「J-Win第9期 High Potentialネットワーク 11月度定例会」を、2019年11月22日(金)に機械振興会館、大阪中継会場、福岡中継会場で開催し、合わせて105名のメンバーが参加しました。
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JTの歴史は古く、1904年の製造専売制度までさかのぼります。1949年には日本専売公社が発足。1985年に民営化して日本たばこ産業株式会社(JT)となりましたが、実はそれよりも前の1968年に、民営化も想定に入れて創造的革新を目指すという「長期経営計画」を作成していました。当時としてはかなり先進的な内容です。なぜJTはこれほど前から革新的な行動ができたのか。そこには「健全な危機感」があったと思います。「健全な」の意味は、本当に危機に陥ってからではなく、経営資源に余裕のあるうちに現実を直視し、遠くを見通すということです。日本の人口は減り、たばこの需要も減るだろうと当時の経営陣はすでに予測していました。実際に、1990年代半ばに日本のたばこ需要は減少に転じ、新たな収益基盤の確立が急務となりました。収益基盤強化のために海外への輸出を行ったものの、自前のリソースでの成長は限界に達します。そこでJTは新たな収益基盤の獲得を決意し、海外たばこ事業の買収に踏み切りました。1999年にはRJRインターナショナル、2007年にはギャラハーを買収。2度の大型買収を経て内外販売比率は劇的に変化し、販売数量の約8割が海外向けとなりました。特に最初の海外たばこ事業の買収に関しては懐疑的な見方もされましたが、自分たちがやるべきだと思ったことをやり抜いた結果として、力強い利益成長を実現しました。グローバル化がJTの未来を切り開いたと思っています。
変革について私自身が思うことを皆さんにお伝えします。変革を成功させるためには、目的についてよく考えることが重要です。変革を起こそうとするときには、何のためにやるのか、何が主で何が従なのかを構造的に考えましょう。目的をよく考えておけば、手段と目的を混同してしまうことはありません。目的を決めたら、達成するために何が必要なのか、地図を作ります。地図の役割は、目的地までの道のりを「線」ではなく「面」で捉えられるようにすることです。地図があれば、障害にぶつかったときにルートを変更する選択もできます。目的地にたどり着くために必要なのは、最短距離を通ることではなく、状況に応じて柔軟に対応することです。変革を進めようとすれば、抵抗する人も必ず出てくるでしょう。そんなときこそ、どうしたら相手の理解を得られるか考えて、丁寧なコミュニケーションをとることが大切です。会社にはトップ・ミドル・現場という異なる立場の人々がいます。皆さんのようにミドルの立場にいる人は会社の将来を真剣に考えて、嫌なことでもトップに伝える勇気を出すことが重要です。トップは部下の話を聞く度量を持ち、まだ起こっていないことに対する決断を下す。現場を支えるメンバーは、決まったことをやり抜く。こうしてトップ・ミドル・現場が一体となることで、大きな変革も起こせるようになると思います。~講演の感想 ~アンケートコメントより~
【筒井 岳彦 氏のPROFILE】
1997年に理工学部を卒業し、JTに入社。小田原工場、本社製造部を経て、経営企画部で企業買収プロジェクトに参画。2005年よりスイス・ジュネーブ所在のJTインターナショナルへ出向し、約2兆円を投じた英ギャラハー社の買収・統合など、数々のM&Aを担当。その後コーポレートストラテジー担当部長として、戦略面からJTインターナショナルのCEOをサポート。2012年に帰国しJT本社の経営企画部長に就任、さまざまな変革プロジェクトをリード。2014年より現職にてM&Aおよび新規事業創造に注力。