2020年3月6日(金)に「2020 J-Winダイバーシティ・アワード」 授賞発表を行い、2020年6月26日(金)「2019年度 NPO法人J-Win拡大会議」にて表彰式を執り行いました。
「J-Winダイバーシティ・アワード」には、企業におけるD&Iを推進し、女性リーダーを継続的に輩出している先進企業を表彰する「企業賞」と、企業においてD&I推進と定着に顕著な貢献をした個人を表彰する「個人賞」があります。
企業賞受賞の4社と個人賞受賞の2名、各授賞理由及び 名誉審査委員長、審査委員長の講評を以下にご紹介いたします。
*企業名・肩書などは受賞当時のものです。
【発表資料(ニュースリリースPDF)】
企業賞:
大賞 | 全日本空輸株式会社 |
準大賞 | 株式会社三菱UFJ銀行 |
ベーシックアチーブメント 大賞 | 株式会社ベルシステム24 ホールディングス |
ベーシックアチーブメント 準大賞 | 大日本印刷株式会社 |
個人賞:
株式会社三菱UFJ銀行 取締役頭取執行役員 三毛 兼承 様 | |
リーダー・アワード | 大日本印刷株式会社 執行役員 人財開発部・ダイバーシティ推進室担当 宮間 三奈子 様 |
■ 大賞 :全日本空輸株式会社 |
<授賞理由>
昨年のJ-Winダイバーシティ・アワード大賞受賞後も、経営トップの強力なリーダーシップのもと、全社でD&I推進活動を一層強化し展開している。グループ各部門の部室長をアンバサダーとし、D&I推進に対する男性のリーダーシップを高めている。課長職への女性登用に留まらず、意思決定層である上級管理職、役員への登用を積極的に実現している。加えて、グローバルへ向けた高い目標にも果敢に挑戦している。これらの活動により、D&I推進が企業価値を高める段階に進んでいる。
特に評価された施策・取組は、次の通り
●経営トップのコミットメントと強力な推進体制
-「2019 J-Winダイバーシティ・アワード」大賞受賞後も女性活躍推進を加速すべく、
アワードにおいて提示されるアセスメントの結果を踏まえ、
取組の改善とさらなる展開を実施
-経営トップ、管理職ネットワーキング、D&I推進体制の強化、グループ各社の人事総務部長
との連携強化など、全方位的に推進体制を構築し、グループの推進体制を強化
-世界の業界の動きを捉えたグローバルに向けた高い目標の提示
-役職別、職掌別の目標設定で、さらなる推進を目指す
●男性の意識改革
-女性管理職ネットワーキング(ANA-WINDS)の対象を男性管理職にも拡大
-部室長をアンバサダーに指名、推進を後押しする体制を構築し、男性も巻き込んだ活動
-男性社員の育児休暇取得の伸長
●女性のキャリア意識の向上と登用
-自律的なANAグループ「J-Win3層構造ネットワーク」がスタート
-多数のロールモデルの輩出により、キャリア意識の醸成が図れている
-短時間勤務者(育児)の積極的な管理職登用
-意思決定層(部長、役員)への女性の積極登用
・男性が担うことが多かったポジションに女性を登用
・グループ会社役員(社長を含む)への積極的な女性登用
■ 準大賞 :株式会社三菱UFJ銀行 |
<授賞理由>
激しく変化する金融業界において、D&Iを戦略的に推進して、イノベーティブな会社への変革を図っている。経営トップの強いリーダーシップのもと、多様性と自由度をキーワードとした人事制度や評価システムの抜本改革を行った。また、意識変化のモニタリングの仕組みなどにより、男女の意識改革や働き方改革を加速させている。トップの変革に対する強い意志は組織に浸透し、改革の機運が高まっており、今後の飛躍が期待される。
特に評価された施策・取組は、次の通り
●経営トップのコミットメントと強力な制度変革の推進
-経営トップが「世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループ」になるために多様性が
必要であることを明確に示し、D&Iで企業変革する意思を持ってトップダウンで推進
-人事評価制度の抜本的な改革を断行
・成長と挑戦を後押しする評価制度へ
(評価の比重を育成・D&Iへ、出向やチャレンジ休暇など視野拡大の機会を提供)
・昇格から登用へ(職能から職務重視へ、相対評価に対して絶対評価分を増やす)
・コース統合・勤務地区分選択によりコースに縛られない挑戦や多様な働き方が可能に
