「J-Win Next Stage ネットワーク 第5回定例会」を、2020年12月15日(火)に開催し、167名のメンバーがオンライン参加しました。

■『両利きの経営』

経営改革や事業強化をサポートする立場から見た日本企業の現状と課題、コロナ禍といった経営環境の大きな変化を踏まえた変革の必要性、その緊急度について、株式会社経営共創基盤 共同経営者 マネージングディレクター　木村尚敬氏より詳しくお話いただきました。

以下に講演の様子をダイジェストでご紹介します。
(＊肩書き等は講演当時のものです。)


●改善から改革へ

コロナ禍で経営環境が大きく変わる中、現場の変化を迅速に察知し、経営層に情報を上げる必要があることから、最前線のリーダーの動き方が非常に重要となる。
この20年間で日本の主要メーカーの「稼ぐ力」は低下した。これは国際競争に負けたことが原因かと言うと、それだけとも言えない。日本企業には過去の成功体験に囚われた無数の制約が存在するため、業務の進め方があまり変わらないことと、間接部門を中心に固定費が高いことに課題がある。そのため、損益分岐点ぎりぎりの経営であるため、コロナ禍のように売上が急激に減少するような局面では、影響を受けやすい。
ボトムアップ型の意思決定構造は業務対応が丁寧だが、スピード感が遅い。阿吽の呼吸の文化では、同質化傾向が顕著であり、変化を起こすことができない。
今、日本企業に求められているのは改善ではなく改革であり、改革は「なぜ、何を実行するか」を自分で考える必要がある。厚い部門の壁の間にある相互不可侵条約などの不文律に負けずに、リーダーは、リーダーとして考えて「発信」をすべきである。

●ベンチャー育成
ゼロリセットの発想で変革を成し遂げる力のあるベンチャー企業の不確実性を、ただのリスクととるかチャンスととるかで、イノベーションにつながるかどうかが変わる。
既存のPDCAの枠組みをベンチャーに持ち込むと長所を殺すので、既存の仕組みの治外法権をいかにうまく設計するかが鍵となる。
リスクをとって判断する考えと仕組み尊重をしつつ、Win-Winのパートナーシップ構築に尽力する必要がある。

●組織を作る
適切なタイミングでトップが舵を切れるかは、会社の存亡につながる最重要事項である。
部下にも上司の目線で考えられるように「任せる、引き出す」を行うべきである。これからは下から多くの情報が上がってくる組織風土を作らなければならない。失敗を恐れ、リスクを取らない組織になると変革は叶わない。多様性を実現し、様々な意見が上がるようにする仕組みも必要である。
不確実な中で判断するためには、自分の弱みを知り、これに影響をされない対処方法を検討すべきである。
改革を実行する過程では恨まれることもあり、時間軸の中で責任を負う覚悟のある人物、組織のしがらみにとらわれずにあくまで冷徹に経済合理的な判断ができる人物がリーダーになるべきである。責任は重く、様々なスキルが必要となる大役であるが、同時に多くの人に影響を与えうるポジションであるので、前向きに頑張ってほしい。

―日本企業がこの先成長していくために何が必要か、現場のリーダーには何が求められるか、野球やサッカーなどのケーススタディを織り交ぜて、とてもわかりやすくご説明いただけたと思います。

―激しい環境変化の中で経営していくため、深化と探索の両利きの経営が必要であること。また、リーダーとしての有り様を組織・個人という視点で具体的に伺えましたので、これからの自分の行動を変えるきっかけになりました。

―とても分かりやすい講演内容でした。弊社もスタートアップ投資をしており、その意義について悶々としていましたが、考えが少し変わりました。事業とは全く関係ないところに投資して、もしかしたら、リターンがあると考えることに興味を覚えました。組織のマネジメントについても、すぐに実践できそうなポイントがいくつかありました。

―ポストコロナ時代の両利きの経営がテーマという大変難しいテーマでしたが、リーダーとしての得意領域を見極める事の重要性や、自身の見極める考え方、冷静に捉える事のあるべき姿を教えていただきました。

―多くのメンバーの将来を担って判断することの重みと、人を幸せにする目的を改めて自覚し、日々研鑽・実践したいと感じました。トップを目指す覚悟を持った者への木村様からの励ましの　　　メッセージにとても勇気づけられました。