「J-Win第7期High Potentialネットワーク12月合宿」を2017年12月15日（金）に、TKP市ヶ谷カンファレンスセンターで開催し、約250名のメンバーが参加しました。

■拡大会議に向けて活動加速

12月は、10月・11月に引き続き「視座を高める・視野を広げる」がテーマ。最先端の知識を習得する講演のほか、これまで進めてきた分科会活動の共有や、活動の振り返り、そして活動終盤に向けて課題を認識し、モチベーションを高めるプログラムが実施されました。

12月半日合宿の目的 　○　講演を通じて視野を広げ、自己の既存の枠を超えて、キャリアビジョン実現 　　　への道筋を描くこと 　○　今までのJ-Win活動を通じて得た自分の気づきや変化を振り返り、自信につなげ、 　　　 今後のキャリアビジョン実現に向けてさらなる行動を促すこと 　○　同じ立場の仲間の考えや経験を知り、刺激を得ると共に他者からの 　　　フィードバックによって、 メンバー間での学びを共有すること。 　　　関東関西合同開催の機会を活かし情報共有すること

【12月半日合宿　アジェンダ】
　■ 講演：「未来を拓くIBM研究最前線～人工知能（Augmented Intelligence）が
　　　　　　　如何に世界を変えていくか～」
　　　日本アイ・ビー・エム株式会社 研究開発・成長戦略担当　石川　繁樹　氏
　■ グループワーク：事前課題や講演の感想・気づきの共有
　■　分科会情報共有
　■　ワークショップ①：　～これまでのJ-Win活動の振り返り～
　■　J-Win Next Stageネットワーク活動紹介
　　　Next Stageネットワーク幹事長　神谷　恵美　氏（損害保険ジャパン日本興亜株式会社）
　■ ワークショップ②：～これからのJ-Win活動にむけた活動宣言～

日本アイ・ビー・エム株式会社　石川　繁樹氏による「人工知能」についての講演では、IBMにおけるAI技術・人工知能などの現状及びその技術が産業・社会を変える具体的事例、今後AIをどのように活用していくべきかなどをお話しいただきました。講演後の質疑応答では、「社内業務を効率化するなかで、AIができない領域、職種はあるか？」「AIのサジェスチョンに人間はどう判断すれば良いか？」など、多様な質問が挙がりました。アンケートでは9割の参加者が「講演内容は大変参考になった／参考になった」と回答。メンバーそれぞれが、AIを身近に感じ、自社に与える影響を考える良い機会となりました。

分科会情報共有では、他の分科会の活動状況や工夫・改善点を知ることを目的に、グループに分かれて、所属分科会の活動状況を共有。 どの分科会でも同じような悩みを持ちながら、3月の拡大会議での発表を目指していることを知った、他の分科会内での具体的な活動手法が参考になった、などの意見が出ました。

ワークショップでは、これまでのJ-Win活動を振り返り、6月のつくば合宿で宣言した自身のゴールに対しての現状把握、今後に向けたアクションプランの見直しを行いました。後半では、将来（J-Win卒業後）の目標とJ-Win活動終了（2018年3月）までの目標を設定。最後に将来の目標達成に向けた行動宣言を作成し、グループ間で発表し合いました。
また、Next Stageネットワークの活動について、Next Stage神谷幹事長より紹介いただき、残り3ヶ月の活動となった第7期メンバーへ向けたメッセージやアドバイスも頂戴しました。

半日のプログラム終了後は懇親会を実施。　大いに盛り上がるとともに、約250名のメンバーと活発にネットワーキングする場となりました。


以下に講演の様子をダイジェストでご紹介します。
(＊肩書き等は講演当時のものです。)


●膨大な量の学問・知識を拡張・増強するAI（Augmented Intelligence ）

データをまとめて解析するとひとつの集合知になります。しかし、2025年には、全世界のデータ量が165ゼタバイト（＊ゼタバイト=10の21乗バイト）という天文学的な数字になるといわれています。特に、人間が創り出したテキストや画像、動画などの非構造化データは飛躍的に増加しています。
私が勤務するIBMは全世界170カ国で事業展開、研究所は70カ所以上あります。そのうち、IT・情報処理技術の最先端を研究している基礎研究所は、米国ニューヨーク州にあるワトソン研究所を始め、日本、中国、南アフリカなど13カ所に及びます。
この基礎研究所からは、1944年"Mark1"（コンピューター）から始まって、1957年"FORTRAN"（プログラミング言語）、1970年"Relational Database"、1996、97年"Deep Blue"（チェス専用のスーパーコンピューター）など、これまでさまざまなテクノロジー（情報処理技術）を生み出してきました。身近なところでは、おなじみのバーコードもIBMの基礎研究所が開発しています。それ以降も、基礎研究所では、電子工学、化学、物理学、材料化学などの研究を続けてきました。Big DataやAIの注目に関連して、数理科学と認知科学に注目しています。

