2021年3月5日(金)に「2021 J-Winダイバーシティ・アワード」授賞発表を行い、同日にオンライン開催した「2020年度 NPO法人J-Win拡大会議」にて表彰式を執り行いました。
「J-Winダイバーシティ・アワード」には、企業におけるD&Iを推進し、女性リーダーを継続的に輩出している先進企業を表彰する「企業賞」と、企業においてD&I推進と定着に顕著な貢献をした個人を表彰する「個人賞」があります。
企業賞受賞の4社と個人賞受賞の2名、各授賞理由及び 名誉審査委員長、審査委員長の講評を以下にご紹介いたします。
*企業名・肩書などは受賞当時のものです。
【発表資料(ニュースリリースPDF)
企業賞:
大賞 | 株式会社千葉銀行 |
準大賞 | 日本航空株式会社 |
ベーシックアチーブメント 大賞 | 東急株式会社 |
ベーシックアチーブメント 準大賞 | 株式会社リコー |
個人賞:
日本航空株式会社 代表取締役社長執行役員 赤坂 祐二 様 | |
リーダー・アワード | 株式会社ベルシステム24ホールディングス 取締役専務執行役員 早田 憲之 様 |
<授賞理由>
激変する金融業界で勝ち進めるための経営戦略の中核にダイバーシティ推進を位置づけ、経営トップが社内外にコミットし、強いリーダーシップのもと、全行一体となって推進を続けている。10年以上にわたり着実に施策を実行し、組織の隅々までD&Iを浸透させ目標を達成している。女性登用をさらに加速するために、階層ごとの育成や職域拡大など新たな取組に挑戦し続けている。加えて、業界や地域に対しても影響力を発揮し、D&I推進活動をリードしている。自行の活動に留まらず、社会のD&Iを推進する取組にさらなる発展が期待される。
特に評価された施策・取組は、次の通り
●経営トップのコミットメントと推進体制
-ダイバーシティ推進を経営戦略の中核として明確に位置付け、経営トップの強力な
リーダーシップのもと、継続して取組を進化
-副頭取を委員長とするダイバーシティ推進委員会を中心に全行一体となりD&Iを推進
する体制を構築
-現場各層に向けた取組によりD&Iが浸透し、行動変革、組織風土の変化が進行
●女性のキャリア意識向上と登用促進
-サクセッションプラン策定により管理職候補者の育成を支援
-役員、部長によるメンタリングプログラムを導入し次世代幹部候補者を個別育成
-女性のさらなる職域拡大に向けKPIを設定し取組を強化
-事務人員の営業化特別支援プログラム「キャリア・ステップアップコース」を新設し、女性の
キャリアチェンジを促進
●男性の意識改革
-所属長の評価項目に「ダイバーシティ推進度」を設定
-男性の育児休業取得を促進し、取得率100%目標を達成
●地方銀行業界や地域を巻き込んだD&I推進活動
-地域経済を支える「地方銀行」として業界・地域へ女性活躍推進の輪を広げる活動において、
継続してリーダーシップを発揮
・「輝く女性の活躍を加速する地銀頭取の会」
「輝く女性の活躍を加速するちばのリーダーの会」 他
<授賞理由>
ポストコロナに向けてD&Iを企業変革の原動力と位置づけ、経営トップの強い意志のもと、危機感と問題意識を全社で共有し、その活動を力強く推進している。役員・管理職の女性比率は着実に増加しており、グループ全体で優秀な人財を抜擢し、グループ会社の社長や役員に登用するなど積極的な人事を行っている。また、今後発表を予定している次期中期経営計画期間中に、高い女性管理職輩出目標を掲げ、検証を行いながら登用を加速させることが検討されており、今後のさらなる進展が期待される。
特に評価された施策・取組は、次の通り
●経営トップのコミットメントと育成施策の強化
-経営トップのリーダーシップによるトップダウンと、グループ横断ネットワークプロジェクト
によるボトムアップでD&Iを推進
-現在を女性登用促進期と定め、異動配置と育成施策を強化
-女性管理職の輩出を重要な課題ととらえ、次期中期計画における高い目標設定と
取組強化に着手
●女性社員の登用・育成・採用
-グループ全体から優秀な女性を抜擢し、グループ会社の社長・役員に登用
