J-Win1月度定例会が、2017年1月11日(水)に東京ウィメンズプラザホールで開かれました。今回は、前年12月に行われた国内半日合宿のフィードバック、2016年度拡大会議についての説明、J-Win4~6期メンバーによる社内での活動事例紹介などが行われました。最後に、中日本高速道路株式会社 元代表取締役会長兼社長の金子剛一様にご講演をいただきました。
ここでは、金子様の講演をダイジェストでご紹介します。
「組織を変革するリーダーシップ」中日本高速道路株式会社
元代表取締役会長兼社長
金子剛一氏
(肩書は講演当時のものです。)
●2つの大きな転換点で私を動かしたもの
私のキャリアの中では大きな2つの転換点がありました。1つ目は、米国の3Mで3年半ファイナンシャル・ダイレクターとして勤めたあと、日本に戻ったときです。当時の日本の住友3Mは、成長率1~2%という低成長。一体日本の3Mはどうなってしまったのかという思いと、なんとか母国日本の3M社を立て直したいという強い気持ちでした。
次の転換期は、2010年に中日本高速道路(株)に移ったときです。2005年の民営化から5年経過。当時の政府から「民間の会社としての活力を植え付けてほしい。日本のインフラを構築し、経済・社会にとって重要な会社をますます強くしてほしい」と要請があり、お話を受けました。
住友3Mのときは「どんな経済状況下であってもプラス成長できる会社にする」、中日本のときは「民間のイキイキした会社として社員が自ら考え、実行できる会社をつくる」という決意が、2つの転換点で私を動かしました。
●組織の風土、社員の意識を改革する
住友3Mに戻り、その低成長の理由を考えてみたときに、アメリカと日本の仕事の進め方の違いに気が付きました。アメリカでは、女性の活躍の場が多い。社員の働き方・働かせ方が違う。残業はほとんどなく、会議も1時間で結論を出すなど、生産性の高さを感じました。決して日本の製品や社員1人1人の質が劣っているわけではない。違うのはコーポレートカルチャーであり、この変革なしには今後の高い成長は難しいと感じました。住友3Mを、成長とイノベーションを加速できる文化を持ち、社員1人1人が自由でやりがいと責任を持って働ける会社に作り替えていこうと決心し、年功序列による昇進や給与制度の廃止、女性の登用、職種の選択などを盛り込んだ「HRプラン21」を構築したのです。
大事なのは新たな制度を会社に導入するだけではなく、企業文化を変えること。それは3,000人の社員の考え方、行動を変えるということです。まずは1人1人が自分ごととして、「なんのためにこの改革をやるのか、やればどうなるのか」を理解、納得し、オーナーシップを持たなければなりません。今までの行動を変えるというのは最低でも4-5年はかかります。5年後を見たときに今、手を打たなければどうなるかという危機感を醸成することが組織を変えていくときの大きな課題となります。
●組織・社会を動かすとはどういうことか
よく「組織を動かす」といいますが、「組織」は見えません。そこにいるのは「人」です。リーダーは、「我々はなぜそこに行くのか、そこに行くとどうなるのか。10年20年先に、我々はこうなるのだ」というビジョンを示すことが必要です。そして、戦略を練る。何を・どうやって・誰が、という視点で現在から目標までのロードマップを描けば、多くの人が自分の足で動き、間違いなく目標とする場所に行ける。それが「組織を動かす」ということです。
1人1人が変わることで、会社が変わる。1社ずつ会社が変わっていけば、社会を動かすことができる。企業のカルチャーを変えることは、国のカルチャーを変えることに繋がるのです。
●女性の皆さんへ期待すること
組織を変えるには、本質的で、長期にわたって持続的に取り組まなくてはならないものもあります。長い時間をかけて大勢の人を動かしていくには、まずはすぐに取り組めるもの、短期間でも結果が出るものから始める。すると「できた」というプラスの事象が次のプラスを呼び、その次へとつながっていきます。
経営においては、短期的な利益を追求するだけでなく、中長期的な視野に立って戦略を立てることが大切です。「社会に求められるものとは何か」を考えるだけでなく、自分たちで新しいものをつくりだし、やがてその製品が社会を変えていくのだという気概を持つことも必要でしょう。
一度に変える必要はありません。今、困っている何か小さな問題から始めましょう。それを解決するには、何を・どうやって・誰が、の視点から計画を作り、できれば仲間を作って失敗したとか、冷や汗をかいたとか、恥ずかしいということに負けないで、くじけずやりとげて欲しいと思います。
先行き不安な今だからこそ、逃げずに挑戦をしてください。そして経営者として大切な「人間性」、善・美・真・義といった「理念」もぜひ身に付けて欲しいと思います。
【金子剛一氏のPROFILE】
1968年明治大大学大学院商学研究科修士課程を修了後、住友3M株式会社入社。3Mアジア太平洋地域財務担当ディレクター、取締役人事本部長兼3Mフェニックス代表取締役社長等を歴任したのち、2003年代表取締役副社長、2009年特別顧問に就任。その後、住友3Mでの経営手腕を買われ、2010年中日本高速道路株式会社会長兼社長に就任。大胆な民営化政策を進めた。