企業競争力の原点が、「人より早くアクションを起こすこと」だとすると、そのためには「未来を予測する」ことが非常に重要なポイントになります。これを実現するテクノジーのひとつとして、いち早くIBMが着目したのが数理科学です。数理科学を用いて、ビッグデータをどのように実際の事象に適応していくのかという研究にいち早く取り組みました。

また、2011年には、米国クイズ番組「Jeopardy!（ジョパディ！）」において、"IBM Watson"が人間と対戦、勝利したことで、「人工知能=AI」の誕生と世界中から注目を集めます。しかしIBMは、あえてAIという言葉を使わず、認知科学（コグニティブ・サイエンス）のサイエンスをコンピューティングに置き換えた「コグニティブ・コンピューティング・システム」と呼びました。

"AI"という言葉には、いつかコンピューターが人間を駆逐してしまうのではないかというマイナスのイメージを抱く人も多いようです。しかし、"IBM Watson"は、自ら理解、推論し学習するシステムです。ですから、IBMにおいてAIと言ったときには、従来の「Artificial Intelligence（人工知能）」ではなく、これまで人類が積み上げてきた膨大な量の学問や知識を拡張し増強する「Augmented Intelligence （拡張知能）」として捉えています。そしてこれこそが最先端のAI=人工知能であると考えています。

●膨大な情報のなかから必要な情報を取捨選択する

2011年の東日本大震災をはじめ、日本では過去に何度も災害を経験してきましたが、時間の経過と共に、その記憶も忘れ去られがちです。しかし、コンピューターや情報処理技術が発展してきたなかで、災害に関するさまざまなデータを蓄積、解析することができれば、過去の教訓を活かし、同様の災害が起こっても、次の世代の人間は賢く対処できるようになります。

クイズ番組「Jeopardy!（ジョパディ！）」専用に開発された"IBM Watson"は、今や、顧客接点変革、探索・発見、意志決定支援という3つの領域を網羅して、コグニティブサービスを提供するようになりました。
"IBM Watson"が、従来のコンピュータシステムと最も違うのは、テキストや音声や画像など、人間が作り出した知識を学習する点です。そのことにより、質問に答えたり、必要な情報を探し出したりすることも可能になりました。すでに、金融、製造やデジタル、医療などの多岐にわたる業界で"IBM Watson" の応用や活用が始まっています。

かつて人間は、いろいろなテクノロジーを活用し、肉体的、情報伝達、生産性の限界に挑戦し、人間の能力を超えて来ました。そして今、認知能力の拡大、拡張するために、複雑性の限界にチャレンジしています。膨大な情報のなかから、いかに必要な情報を取捨選択できるかが、重要なポイントとなっていくでしょう。

●テクノロジーを導入することで、生活の質をどう上げていくか

データをまとめて解析するとひとつの集合知になります。しかし、2025年には、全世界のデータ量が165ゼタバイト（＊ゼタバイト=10の21乗バイト）という天文学的な数字になるといわれています。特に、人間が創り出したテキストや画像、動画などの非構造化データは飛躍的に増加しています。
日本はすでに高齢社会に突入しており、人口は減少の一途をたどっています。しかし人口が減ったとしても、あらゆる場面で効率化が求められていくことは間違いありません。現状では、コグニティブ・コンピューティングやAIはまだまだ発展段階にありますが、テクノロジーの活用は間違いなく必要となっていくでしょう。テクノロジーを導入することにより、社会や働き方がどのように変化していくのかは、すでに政府や企業レベルでも議論されています。

私が子どもの頃、電卓が出始めたとき、大人たちから「頭が悪くなるから電卓を使ってはいけない」と言われました。人間というものは、最新のテクノロジーが登場すると恐怖を覚えるからなのでしょう。最近話題になっている自動車の自動運転もしかりです。

1990年代には基礎的な研究が始まっていた自動車の自動運転ですが、製造物責任という重い課題が解決できなかったため、自動車メーカー各社が、導入に二の足を踏んでいました。しかし高齢社会となった今、高速道路を逆走したりブレーキとアクセルを踏み間違えたりといったヒューマンエラーが起きる確率のほうが高くなり、自動運転のほうが安全ではないかとまで言われています。

つまり私たちは、便利さや安全を比較しながら、QOLをどう上げていくかを真剣に考えていかなくてはならないのです。そしてそれは、これから企業でトップをめざしていく皆さんが担うべき重要な役割でもあると言えるでしょう。