「J-Win Next Stageネットワーク第5回定例会」を、2017年11月14日(火)に機械振興会館、大阪大学中之島センターで開催し、東京会場と大阪会場、合わせて94名のメンバーが参加しました。


■イノベーションへのチャレンジ

今回は、Airbnb Japan　代表取締役の田邉　泰之氏を迎え、「グローバルイノベーション　Airbnb －日本市場へのイノベーション展開の挑戦－」をテーマに講演が行われました。近年、新たなビジネスモデルとして世界を席巻したAirbnbのサービスの仕組みや、「体験の提供」という新たな挑戦、日本でのソリューション提供の方向性など、最新の動向と展望についてお話しいただきました。

メンバーからは、「さまざまな業界・業種にとって新しい需要の創出・拡大のヒントが散りばめられていた」「新しいビジネスモデルが発展する過程は、たいへん示唆に富んだもので勉強になりました」「田邊氏の熱意あふれる姿勢に感銘を受けた」などの感想があがり、新しい価値やビジネスモデルを生み出す視点の持ち方や、リーダーとしての姿勢など、多くの気づきを得る講演となりました。

2017年度Next Stageネットワーク活動テーマ 　　　リ・クリエーション（自己の再構築） ～加速する未来を勝ち抜くために 　　　〇時代環境の変化をいち早く捉え、ビジネスセンスを研ぎ澄ます 　　　〇未知の分野にチャレンジし、破壊的な変革の波をチャンスに変える

以下に講演の様子をダイジェストでご紹介します。
(＊肩書き等は講演当時のものです。)


●泊まる場所の提供だけでなく地元を体験してもらう楽しみを提供

「旅がエンターテイメント性を持つかもしれない」という思いを描き、私はAirbnb Japan の立ち上げに手を挙げました。Airbnbは「民泊」という言葉で紐づけられますが、我々は単に泊まる場所を提供したいと思っているわけではありません。遠くから来られた方に地元を体験してもらうことで、素晴らしい思い出を持ち帰っていただきたいというビジョンを掲げ、ビジネスを展開しています。

現在、グローバルで191か国に400万物件が稼働し、ゲストは累計で2億人に達しています。日本においては、すべての都道府県に、合計約58000物件があります。特に日本はインバウンド需要が高く、アジアに来る3人に1人は日本に来ると言われ、昨年は約370万人の方にご利用いただきました。
Airbnbは、部屋を提供するホストの方と、泊まりたいゲストの方をマッチングするプラットフォームです。ホストの方を通じて地域の暮らしを体験できたり、地元の人でないと知らないような穴場のお店を教えてもらったり、新たな旅の面白さが得られるという点に価値があります。また、知らない人同士が安心してサービスを利用いただけるよう、利用者の承認フローなど、さまざまな工夫を重ねています。特に、ホストとゲストの相互レビューが公開されることで、サービスを提供する側と受ける側が対等の立場でリスペクトし合い、世界中のどこに行ってもコミュニティの一員として正しい使い方をしようという気持ちにつながっていることが、安定したサービスを支えています。

●伝統文化の共有や街案内などの体験プログラムが人気

Airbnbでは、昨年末に新しいサービスを発表しました。これは、「泊まっていただく部屋はないけれど、日本の文化や趣味を共有したい」という高い情熱のある方に先生になっていただき、「体験」を提供していただくというサービスです。今、世界中で1800種類以上の体験プログラムがあり、日本は一番人気があります。たとえば、生け花やお茶、盆栽、習字などの伝統文化に触れるものや、地元の人に街を案内してもらうものまで、多彩なプログラムが用意されています。数時間その世界に触れると参加者の興味も引き上げられます。こうした体験がきっかけとなり、心豊かな生き方につながっていくことを願っています。

私も以前、街を自転車で案内してくれる体験に参加しました。地元に住む外国人の方が案内してくれるプログラムだったのですが、非常に面白くて刺激になりました。良く知っている街も、自転車で巡ってみると発見があり、商店街の人との触れ合いなど、地元に住んでいる人に案内してもらうからこそ体験できる風景に出会うことができます。

●イベント時の宿泊先提供や地域活性化を支援

Airbnbのプラットフォームを活用し、いくつかの地域と協働した取り組みも進めています。
例えば、2019年のラグビーのワールドカップ開催都市のひとつである釜石市です。こうしたイベントの時期は、宿泊場所が足りないという課題に直面します。今後、釡石市と連携し、宿泊場所の確保やホスト向けのトレーニング、観光客誘致活動など、協働で推進していきます。

地域活性化の取り組みとしては、Airbnb 社内の専門デザインスタジオ「Samara（サマラ）」が、奈良県の吉野町にゲストハウス「吉野杉の家」を建設しました。現在は吉野町の皆さんが団体でホストをしてくださっています。実際にAirbnbで予約も可能な人気物件です。1階はコミュニティセンターで、地元の人とゲストとの交流の場になっています。

また、今、グローバルで非常に評価されているのは、災害などがあった際の取り組みです。アメリカでハリケーンがあった際は、被災された方に無償で家を提供してくれるホストさんが数多くいました。さらに、リオデジャネイロオリンピックの際には、2週間の間に85000人の方々が利用し、120億円の経済効果を生み出しました。そのうち36億円がホストさんの収入になっています。このような、地域に経済的メリットをもたらすような活動について、今後もお手伝いできればと思っています。

●人が活躍できる場を日本全国に

「民泊」のルールを定めた住宅宿泊事業法が、2018年6月15日に施行されます。今後は、さらに安全に気持ちよく利用していただけるよう、日本にとって良いサービスを日本の企業や自治体と協働しながら、トータルのソリューションを提供していきたいと考えています。我々が目指しているのは、テクノロジーで効率を上げる一方で、人が活躍することで、想定外の新しい発見につなげていくことです。人が活躍できる場をさまざまな地域に広めていけるよう今後も活動していきます。



- 　新しいビジネスがどのようにして起こりどのような理念で運用されているかを日本法人社長に自ら熱い思いを語っていただき、よく理解ができた
- 　日常の中にあるものを価値あるものに変えてビジネスとして成功させたこと、また日本では難しいと思っていたのですが、その日本でも成功を収めていること、そのチャレンジ精神に感銘を受けました
- 　経営者としてクリエイティブな文化を醸成する工夫や、スタートアップの時に苦労されたお話しから、やりたいことを実現させるための諦めない姿勢は、見習いたいと思った
- 　新しい付加価値の創出について、考えさせられることがたくさんありました。業界全体の活性化や既存業種の伸びにも貢献されており、自分の業務でも、Win-Winの関係を構築するビジネスモデルについて考えていきたいと思いました