J-Win第10期 High Potential ネットワーク8月度定例会はWEB中継形式で開催され、186名のメンバーがオンラインで参加しました。

8月度定例会での取組
［目　的］　・テクノロジーによりビジネスや社会が大きく変わることを理解する
［ねらい］　・技術革新の変遷を理解する
　　　　 　　・活用事例を通じて、テクノロジーが社会や経済をどのように変えたのかを理解する
　　　　　　 ・最新テクノロジーの動向を理解する
［ゴール］　・テクノロジーの影響力を理解し、今後の自社事業とのかかわりをイメージできるようにする

8月度は、旭化成株式会社 執行役員 エグゼクティブフェローの久世和資氏を講師としてお招きして定例会を開催。デジタル技術は人を支援し、人と協調することにより価値を発揮する、という観点より、テクノロジーの変遷、最新テクノロジー活用、コグニティブ（認知する・学習する）時代の人材育成と必要な要件についてご講演いただきました。
久世氏からは「得意とするスキルや能力が人とコンピュータでは違う。コンピュータは人間の考えをサポートするもので、最終判断は人間がおこなう。"何"が使えるかを考えることも大切だが、もっと重要なことは"どう"使っていくかである」、というメッセージが伝えられました。10期生にとってはテクノロジーとの関わり合い方や企業におけるDX推進のあり方を深く考える契機となったようです。

以下に講演の様子をダイジェストでご紹介します。
(＊肩書き等は講演当時のものです。)


技術革新の変遷は、過去から社会に大きな変革をもたらしました。我々は、これまで、肉体の限界、情報伝達の限界、生産性の限界と様々な限界に挑戦してきました。現在は、複雑性の限界に立ち向かっています。これを解決するためには、人間の知能や思考を、拡大、拡張し、支援する仕組みが必要です。
計算機システムは、第一世代の集計器、第二世代のコンピュータを経て、第三世代のコグニティブコンピューティング（コグニティブ＝認知する・学習する）になり、人間を支援し、複雑性の限界を解決しようとしています。 このコグニティブが可能になった背景として、大量で多様なデータとコンピュータの性能向上があります。
デジタル変革を推進するテクノロジーとしては、AI、loT、ブロックチェーン、エッジコンピューティング、クラウド、セキュリティ、半導体技術、材料科学、量子コンピュータなどがあります。具体的なテクノロジーの活用事例、最新のテクノロジー動向について紹介していきます。すべての産業でデジタルテクノロジーを活用していますが、DXで企業が変革するためには、具体的な目的と目標を持つことが重要です。
（以下、活用事例・最新テクノロジー動向の抜粋）

［医療現場での活用事例］
・がんの120万症例とがんの専門誌200万ページを学習し、医師の診断や治療支援。
・東大医科学研究所では、全ゲノム列を解析し、がんの遺伝子変異を見つけ、薬の選択候補を医師に提示。
・創薬支援では7万件の論文を分析し、がん抑制遺伝子ｐ53を活性化する酵素を数週間で6個発見し新薬の可能性を拡大。
・MRIなどの膨大な医療画像から重要な画像を特定する読影医の作業を支援。

［サイバーセキュリティ支援］
・セキュリティに関する論文100万件を学習。１企業だけで対応することは困難でも複数企業間で情報を共有することにより、いち早くセキュリティの事件を防ぐことができる。

［教育支援での活用事例］
・学習履歴や成績などの構造化データと非構造化データを組み合わせて分析することにより、教師を支援し、学生の進路指導や教育プランを適正に作成。

先進テクノロジーの動向について。

［ブロックチェーンの技術の活用］
・顧客情報などの機密情報を複数企業間でも安全に共有できる技術。セキュリティ面でも安心して組織協力が可能になる。畑から食卓までの安全な食品管理などにも応用。

［動的ボルツマンマシン - 時系列データの学習］
・時間とともに変化するデータの予測や異常検知を可能にする技術で、産業用ロボットの動作トレーニング、製造現場での異常検知、株価の暴落予想などに使われる。

［音響分析による業務支援］
・音を分析することにより、溶接の状態を診断したり、製品や製造装置の見えない部分の欠陥や異常を特定したりできる。最近では、生活音の分析による健康診断などの応用がすすむ。

［IBM Project Debater -人間と討論するシステム］
・人との自然な対話実現を目指して、人とディベートをするシステムを開発し、チャンピオンを対戦。



講演終了後は質疑応答に続き、個人ワークがおこなわれました。聴講した10期生には「あなたが注目する最新テクノロジーは何ですか」などのテーマが複数与えられ、グループワークでの意見交換を通じて、講演内容についての考えをさらに深めていくことができました。

■ グループワーク終了後、全体共有のための代表者発表
注目する最新テクノロジー　→　AI、人工知能
人の生活、生命にかかわることが大きく、時短、効率UPが狙える。情報を選択して決断していくのが人間の能力のため、人間は考えてデータを活用できる。今後はテクノロジーのインフラを整えていくために、考える教育が必要なのではないか。将来的には、単純な働きがなくても仕事ができる社会になるのではないか。

注目する最新テクノロジー　→　非構造化データの活用
通信技術で世界中の情報が共有できる。最新テクノロジーは情報量・処理量・処理スピードが従来よりも改善されているが、今後はもっと加速していく。課題として、コンピュータに学習させるのには時間がかかる。今後は、日本で情報公開が広がることで、コンピュータの処理スピードUPにもつながるのではないか。

注目する最新テクノロジー　→　AI、インターネット、モバイルデバイス
不可能だったものを可能にしたことに注目した。テクノロジーの進歩により、能力・時間・場所の制約がなくなる。今後は、テクノロジーをどう使っていくのか、どう監視していくのか、使用者のスキルが求められる。

※8月定例会現地運営メンバー