このインタビューは2016年1月におこなわれました。肩書等は実施当時のものです。
イオン株式会社 取締役 兼 代表執行役社長 グループCEO 岡田 元也 氏
内永 今、岡田社長が女性活躍推進で課題と考えていることは何でしょうか。
岡田 取り組みを、いかに早く、実質を伴ったものにしていくかということですね。働く環境や働き方をみても、まだまだ女性にとってかなりのハンディがあります。そのハンディをいかに無くすかを会社は責任を持って実行しなければならない。2年前に、ある子会社の役員の女性が産休に入ることになって、彼女に「実験台」になってもらったんです。その人が職場に復帰するまでの間、そのポジションはそのまま空けておき、彼女の上司に彼女の業務をカバーしてもらいました。
内永 それは、大変ですね。
岡田 そうですね、ただ上司がそういう姿勢にならない限り、本当の女性の活躍推進は実現しないと思うのです。おかげで、彼女は復帰したその日から支障なく再び仕事に邁進することができました。これは、全ての会社で絶対導入してほしいとグループ各社に言っています。 また、スーパーマーケット事業はお客さまの女性比率が高いのに、従業員の女性幹部の割合は一番低い業態です。逆にアパレルは、女性の活躍が非常に早く進んでいます。イオンの多様な業種・業態を活かした「成功例」の横展開が大切になってくると思っています。
内永 この前、グループ企業の方の発表を聞いたのですが、その会社では店長業務の大変なところを見ているので、「絶対に店長になりたくない」と言う人が多いらしい。そこで女性にも店長になってもらえるよう、まず店長の仕事を全部分析して仕事マニュアルみたいなものをつくった。そして、店長の補佐役をたくさん置き、その全員が店長の業務をカバーできるようにした。加えて、店舗でやっていた仕事での一部を本部に移管して本社一括でやってもらうようにした。そうしたら、店長の働き方も変わって、店長をサポートした人は店長業務ができるようになり、店長に昇格したそうです。こうしたボトムアップでの取り組みを伺って、グループ各社が自律的に取り組むイオンのダイバーシティ推進のやり方は本当に素晴らしいと思いました。
岡田 女性の活躍推進というのは結局、マネジメントの形を変えていくということ。旧態依然のマネジメントを変えるチャンスになる。男性だけの社会では「これはこれで当然」と従来通りのシステムややり方などに対する疑問がない。この当たり前だと思っていたことを見直すことが重要であり、見直しを進めるときに、女性から出てくる「これって何?」という疑問がカギになる。男性だけの職場だと出てこないそういう気づきこそ、マネジメントを変えるきっかけになります。
内永 変えていく抵抗感は女性には少ないですよね。男性と比べて従来の成功体験などの拠り所みたいなものをあまり持たないので、新しいことに挑戦するには向いているかもしれません。
岡田 そうなんです。最近は、新規事業などはリーダーに女性をアサインすることが多いですね。そのほうが成功しやすいと思っています。
内永 最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
岡田 会社は、女性が活躍する機会を用意し、約束したことはきちんと実行する。女性従業員には、それを信じてもらって、仕組みを徹底的に活用し、自分の価値観にしたがって、「自分なりの絵」を描いていってほしい。自分のアイデンティティを追求した結果、人とは違ってもいい。そういった違った価値観を持つ人がたくさんいることが会社にとって全てプラスになると思っています。
内永 大切なのは、「自分はどうしたいのか」という意見をしっかり持ち、その自分の意見をきちんと言うことですね。それは、今の日本人全体にとっても身につけるべき重要なことだと思います。
岡田 J-Winも来年10周年を迎えるそうですね。10年をかけて、女性が活躍する下地をしっかりつくってこられた。J-Winという場を通じて、これからも多くの女性が活躍していくことを願っています。
内永 本日は本当にありがとうございました。