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「経済界が考える日本の未来~その本質を考える~」
アクセンチュア株式会社 相談役 程 近智 氏
日本では多くの企業が集まって活動する経済団体が大きな役割を担っています。大企業を中心とした「日本経済団体連合会(経団連)」、中堅中小企業を中心に都道府県ごとに組織を持つ「日本商工会議所」、企業の経営者や役員などで形成される「経済同友会」などが、主要となる"中央経済3団体"です。さらに、関西の企業が集まる「関西経済連合会」や、IT企業を始めとするベンチャー企業を中心に形成される「新経済連盟」などもあります。こうした経済団体の最も重要な役割は、経済界と政治のパイプ役です。経済は、国の考えと企業側からの要望をすり合わせながら、一体になって推進していく必要があります。規制に守られている企業と、規制緩和によりビジネスを拡大したい企業のそれぞれの思惑がある中で、効率化やコストダウン、国民の利便性をいかに高めるかという観点で調整を行っています。鉄鋼、食品、機械など、分野ごとに業界団体があり、それらを横串でまとめることも経済団体の役割です。また、大学生の就職協定などのガイドライン順守や、労使関係などに大きな影響力を持っています。一方で、昭和の時代からさまざまな役割を担ってきた経済団体には、時代の変化とともに課題も出てきています。例えば、政治に物申すという点については、国と企業のベクトルが一致しないケースも。一例を挙げると、これからの時代に注目されている自動運転について、国は日本の基幹産業である自動車分野ということもあり、国内で推進したいという思いがあります。これに対して企業側は、開発や実験において日本は規制が厳しく、自由度のある海外での開発も選択肢として持っています。日本の政治が選挙優先の短期志向になりやすく、持続的成長を目指す企業の考え方とは時には不一致になることも大きな課題です。
国家は、「経済の豊かさ」「イノベーション」「社会の持続可能性の確保」という3つの軸をバランスよく最適化していくことが大切だと考えています。これは企業も同様です。利益の追求とともに、さまざまなイノベーションを起こすことで、社会に貢献していくということが大切です。日本には、"売り手よし、買い手よし、世間よし"という「三方よし」の考え方があるため、こうしたバランスを取るのは他国に比べて得意なのではないかと思っています。そして、国と企業と国民が、それぞれ三方よしの「Win-Win-Win」の関係を目指していくことが大切なのではないでしょうか。また、こうした国と経済界の議論の場には多様性が必要です。例えば、経団連は、製造業を中心とした大企業が中心で、スタートアップやベンチャー企業の構成比をもっと高める必要があると思っています。経済同友会でも女性の数を増やそうとしています。~講演の感想~
【程 近智 氏のPROFILE】
1960年生まれ、神奈川県出身。 スタンフォード大学工学部卒業後、アクセンチュア株式会社に入社。 1991年、コロンビア大学経営大学院でMBAを取得。 復職後は戦略グループ統括パートナー、通信・ハイテク本部統括本部長などを経て、 2006年に代表取締役社長に就任。 2015年に取締役会長を経験したのち、 2017年に取締役 相談役に就任。早稲田大学客員教授、東京大学経営協議会委員、経済同友会副代表幹事、複数社の社外取締役なども務める。