダメと、今までの考え方を根底から崩すような、衝撃的内容であり、災害対策を考え直すきっかけとなりました。
・ご講義のはじめに先生がおっしゃったとおり、東京に住んでいることがつらくなりました。災害と社会情勢の歴史年表は非常に興味深いものでした。
・やはり社会が動くにはそれなりの理由があると再認識するとともに、事象のつながりにもっと関心を寄せないと本質が見えないことも感じました。大変勉強になりました。
・講義で聞いたリスクは誰もが感じているはずですが、なかなか、公には問題になりにくく、発生した時には被害が甚大になりそうだが、利益社会や政治は止めるのは、難しい流れなのかと感じました。
・災害対策について日ごろから考え計画しておくことが大事だと思いました。また個人的に名古屋出身なので愛知県の製造業が日本を支えていることを知りうれしくなりました。名古屋愛炸裂の先生のお話はとても元気をもらいました。

【福和 伸夫 氏のPROFILE】

名古屋大学減災連携研究センター教授
1979年 名古屋大学工学部建築学科卒業、1989年名古屋大学工学博士
1981年 清水建設㈱入社
1991年 名古屋大学工学部助教授(建築学科)
1997年 名古屋大学先端技術共同研究センター教授
2001年 名古屋大学大学院環境学研究科教授
2009年 名古屋大学大学院環境学研究科副研究科長(~2011.3)
2010年 名古屋大学減災連携研究センター教授を兼務
2012年 名古屋大学減災連携研究センター教授・センター長(~2021.03)
2017年 あいち・なごや強靭化共創センター・センター長
2017年 日本地震工学会・会長(~2019.05)
2020年 中部防災推進ネットワーク・会長