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2018年度Next Stageネットワーク活動テーマ Agility & Action ~迅速な判断と機敏な行動を繰り返しVUCA時代をリードする~ |
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デジタル・フィジカル世界での戦い方
グローバル経営層スタディからの示唆と展望
日本アイ・ビー・エム株式会社 執行役員
グローバルビジネスサービス事業戦略コンサルティング&デザイン統括
池田 和明氏
今、インターネットにつながっている機械は100億台を超えるとされています。現在の世界の人口が76億人なので、人口を上回る機械がすでにインターネットにつながっているということになります。物理空間で起きているさまざまな事柄が機械によってデジタルデータに変換され、フィジカルな世界のすぐ裏側にデジタルの世界が重なっている。それがデジタル・フィジカルワールドです。この世界で、企業の主要な戦いの場は4つあります。まずは「顧客にとっての価値」という戦場です。たとえばスマートフォンでも、ハードウェアのスペックだけで買う人は少ないでしょう。購入の決め手は、そのスマートフォンを使ったらどれだけ楽しい体験ができるかという点ではないでしょうか。それが顧客にとっての価値です。2つ目の戦場である「データ資源」は、顧客価値を高めることに直結します。データは新しい世界の天然資源と言われており、いまその権益をめぐる戦いが起きています。3つ目は、デジタル空間と物理空間をつなぐ場所に必ず存在する「ハードウェア」を誰が押さえるかという戦いです。そして、4つ目の戦場が「プラットフォーム」です。プラットフォームは、多くのユーザーとユーザーに商品を提供しようとするマーチャントが集まる「交通の要衝」であり、そこを誰が取り仕切るのかという戦いが起きています。今は、世界の時価総額トップ10のうち7社がプラットフォーマー企業という時代です。経営層スタディでは、すでに確立されたプラットフォーム型ビジネスを展開しているというプラットフォーマー企業のうち68%が「業界の中でイノベーションをリードしている」と答えています。また、プラットフォーマーの71%が「満たされていない顧客のニーズを把握するためにデータを活用している」、68%が「製品サービスを継続的に革新するためにデータを活用している」と答えており、プラットフォーマーはデータから競争優位を創出していることがわかります。
AI はデータがないと何もできませんが、今は量子コンピューティングによる超並列計算が可能になりました。モデルや定式を作れば、量子コンピュータがその中に含まれている膨大な組み合わせを比較的短い時間で探索し、最適な答えを返せるようになる可能性が高まっています。ビッグデータなしでも答えが出るというパラダイムシフトが起こったのです。残る課題が、問題をモデル化したり定式化したりする工程です。サプライチェーンやロジスティクスなどの最適化や金融のリスク管理などは比較的定式化しやすい問題ですが、経営者が直面している複雑な課題や自社の戦略的な方向性などを定式化するのは難しいと考えられます。しかしその課題解決がカギとなります。今後の企業には、世の中で起きているさまざまな問題や直面している経営課題をうまくフレームで切り取り、きちんとモデル化する能力が求められます。どのようにモデル化するか、そこが難しいところであると同時に、チャレンジすべきところでもあります。これからの時代は、自分で問題を設定し、自分でモデルを作れる人が強いといえるでしょう。~講演の感想~
【池田 和明 氏のPROFILE】
事業戦略策定、組織改革を専門領域とし、同分野で20年以上のコンサルティング経験を持つ。大手企業に対し責任者として同コンサルティングを多数実施してきた。近年は、成長戦略策定、新規事業戦略策定、ソリューション事業への変革、デジタルテクノロジーを梃子にした事業改革をテーマにしたプロジェクトを手がけている。