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「たまに役立つ宗教的発想」
龍谷大学 世界仏教文化研究センター長 国際学部国際文化学科教授
久松 英二 氏
「宗教的発想」と言うのは、平たく言えば"常識を超えた発想"です。普段考えていることとは違った角度から現実を見るということです。もし宗教に意味のある役割があるとしたら、常識を超えた次元で現実を眺め、常識ゆえにそれ以上先に進まないという場合に発想の転換を迫って新しい道を示すということではないかと考えています。「敵を愛しなさい」「右のほほを打たれたら左の頬を差し出しなさい」というイエス・キリストの有名な言葉があります。本来憎むべき敵を愛せというのは常識を逸脱した考えとも受け取れます。これは、殴られたらすぐに相手に飛び掛かる前に、「どうしてこの人は自分を殴ったのか」と考える冷静さを持てという教えです。敵に対して大人になるという発想を持つことが大切だとイエスは伝えています。こうした、一見非常識とも思える言葉にも、宗教的発想の深い意味が込められているのです。~講演の感想~
【久松 英二 氏のPROFILE】
南山大学大学院文学研究科神学専攻博士前期課程修了(神学修士)。ウィーン大学大学院神学専攻博士課程修了(Dr. Theol.: 神学博士)。南山大学、神戸海星女子学院大学で教鞭をとった後、2010 年に龍谷大学国際文化学部(現国際学部)教授に就任。2014 年から2018年まで学部長(理事)を務め、2018年4月に現職である世界仏教文化研究センター長に就任。専門は東方教会神秘主義思想、比較宗教思想。著書に、Gregorios Sinaites als Lehrer des Gebetes(Münsteraner Theologische Abhandlungen 34), Oros-Verlag、『祈りの心身技法―14 世紀ビザンツのアトス静寂主義』(京都大学学術出版会・キリスト教史学会学術奨励賞)、『ギリシア正教東方の智』(講談社選書メチエ)、ルードルフ・オットー『聖なるもの』(岩波文庫)、『多文化時代の宗教論入門』(ミネルヴァ書房)など。