NPO法人J-Winの女性メンバーたちによる分科会の1つ、「女性の意識分科会」による「ライフキャリアセミナー2」が、10月28日14時45分~18時、 日本生命丸の内ビル内で開催された。会場はJ-Win会員企業の女性たち約200名で埋め尽くされ、華やかな熱気に包まれた。
会場を提供いただいた日本生命保険相互会社小林研一取締役常務執行役員のごあいさつに始まり、第一部は、東京日産自動車販売株式会社代表取締役社長、林文子さんの基調講演、第2部は、J-Win女性メンバーや先輩女性によるパネルディスカッションが開かれた。
女性が働き続ける、キャリアアップするための「元気と勇気」を与え、涙あり、笑いありで会場を魅了した林文子さんの基調講演のほんの1部をご紹介しよう。
「私は、女性は管理職に向いている、とくにミドルマネジメントは向いている、もちろんトップマネジメントもと考えていますので、本日は次代を担う女性たちに、なぜ女性が向いているのかを、私の経験を通してお伝えしましょう」と、林さんのお話は始った。
まずは、東レに就職。しかし、勤労課の課長に「先輩女性たちはだいたい5年で辞めるから……」と言われて、将来に失望。次に松下電器産業の秘書に転職できたが、ここで、技術課の林氏とめぐり合い、1カ月で電撃婚約。秘書という仕事柄、社内結婚するのなら職場異動すると言われ、結局退社。そんなときにホンダの車を買ったのがきっかけで、車の営業を目指すことになる。その営業マンが気が利かない人で、これなら私でもできるのではと思ったと……。
とはいえ、女性の営業などいない時代。必死で売り込みをして、試験採用とはなったものの、まったくの男性社会で、とびこみセールスから始める。1日100件は廻る、と自分でノルマを決め、ともかく実行。そうするうちにいろいろな方と顔見知りになり、カゼ気味の奥さまにはお買いものをして差し上げるなど、「御用聞きセールス」といわれるくらい、サービスに徹した。すると、ある奥様から主人の部下で車を買う人がいるからと紹介をされ、それが第1号となった。
1日100件訪問を続け、手厚いおもてなしと、相手の心に訴える営業に力を入れた。どうすればお客様に喜ばれるかを考え続け行動し、それが実績となっていった。
「心に響く言葉、訴える言葉、これは女性の得意とするところですよね。私は、お客さまに対して、また部下に対して、言葉をとても大切にしています」と林さんは言い切る。
次のBMWも自分で売り込んで転職。ここでもたちまちトップセールスになり、新宿支店長に抜擢される。しかし、新宿店は営業成績は低迷、セールスは全く元気がない。林さんは部下たちを褒め、励まし、元気を与え、長所を伸ばす。「ホウレンソウ」は部下に求めず、上司から実行。人間としての信頼関係ができ、会社へ来るのが楽しいと思えれば業績は上がる。自分が部下のときにこうしてほしいと思っていたことを実行しただけ、と。こうして新宿店は半年で最優秀支店となる。
5年後に中央支店に転勤。今度は3カ月でトップにできた。「この支店長の下でトップになりたい」という意志を持ったことが成功に導いた。
そうするうち、ファーレン東京(現フォルクスワーゲン東京)の代表取締役社長に、という話が飛び込んできた。「そのとき、私に言ってくださったイギリス人の社長の言葉は忘れられません」と林さんは今でもその言葉を大切にしている。「1つ目は、あなたには一緒に働く社員を幸せにしようという気持ちがあります。ぜひそれをこの会社で実行してください。2つ目はあなたが社長になれば、日本の女性を勇気づけることができます。日本は女性がトップマネジメントをするチャンスが少ない。3つ目は、私は上司としてあなたをせいいっぱいサポートすることを誓います」。
4年後には売上を倍増。再びBMWの社長に戻ることになった。
その後ダイエーの会長に抜擢され、店舗を回りたくさんのパートさんたちと会い、話を聞き、現場の声を経営に吸い上げた。
今年、また車の販売という古巣へ戻るとともに、フォーチューン誌の「世界最強の女性経営者50」にも選ばれた。「日産のゴーンさんからお祝いのメッセージをいただきました。これはここにいる全ての女性たちに捧げる言葉でもあると思うので、最後にそれを読み上げましょう」と、女性たちへの励ましのメッセージで締めくくった。
道なき道を果敢に切り開き、辛い思いもたくさん味わいながら、常に明るく周りの人たちを励まし続けた結果が、このような成功を生んできたのだと、お話をうかがい実感した。大きな笑いの中に、たくさんの示唆をいただいた貴重な講演であった。