Executiveネットワーク

開催日:2021年07月14日

「J-Win Executiveネットワーク7月度定例会」を行いました

「J-Win Executiveネットワーク7月度定例会」をオンラインにて開催し、53名のメンバーが参加しました。

今回の定例会では、環境・資源・エネルギーの各分野において、地球環境の現状や気候変動の問題が、社会、経済、産業、ビジネスにどういった影響を与えるかについて 東京大学理事の石井菜穂子氏よりお話いただきました。企業経営を担うExecutiveネットワークメンバーにとっては、知識、知見を深め、 自身のビジネスにどう繋げていくかなど、今後の企業経営の在り方について考える機会となりました。

【アジェンダ】

  • 新メンバー紹介
  • グローバルネットワーク活動
  • メンバー拡大委員会
  • 後進育成活動
  • 内永理事長とのラウンドテーブル
  • ご講演「人新世におけるグローバル・コモンズ」
    東京大学理事、グローバル・コモンズ・センター ダイレクター石井菜穂子氏
  • ブレークアウトセッション
  • 各グループからの代表質問
  • オンライン懇親会

7月度定例会 第一部

第一部は、今年度からExecutiveネットワークに加わった新メンバーより自己紹介をいただきました。
グローバルネットワーク委員会からは、2020メンターアンケートサマリー、実施概要・今年度の方針、メンター(大使)候補、今後のスケジュール・進め方について説明がありました。
引き続きメンバー拡大委員会からは、「メンバーを拡大することによって、Executiveネットワークをより多様な価値観の集合体とすることで、メンバーの成長を加速する。またExecutiveネットワークから社会に向けた発信をより強力なものとする」として、アクションプランを共有しました。
8月と12月に開催予定の内永理事長とのラウンドテーブルについての紹介があり、本ラウンドテーブルでは、「変革を巻き起こす影響力を持つTOPリーダーが備えるべき要素を修得」するための意識改革を促すことを目的に、2回をシリーズ化して開催します。

(*肩書き等は講演当時のものです。)

ご講演「人新世におけるグローバル・コモンズ」
東京大学理事 グローバル・コモンズ・センター ダイレクター石井菜穂子氏

地球環境危機

地球システムの安定とレジリエンスが永久に失われる臨界点が迫っており、生態系の臨界点ドミノ倒しのスイッチが入りつつある。
地球は直近約1.2万年の「完新世」(気温変動±1度未満かつ温暖)という楽園期にあり、人類はここしか知らない。ところが、20世紀半ば、人間活動の加速が完新世を終わらせ、人新世が到来した。このまま放っておくと4~5℃の温暖化へ移行する。人間こそが地球環境の運命を決める力であり、地球環境はもう与件ではない。
世界のリーダー達は環境を最大のビジネス・リスクと認識している。

2030年を経て、2050年へ 社会・経済システム転換は不可避

環境負荷を生み続ける社会・経済システムの根本的な転換が必要である。システム転換を軌道に乗せる猶予は、あと10年のみ。エネルギー、食料、都市、生産・消費と、それを可能にする社会の仕組み・要素の転換が急がれる。エネルギー脱炭素は、総排出量ベースで63%に相当する国(128ヵ国)が、今世紀央までにNetゼロを宣言した。
エネルギーの次は、食料システムの転換が鍵となる。システム転換を引き起こす社会的要素として、リーダーシップが重要だ。 「意思決定する立場にいる人が、今までと異なる分野に出て行き、他者と手を組む許容力」 こそ、今、世界が最も求めているリーダーシップ力なのである。

地球環境危機を打開するため食料システムは何をすべきか

環境破壊の最大要因は食料の生産である。 人間は自然を食い荒らしながら食べ、3割の食料を捨てている。その一方で、飢餓で多くの人が苦しんでいる。人口が増える中、どうやって食を支えていくのか。食と地球の持続可能性のために総合的な取り組みが必須なのである。

なぜネットゼロを目指すのか

今の経済システムは有限のものを地球から搾り取っている。これでは自然との衝突が起こる。「地球が再生できるものを循環型に使うこと」を目指す必要がある。地球がもっていた自然回復のキャパシティを取り戻すために、エネルギー、都市の在り方、食の在り方など、地球と人の関係のリ・デザインが必要なのだ。

グローバル・コモンズ・スチュワードシップ

「皆で守って、次世代へ。プロテクトするのではなく、次世代に渡す」ことが重要だ。グローバル・コモンズを守る仕掛けは今まで成功せず、物理空間に加えて、サイバー空間の有効活用が鍵となる。
各主体の環境負荷と責任を比較し、対応を促すINDEXを開発しなければならない。日本は、国内だけを見ればB評価で悪くないが、越境効果(輸出入)で評価するとCCCと最悪の評価であり、日本の責任は大きい。

各グループからの代表質問

講演後にはExecutiveネットワークメンバーとの質疑応答。「10年で全部の舵を切るのは大変なことである。10年のスタンスをどう考えるべきか」「排気ガス、プラスチックは行動を変えられるが、食生活は長年の文化であり、どうやってマインドを変えていくのか」「2030年までの短期間で、デシジョンメイキングできる立場の意識をどう変えていくか」など、メンバーから多くの質問があがりました。
石井氏からは、「世界が単なる危機管理でもなく、CSRでもなく動き始めているのに、日本はいまもブランディング重視であり、もっと変わらなければならない」等、丁寧に質問に対する回答をいただきました。メンバーにとって、欧州と日本の差や、リーダーとしてのメンタリティといった観点を取り入れて今後の企業経営の在り方を考える機会となりました。

【石井菜穂子氏のPROFILE】

東京大学理事 グローバル・コモンズ・センター ダイレクター
1959年生まれ。
1981年東京大学経済学部卒業、大蔵省入省。
IMF政策審査局エコノミスト、ハーバード大学国際開発研究所研究員、世界銀行東アジア局(ベトナム担当)、財務省国際局開発機関課長、世界銀行スリランカ担当局長、財務省副財務官、地球環境ファシリティ(GEF)CEOを経て、現職。東京大学博士(国際協力学)。
著書に、『政策協調の経済学』(日本経済新聞社、1990年、サントリー学芸賞受賞)など