-女性管理職による女性管理職候補者へのメンタリングを新設
-選抜研修・外部派遣を通じて視野や知見、人脈を培わせ女性リーダーを育成
-「ワークアゲインプログラム」によるキャリアブランクのある女性人材の採用
●男性の意識改革
-J-Win男性ネットワーク参加メンバーによる経営陣へのプレゼンテーション、提言の実施
・無意識の行動への気づき、男性行動原理の深掘り、行動を変えるポイント(処方箋)の提言
●客室乗務員の活躍フィールドを拡大
-客室乗務員の強みであるヒューマンサービスや経験・知識を生かした地域の発展への貢献
・「ふるさとアンバサダー」約20名を地域に配置し、地域の事業開拓を支援
・「ふるさと応援隊」約1000名を任命、乗務しながら地域貢献と魅力を発掘
<授賞理由>
「サステナブル経営」(サステナブルな街づくり・企業づくり・人づくり)を支える戦略としてダイバーシティマネジメントを位置づけ、推進している。組織横断のダイバーシティ推進ワーキンググループを中核とする推進体制を構築し、各種施策の実行度を高めている。また、部長職の女性を積極的に連結子会社に出向させるなど、社長や幹部として経営経験を積ませることで、将来の経営幹部登用に向けた積極的な育成も図っている。今後、女性活躍推進のさらなる加速が期待できる。
特に評価された施策・取組は、次の通り
●経営トップのコミットメント
-多様性を生かす組織づくりとしてのダイバーシティマネジメントを重要戦略とし、お客様の
期待に応えるイノベーションを実現し、サステナブル経営を推進するという方針が明確
-経営トップが機会をとらえてメッセージを発信し、経営と管理職層が一体となって
ダイバーシティを推進
●柔軟な働き方を実現する制度の整備
-働く時間・場所を自身の職務・環境に合わせて従業員が主体的に選択できる
「スマートチョイス」を拡充
●女性の登用・育成と意識改革
-上級管理職を連結子会社幹部に任命し経営経験を積ませる積極的人事配置を実施
-経営人材の育成・ダイバーシティマネジメント・教え教えられる風土醸成を目的とした
メンター制度に全役員がメンターとして参画
-東急グループ女性管理職フォーラムを毎年実施、経営トップ・女性社外取締役が出席し、
直接メッセージを発信
●男性管理職・男性社員の意識改革
-管理職マネジメントセミナーを毎年実施
-男性の育児休業取得率100%を目標として約8割超を実現
<授賞理由>
「デジタルサービスの会社に転換するためにD&Iは不可欠」と、D&I推進を企業変革の柱と明確に位置づけている。経営トップが自身の言葉で説得力のあるメッセージを社員に向けて発信し、全社に浸透しつつある。女性技術者の新卒採用を促進し、すべての階層でも女性比率が着実に増加している。女性部長・課長を重要ポジションに抜擢登用するなど新たな人事施策を実施しており、今後のD&I推進、女性活躍推進のさらなる加速が期待できる。
特に評価された施策・取組は、次の通り
●経営トップのコミットメントと企業力の向上
-OAメーカーからデジタルサービスカンパニーへの転換に伴い、経営トップがD&Iの重要性を
認識し、自身の言葉で従業員にメッセージを発信
-ダイバーシティとワークライフ・マネジメントを両輪に、一人一人のやりがいの実現と多様な
人材活用による
イノベーションで企業力の向上を図っている
-役員目標によるダイバーシティKPIの設定と評価
●女性の育成と登用の促進
-昇格審査におけるダイバーシティ受審機会の拡大
-マネジャー登用にあたり、ダイバーシティを意識した抜擢を促進
-女性役員比率目標の設定と候補人材のリスト化
●男性の意識改革
-アンコンシャスバイアスセミナーの実施
-男性の育児休業取得促進、取得率100%達成
<授賞理由>
D&Iの重要性を深く理解し、経営トップとしてのメッセージを発信することにより、JALグループ全体のD&Iを強力に推進している。課題分析と施策実現性の検証を行い、今後発表を予定している次期中期経営計画期間中に、より一層の女性管理職輩出に向けた取組強化に着手するとの意思を示している。さらにポストコロナに向けてJALグループの姿を大きく変えなければならないという課題認識のもと、企業変革の原動力としてD&Iに取り組んでいる。このD&I推進への強い意志と実行力に敬意を表する。