●女性キャリア形成支援
-上位経営職層(部長層)に対して役員座談会・役員メンタリング
・経営者の大局観に触れ、トップ層としての自覚を強化する機会の提供
-WILL(中堅マネジメント層を対象としたトレーニング)研修
・「戦略構築力」「論理的思考」「説得力向上」などの習得と経営視点に磨きをかける研修
-キャリアに挑戦できる多様な制度
・グループ公募、隔地異動公募制度、コース転換公募制度、リエントリー制度等
●管理職の意識改革
-新人事制度で「ダイバーシティ推進」を能力評定の評価項目として明記
-部下評価において「思い込み」「決めつけ」がないように評定者研修を対象者全員に実施
-ダイバーシティ・マネジメントに求められる3つの要素を共有
・全役職者が挑戦できる職場、部店長と部下の相互理解、風土醸成
-アンコンシャス・バイアスとケーススタディ研修による心理的安全性のあるチーム作り
-ITを活用した意識変化のモニタリング(monico)
■ ベーシックアチーブメント 大賞 :株式会社ベルシステム24ホールディングス |
<授賞理由>
経営理念の中枢にD&Iを位置づけ、トップの強力なリーダーシップにより、D&I推進を加速している。雇用の多様性とジェンダーの多様性を共に活かした人事制度改革を行った。正社員のほか契約社員も含め、管理職、役員への昇進を実現し、活躍の幅を確実に広げている。今後のより一層のD&I推進が期待できる。
特に評価された施策・取組は、次の通り
●経営トップのリーダーシップ
-経営理念の中枢にD&Iを位置付け、経営トップ自ら強力に推進
-「会社が変わった」と社員が実感しており、社長の想いや言葉の現場への浸透
●雇用の多様性やジェンダーの多様性を活かすための人事制度改革
-契約社員を6ヶ月で正社員に登用できる制度の導入
-契約社員を含む全社員に対し管理職や役員を目指す事が出来るキャリアパスを設定、明示
-時短勤務者でも管理職に登用される制度の導入
●多様な働き方の推進
-フレックスタイムやモバイルワーク制度など、多様な社員が柔軟に働ける環境の整備
●女性の育成と意識改革
-100名以上の管理職を対象に、人事部長が1on1面談を実施
-社長企画による管理職研修(イノベーション研修)の導入
-役員や先輩社員とのラウンドテーブル、キャリアワークショップなどの実施
■ ベーシックアチーブメント 準大賞 :大日本印刷株式会社 |
<授賞理由>
新しい業態への変革につながるビジネスモデルを'創発'する要として、D&Iを推進している。経営トップの強いリーダーシップのもと、受注型業務から提案型業務へ確実に転換を図っている。各部門にD&I推進委員会を設置し、「対話」をキーワードとしたD&Iの風土醸成を育み、全社に活動を展開している。今後さらなるD&I推進が期待される。
特に評価された施策・取組は、次の通り
●経営トップのコミットメントと強力な推進体制
-新しい価値を生み出し、社会課題を解決するために、ダイバーシティは経営課題である
とのメッセージを繰り返し全社員へ発信
-経営トップ自ら毎月D&I推進の進捗状況を把握し、
マネジメントレビューを実施する仕組みつくり
-各事業部門にダイバーシティ推進委員会を設立し、自律的な活動による推進体制を構築
・事業部門のトップがD&I推進委員長
●マネジメントの意識改革
-副事業部長・本部長クラスが、管理職一歩手前の女性社員へ半年間メンタリングを実施
-若手女性との対話による女性活躍推進の意識の醸成と行動誘導
-部下育成のためのキャリア形成支援研修で、キャリアを意識したマネジメントへの改革
●女性の育成と意識改革
-若手から中堅、管理職育成までの体系的な研修の確立
-重要プロジェクトへのアサインや従来女性が就いていない、向いていないとされてきた
職域へ配置、登用
・大規模新規プロジェクトへのアサイン
・営業課長への女性の登用
-女性活躍の効果による組織の活性化
・既存のやり方を疑問視することで働き方を変革
・生活者視点で新しいサービスを創出
■ 経営者アワード :株式会社三菱UFJ銀行 取締役頭取執行役員 三毛 兼承 様 |
<授賞理由>
