「J-Win第8期High Potentialネットワーク 8月度定例会」を、2018年8月3日（金）にビジョンセンター永田町で開催。関西中継会場、九州中継会場も合わせ、229名のメンバーが参加しました。

■10年先にどんな未来が待っているのか

今回は、前半にワークショップ、後半に株式会社アクアビット代表取締役 田中　栄氏による講演を行いました。
講演のテーマは「未来予測2018-2030～過去の延長線上に『未来』はない～」。
田中氏が発行されている「未来予測レポート」は10年、15年先の社会がどのように変化するかというシナリオを提示するもので、中長期戦略を立案する際の前提として多くの有力企業に導入されています。「クラウド・コンピューティング」「サステイナビリティ」「ライフ・イノベーション」の3つのメガトレンドにより社会が構造的に変化する中でビジネスはどのように変わっていくのか。スマートスピーカーなど先端ツールの実演も交えながら、ビジネスの新しい潮流について具体的にお話しいただきました。社会が変わり、求められるビジネスも変わる中で自分たちは今後どのように動いていくべきか、多くの示唆を得る機会となりました。



以下に講演の様子をダイジェストでご紹介します。
(＊肩書き等は講演当時のものです。)



●これからの時代、「足りない」がビジネスの前提となる

「サステイナビリティ」「ライフ・イノベーション」「クラウド・コンピューティング」という3つの大きな潮流により、いま社会が構造的に変わってきています。社会が変われば求められるビジネスもまた変わります。皆さんはその真っただ中にいます。今までの常識が壊れ、目の前に大きなチャンスが広がっているのです。

まず「サステイナビリティ」について。これからは「足りない」ということがビジネスの新しい前提となります。なぜ足りなくなるのか。人が爆発的に増えているからです。世界の人口はいま76億人で、2050年には100億人になると言われています。人が増えれば、それだけ食料や水、資源などがさらに必要になります。これまでは資源のほとんどを先進国が消費してきましたが、経済成長により世界全体が消費を始める時代になりました。こうした状況の中で、私たちは今まで通りお金さえ出せばエネルギーや水資源、食料などを外国から買えるのでしょうか。これまでは自動車も先進国が独占的に所有していましたが、いま世界一の自動車大国は中国です。2017年の世界全体の四輪車販売台数は9600万台ですが、このうち3000万台が中国です。2030年には倍の数になるでしょう。エネルギーのことを考えてみてください。電気に切り替えなければ石油が足りなくなり、他の国に取りに行かなければならなくなる。つまり戦争になってしまうのです。そのため中国では、もう来年から新エネルギー車規制が始まります。インドでは2030年までに新規販売は電気自動車のみにするとしています。ヨーロッパではオランダが2025年、ドイツが2030年、イギリス・フランスは2040年に電気自動車にシフトするという方針を表明しています。「足りない」ということがエネルギーを変え、自動車業界そのものを変えようとしています。いろいろなものを持続可能にしなければならないというのが産業界の新しいルールになった今、どのようなビジネスが求められているのか考えなければなりません。

●ゲノム解析が進み、生命の常識が変わる

2つ目は「ライフ・イノベーション」です。生命の設計図であるゲノムの解析が進み、改変することさえ可能になってきました。医療、農業、漁業、畜産といった生命分野が革命的に変わります。私たちのライフスタイルや価値観まで変えることになるでしょう。

がんをはじめ約6000種類の病気の原因遺伝子が特定され、遺伝子を見ればどんな病気になる可能性があるかわかるようになってきました。予測される病気がわかれば早期の予防医療が可能になります。これまで治せなかった病気もハイテク医療により治せるようになるでしょう。問題は、ハイテク医療は非常にお金がかかるということです。アメリカでは自己破産の原因の5割弱が医療費です。医療格差も問題となっています。莫大なお金さえ払えば難病も防げるということが、ゲノム医療のもたらす現実になってきています。

●シンギュラリティを正しく恐れよ

最後に「クラウド・コンピューティング」について。今、WindowsやMacintoshの登場に匹敵する、もしくはそれを超えるコンピューティングの革命が起こっています。いちばん変わったのはインターフェースです。スーパーコンピュータにより処理能力が飛躍的に向上し、音声や映像をインターフェースとして本格的に使えるようになりました。ある程度以上のレベルで音声認識をしようとすると人工知能が必要になります。これからの時代、人工知能は誰もが当たり前に使うものになり、スマートスピーカーが次世代のコンピュータとなります。スピーカーに始まり、テレビや家電、車などいろいろなデバイスと人工知能が一体になったものがクラウドロニクスです。これが皆さんのビジネスや生活環境の前提となります。

人工知能というと、シンギュラリティによって仕事が奪われるという話がよく出てきます。では、人間の記憶力は今までパソコンより上だったのでしょうか。計算は電卓より早かったのでしょうか。実はシンギュラリティなど、とうに起きています。しかし、コンピュータはしょせんは道具です。人工知能になってもコンピュータは道具であるという本質は変わりません。道具は責任が取れない。試行錯誤することもできない。ゼロから1を生み出すこともできない。価値観がないから美しいも醜いもわからない。善悪の判断もない。感情を持たないから信頼関係を築くこともできない。挙げればきりがありません。これからは、文字通り機械的な作業や判断はコンピュータが365日24時間文句も言わずやってくれます。シンギュラリティを正しく恐れるべきというのは、こうした新しい環境の中で働き方の中身を変えなければならないということです。信頼してもらう、好きになってもらうというのは人間にしかできません。これからは人間にしかできないことにフォーカスしなければならないという点に注目し、時代の変化に応じた変革に取り組んでいってください。　



-　「過去の延長線上に未来はない」ということが講演を聞いて理解することができた。未来がどうなっていくのか的確に捉えてビジネスをしていくことが大切だと感じた
-　食糧難、資源問題、人口増加、第二の中国、物流・商流・金流の変化など世界の動向、それらに関連したこれからの日本企業が立ち向かう未来について考えること、過去の延長線上に未来がないこと、具体例を通じて実感できた。
-　未来予測の多くのソースが、新聞や本、WEBのニュースからではなく、人から直接得た生の情報であるということで、人に直接会って話すということがいかに大切であるかを学ぶことができた
-　常日頃意識していることを人に会うこと、信頼を得ること、外に出ることとおっしゃっており、価値を創るためには人脈づくりや信頼関係を作ることが大切だと強く感じた