<授賞理由>
最重要課題に定める「人と働き方の多様性」の実現のため、強いリーダーシップと熱意をもって全社のダイバーシティを推進している。契約社員のキャリア形成を支援するために大幅な人事制度改革を実施し、D&I推進に大きく貢献した。また、働き方改革を早期から積極的に進めているほか、組織横断型の「D&Iプロジェクト」を発足させ、社員からの提案に耳を傾け、実行に移している。このダイバーシティ推進への熱意と実行力に敬意を表する。
■名誉審査委員長講評
樋口 恵子 氏 東京家政大学 名誉教授 女性未来研究所 名誉所長
コロナ禍のもと、今年は開催されるのかどうか、J-Winダイバーシティ・アワードについて、私は内心危ぶんでおりました。それがこの通り平常心をもって盛大に開催され、新しいお顔ぶれを含めて素晴らしい受賞者の皆さまが選ばれました。
日本女性の政治的・経済的活躍が国際的に見て低いことは以前から指摘されています。企業内のD&Iこそ日本経済の伸びしろです。
日本の未来は、地域全体のバランスのとれた発展が一つのきめ手です。今回アドバンス部門にもベーシック部門にも、地域との連携、地域の活性化をリードする企業が選ばれたことを嬉しく思いました。生き生きした企業の文化が、長い歴史と伝統に閉ざされた地域を解き放ち、若い女性たちが流出せず、男女が共に参画して地域を創生する、その変革のエネルギーが今回の受賞企業などによって担われると信じます。J-Winダイバーシティ・アワードの一層のご発展をお祈りします。
■審査委員長講評
井上 詔三 氏 早稲田大学総合研究機構 招聘研究員 (トランスナショナルHRM研究所)
2020年世界は新型コロナの嵐に襲われた。骨身を削る対応を迫られている日本企業も少なくない。D&I推進担当部署が悪影響を受けたJ-Win会員企業もある。それでも、「2021 J-Winダイバーシティ・アワード」の応募企業数は昨年と同数となり、胸をなでおろした。さらに、応募企業によってはアフターコロナの事業環境を見据えてD&Iを戦略的に推進しているとのこと、大いに意を強くした。
ベーシック部門のファイナリストの事業分野は昨年に引き続き多彩であり、喜ばしい。中でも受賞企業の両社はD&Iをビジネス・イノベーションの梃として事業分野を変革しつつある。経営戦略としてのD&IというJ-Winの主張が行き渡ってきており、明るい未来が見える。
アドバンス部門の企業はさすがにD&Iの仕組みをよく整えており、推進施策も数多く実践している。推進担当者のたゆまぬ努力が窺える。しかし、ダイバーシティ進捗状況のステージを登る速度はゆっくりしているように見える。D&I推進のPDCAのPは革新的なPでなければならないし、Aは進捗を加速させない要因を深掘りする作業を含む。ステージを登るにつれ革新的な要素が増すPDCAを心掛けてもらいたい。
今年のアワード審査はリモートでのヒアリングとなった。おかげで、遠隔地からの参加者を得ることができた。D&I推進活動の本社と支社の温度差を感じるよい機会ともなり、思いがけない収穫があった。しかし「2022アワード審査」では"Zoom fatigue"にならずに済ませたい。一層多くの会員企業での戦略的D&Iの成果に接することを期待している。
なお、企業賞における第一次審査の結果、D&I推進の実績と取組状況が進んでいることが伺え、
先行企業として模範となる企業(ファイナリスト)は、以下の通りです。 (企業名 50音順)
【アドバンス部門】 ・EY Japan ・損害保険ジャパン株式会社 ・株式会社千葉銀行 ・日本航空株式会社 |
【ベーシック部門】 ・アズビル株式会社 ・東急株式会社 ・日本生命保険相互会社 ・三井住友信託銀行株式会社 ・株式会社リコー |
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