業界を取り巻く経営環境の劇的な変化に対して、「世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループ」を実現するために、D&Iを戦略的に推進している。従来の業績中心の評価から育成に重きを置いた評価制度に変更、職能評定から職務評定への変更など抜本的な人事評価制度の改定を行った。大胆な制度改革は、トップの意思を組織に浸透させ、風土改革につながっている。この既存の枠にとらわれることなく断行する力強いリーダーシップに敬意を表する。
■ 2020 J-Winダイバーシティ・アワード」個人賞 リーダー・アワード :大日本印刷株式会社 執行役員 人財開発部・ダイバーシティ推進室担当 宮間 三奈子 様 |
<授賞理由>
「D&Iで新しいビジネスモデルを'創発'する」との経営トップの想いを実現するために、フロントランナーとして、D&I推進をけん引してきた。第三の創業という会社の変革期において、全社的なD&I推進体制を確立するとともに、D&Iに対する意識を組織に醸成し、推進の機運を高めた。また、自らもロールモデルとして後進の育成を行うとともに、さらに高みへとD&I推進の深耕に尽力している活動は、賞賛に値する。
■名誉審査委員長講評
樋口 恵子 氏 東京家政大学名誉教授
オリンピック自国開催という記念すべき年。年号で言えば、令和始まって最初のJ-Win。やはりこの年にふさわしい応募者、受賞者です。新しい分野からの参加が目立つ一方、すでに受賞歴のある企業が堂々の横綱相撲、モデルとなる取り組みを見せてくださったのも嬉しいことでした。 そもそも、近代オリンピックは、J-Winが長らく実践してきたダイバーシティが一つのキーワードだった、と言って過言ではありません。 古代オリンピックでは女性は選手になるどころか観客として入場も拒否されてきました。近代オリンピック第2回のパリ大会は1900年。この年女性が参加できる競技種目は2.2%だったのに、今や48.8%、男子と並んでオリンピックの華と言われる女子マラソンが正式種目になったのは、そう古いことでなく1984年ロサンゼルス以降です。 今回東京大会で目立つのは、一つの種目に男女がチームで参加する混合種目が増えたこと。バドミントンやセーリングは以前からありましたが、今回、新規に正式種目となったのが、競泳4×400メドレー、アーチェリー、陸上4×400リレー、柔道団体、卓球、トライアスロン・・・・、今後のオリンピックではもっと増えるかもしれません。 日本女性の社会的地位が153か国中121位に「また下がった」ことにがっくり来ていましたが、これは将来の伸びしろと考えればよい。D&Iこそ日本社会発展の重要な社会資源、と思えば新しい勇気も湧いてくるではありませんか。 |
■審査委員長講評
井上 詔三 氏 早稲田大学総合研究機構 招聘研究員(トランスナショナルHRM研究所)
「2020 J-Winダイバーシティ・アワード」の企業賞審査に参加して嬉しかったことが3点ある。まず第一に、D&Iの推進が企業の変革に不可欠であるという認識が、ファイナリストの経営トップから現場レベルまで着実に浸透してきているという発見である。経営戦略としてのD&Iが、会員各社で定着しつつあることを実感できることほど嬉しいことはない。 第二に、ベーシック部門のファイナリストに多彩な企業を含んでいるという点である。とりわけ、男性中心であった企業で、働き手の多様性を増すことにより事業の革新を成功させているという点。 第三に、前年大賞を受賞した企業が今年度のアワードに続けて応募し、より高度なレベルのD&Iに到達したかどうかJ-Winの審査を求めたこと。大賞受賞が、D&I推進のゴールというより、企業レベルでイノベーションを進めるプロセスであることを、経営トップとダイバーシティ推進室がはっきりと認識していることを示している。 より多くの会員企業が「2021アワード」に応募されることを期待している。 |
なお、企業賞における第一次審査の結果、D&I推進の実績と取組状況が進んでいることが伺え、
先行企業として模範となる企業(ファイナリスト)は、以下の通りです。 (企業名 50音順)
【アドバンス部門】 ・全日本空輸株式会社 ・株式会社千葉銀行 ・株式会社三菱UFJ銀行 ・株式会社りそなホールディングス |
【ベーシック部門】 ・大日本印刷株式会社 ・東急株式会社/東急電鉄株式会社 ※旧東京急行電鉄株式会社 ・株式会社ベルシステム24ホールディングス ・株式会社リコー |
【「2020 J-Winダイバーシティ・アワード」詳細はこちら】