J-Win第10期 High Potential ネットワーク9月度定例会はWEB中継形式で開催され、230名のメンバーがオンラインで参加しました。

9月度定例会での取組
［目　的］　・刻々と変化する世界の経済情勢を理解し、しなやかに対応する力を身につける
［ねらい］　・世界情勢の歴史から、日本における景気の変動要因を知る
　　　　　 　・景気変動が企業活動に与える影響や、景気動向を踏まえた経営戦略に必要な視点を知る
　　　　　　 ・企業が変化に対応していくために、私たちが心がけておくべきことを知る
［ゴール］　・世界の経済情報に関心を持ち、企業が変化に対応するにはどうすれば良いのかを
　　　　　　　 自らが考える契機とする

9月度定例会は、第30代日本銀行総裁 青山学院大学特別招聘教授　白川方明氏を講師としてお招きしました。 ご講演内容は仕事を通じて得られた自身の哲学をテーマに、1．日本銀行で働く、 2．日本銀行の仕事、 3．総裁時代はどのような思いで仕事をしていたか？ 4．若手行員、中間幹部時代はどのような思いで仕事をしていたか、 5．仕事のモティベーション、 6．経済・社会情報に幅広く関心を持つことの重要性について。
日本銀行総裁を務められた白川氏のご講演、「仕事の哲学」により、第10期メンバーは視座を高め、知見を広げ、世の中の情勢や動きに興味を抱くとともに、仕事に対する喜び、満足感について考える契機となったようです。

以下に講演の様子をダイジェストでご紹介します。
(＊肩書き等は講演当時のものです。)


１．日本銀行で働く
日本銀行に入行後、39年間の勤務。最後の5年間は総裁を務めた。大学在学中、就職、仕事、留学、総裁時代のどれをとっても、人生においては様々な偶然が働いている。
ただし、すべてが偶然と言うのも言い過ぎで、クリティカルな局面では自分の意思も働いていたように思う。結局は、偶然と意思に基づく選択の両方が働き、今日の自分があるのだと感じている。

２．日本銀行の仕事
一言で言うと、通貨価値の安定を図るという仕事。中央銀行が通
貨安定の仕事に失敗をすると、経済は確実に足を引っ張られることになる。「普通に回っていて当たり前、普通に回らなくなると大いに批判される」という宿命を持った組織。人々は自らの短期バイアスを自覚するが故に、長期的な観点から通貨をコントロールする、独立した中央銀行という組織を作った。

３．総裁時代はどのような思いで仕事をしていたか
2008年から2013年の5年間は、一言で言うと、激動の5年間。リーマンショック（2008）から始まり、ユーロ危機（2010）、東日本大震災（2011）、政治の不安定（2回の政権交代等）など様々なことが重なり、日本銀行にとっても厳しい時期で、批判もたくさん受けた。そこで、意識していたのは、
　・ プロフェッショナルとしての自分の判断に忠実でありたい、ということ
　・ 組織として謙虚でなければいけない、ということ
　・ 組織として誠実であること

４．若手行員、中堅幹部時代はどのような思いで仕事をしていたか。
仕事は金銭的報酬を得る手段であるだけでなく、喜び・満足の源泉でもある。
（若手時代）：最初の10年間は、知識が増える事、世の中の仕組みを知ること自体が面白かった。吸収時期。 （課長手前時代）：企画し、実現するターム。アイデアを考え、実行に向けた働きかけをしていくと、手ごたえを感じる。 （課長時代）：さらに対象が広がってくる時代。 （局の幹部時代）：BISの仕事に従事し、金融に関するルールはグローバルに決まっていることを実感。こういう世界で活躍できる人間になりたいと思った。

５．仕事のモティベーション
　・ 金銭的報酬
　・ 自分自身の内なる満足感
　・ 他人から受ける評価（昇進／パフォーマンスの評価／他者の言葉）
昇進は実力だけでなく、運にも左右される。昇進だけを追っているとどこかで行き詰る。
　・ パフォーマンスの数値評価（決算、株価など）は重要だが、自分のコントロール外の要因の
　　影響も受ける。
　・ 自分の内なるコンパスが大事。
　・ 他者からの温かい言葉、励ましの言葉。批判を受けると同時に、温かい声も多かった

６．経済・社会情勢に幅広く関心を持つことの重要性
組織の中で上に行くにつれ、現在の担当業務に直結した知識や情報だけでは不十分。
一段上の地点から見た場合の光景や見識を備えることが非常に大事。
「経済や社会全体で何が起きているかをきちんとフォローする」ことをお勧めしたい。
　・ 好奇心が全ての出発点
　・ 経済・金融データの定期的なフォロー
　・ 専門家の解説（ただし、目先の解説を沢山読んでもあまり意味はない）
　・ 何よりも長期的な視点で書かれた本や情報を読む


講演終了後は白川氏との質疑応答に続き、個人ワークを実施。聴講した10期生には「経済・社会情勢について得た情報を自身の仕事に活かすため何が出来ると思うか」などのテーマが与えられました。個人ワーク後におこなわれたグループワークでの意見交換では、気付きを共有するとともに自らの仕事に活かしていくための考えを深めていくことができました。





■ グループワーク終了後、全体共有のための代表者発表
グループ発表（１）
　・ トップの立場であっても、他社の反応や温かい言葉を真摯に受け止めること。
　・ 自分の仕事と社会がどう繋がるのかを意識して日々の仕事を行うこと。
　・ 自分の業界だけでなく、他の業界についても好奇心をもって知ること。J-Winも良い機会と思った。
グループ発表（２）
　・ 印象に残ったキーワードは「すべての根源は好奇心」ということ。幅広く好奇心を持つ重要性に
　　気付かせていただいた。
　・ お客様からのニーズに応えるうえで、社会情勢にアンテナを立てておくことは基本的な所作として
　　必要と思っているが、新型コロナの影響もあり一歩先のニーズを読むことがとても難しい、
　　という意見も多かった。
　・ センスを磨いていきたい。その一歩として、歴史を見直すなど、様々な方法論を活用したい。また、
　　好奇心を常に忘れないようにしたい。
グループ発表（３）
　・ モチベーションの話が興味深かった。判断の誠実さ、謙虚さ、好奇心等は白川様の人間力に
　　繋がっていると感じた。
　・ 経済知識を持っていると相手に合わせた提案ができると思った。また、他の業界に目を広げる
　　ことで、次のビジネスチャンスが掴めると思った。
　・ 白川様の人間力について意見が多かった。知識を身に付けることで人間力が身に付き、
　　相手に合わせた話や対応ができると思った。人間力を付けるようにしていきたいと感じた。

※白川氏と9月定例会現地運営メンバー