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「今後の日本のエネルギーの展望
~再生可能エネルギーの主力電源化にむけて~」
経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部
新エネルギー課 再生可能エネルギー推進室 室長補佐 山王 静香 氏
日本のエネルギーは将来どうあるべきか、政策の骨格として示されているのが「エネルギー基本計画」です。2002年にエネルギー基本法が制定され、翌年の2003年に第一次エネルギー基本計画がスタートし、第二次、第三次、第四次と更新後、2018年に第五次エネルギー基本計画が発表されました。エネルギー政策は、安全性(safety)を前提とした上で、エネルギーの安全供給(Energy Security)、経済効率性の向上(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)という「3E+S」を満たすことが求められます。この「3E+S」を実現させるために必要な施策を講じた際の、将来の電源構成の見通しを「エネルギーミックス」と呼びます。現在の具体的なエネルギーミックスでは、2030年の時点で火力(LNG・石油・石炭)が56%まで引き下げられ、再生可能エネルギーを22~24%に引き上げられる見通しとなっています。第五次エネルギー基本計画では、再生可能エネルギーが「主力電源」になるために推進していくべき電源であることが、初めて明記されました。日本のエネルギー政策は、2011年に発生した東日本大震災に伴う原子力発電所の事故をきっかけに大きな転換点を迎えたと言えます。
固定価格買取制度がスタートしてから、再生可能エネルギーの導入は急速に進んでいますが、発電コストは国際水準と比較して高い状況にあります。今後、再生可能エネルギーを「主力電源」とするには、国際水準を目指して、他の電源と比較して競争力のある水準までコストを低減させることが必要です。具体策としては、FITの価格入札制の拡大による効率化や、ゲームチェンジャーと成り得る革新的な技術開発の推進、欧州の事例を参考にした自立化のためのFIT制度の抜本的な見直しなどが検討されています。また2019年度以降には、住宅用太陽光のFIT買取期間が順次終了します。これに対して、自家消費や相対・自由契約による売電などの様々なオプションを設ける対応を準備しています。このほか、系統制約に対する対策や、太陽光や風力などの自然変動電源の導入拡大による調整力の確保も、取り組むべき大きな課題です。また、再生可能エネルギーは自然環境の中にあることが多いエネルギーなので、災害の影響を受けやすいという側面もありますので、メンテナンスや規制の強化も実施しながら、安定的な運転が可能な電源にしていきたいと考えています。コストや系統の問題、事業者の体制、災害の対策など、さまざまな課題に丁寧に対応しながら、最終的には日本は再生可能エネルギーが支えている国だというイメージを国際社会に持っていただけることを目指しています。再生可能エネルギーは、発電事業のみならず、あらゆる産業に関連する分野です。今後、産業競争力が高まり、技術革新が進むことで、日本の企業にも多くのビジネスチャンスが生まれることを期待しています。~講演の感想~
【山王 静香 氏のPROFILE】
2010年、慶應義塾大学法学部政治学科を卒業し、環境省に入省。地球温暖化対策課に配属となり、2012年まで同業務に従事。2012年、前年に発生した東日本大震災を受けて立ち上がった原子力規制庁に出向。2015年からアメリカ・ボストンのタフツ大学フレッチャースクールに留学。2017年帰国後より経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギー課 再生可能エネルギー推進室 室長補佐。