J-Win第6期12月合宿が、2016年12月16日(金)にTKP市ヶ谷カンファレンスセンターで行われました。講演では、一橋大学名誉教授の石倉洋子氏に「混とんとする世界 この機会をつかまえよう!キャリア・ライフスタイルをデザインするのはあなた!」というテーマで、世界の動きや、キャリアを築いていく上で、個人はどう考えどう行動していくかについてお話しいただきました。
ここでは、講演の様子をダイジェストでご紹介します。
「混とんとする世界 この機会をつかまえよう!
キャリア・ライフスタイルをデザインするのはあなた!」
一橋大学名誉教授
石倉洋子氏
(肩書は講演当時のものです。)
●テクノロジーが原動力となり世界が急速に変化
今日の世界では連日のように、"まさか"ということが起きています。トランプ氏の次期アメリカ大統領への選出を始め、イギリス、フィリピンなど、さまざまな国で予測できなかったことが起きました。こうした出来事に市場も敏感に反応し、株価も大きく変動しています。ビジネスにおいても、「第4次産業革命」と言われるほど、大きな変革の波が押し寄せています。昔と違うのはスピード感です。良いサービスや商品はあっという間に広がり、生み出した企業も急速に成長する世の中になっています。業界の境界も無くなってきているのではないでしょうか。例えば、スマートフォンはどの業界のものでしょうか。電話やメールにも使えるけれど、新聞を読んだり、音楽を聴いたりもします。通信業界だけでなく、出版業界や音楽業界のものでもあります。「Airbnb」や「Uber」、「クラウドソーシング」など、昔だと考えられなかったサービスも生まれました。こうした新たな変化を生み出している原動力はテクノロジーです。
●日本に足りないのはスピード感
一方で、日本はどうでしょうか。日本も、高齢化や都市化など、さまざまな課題を抱えています。特に、高齢化に関しては、日本がパイオニアにもなれる分野でもあると思います。しかし日本では、過去の実績やレガシーにとらわれる人も多く、新しいことにチャレンジしにくい社会であることに問題があります。日本に足りないのは、どんどん新しいことに取り組んでいくスピード感です。また、安定志向が強く、やり方を変えることに消極的な傾向があります。こうした"安心、安定"は悪魔のささやきです。仕事も、時々見直してやり方を変えてみることが必要だと思います。
●イノベーションは個人の力が原動力
世界では"個人"を中心に考えることが主流になってきています。組織や企業は、個人に最大限実力を発揮してもらうには、どういう環境を作るべきか、と考えるようになっています。日本では、どこかに誰かが導き出した正しい答えがあるはずだと探してしまう"正しい答え症候群"になりがちです。正しい答えなどありませんし、またそんな答えを探し出すことよりも大切なのは、自分なりの意見を持ち、違う立場からも考えて、柔軟に方向性を導き出すことです。最近は、仕事がAIなどによって無くなるかもしれないと言われることがあります。もし、仕事がなくなる不安があったとしても、別の視点で考えることで、5年後、10年後にも自分ならではの価値を発揮することができます。ロボットの方が速く正確にできる仕事はロボットに任せて、ロボットにはできない仕事でいかに自分の価値を発揮できるかがポイントになってきます。
また、今は多様な働き方があり、会社の中だけでなく、起業家になるという方法もあります。さまざまな分野のプロフェッショナルと友達になって話を聞く機会を作るとよいでしょう。性別も年齢も、分野を問わず、すごいと思う人をロールモデルにしていってください。"できません"というのは簡単ですが、"できる"と宣言すると、どうやって実現するかを考えます。「Yes、We can」の精神で、「What if?」(もしこうなったらどうだろう?)と、多角的な考え方をすることで"できる"を実現し、自分の価値を高めていってください。
●より良い方法を考え、昨日の自分より進歩する
大切なことは、昨日より良い自分を求めていくことです。自分の目で見て、聞いて、体験することが大切です。大げさに考えず、"できる"と仮定してちょっとやってみること。常によりよい方法を考えることで、昨日の自分より進歩していきます。自分の実現したいストーリーを描いて、人に伝えましょう。伝えることで、アイディアをくれたり、応援してくれる人が現れます。キャリアもライフスタイルもデザインするのはあなた自身です。自分のチアリーダーになり、自分を信じて前に進んでいってください。
【石倉洋子氏のPROFILE】
バージニア大学大学院経営学修士(MBA)、ハーバード大学大学院経営学博士(DBA)修了。マッキンゼー社でマネージャー。青山学院大学国際政治経済学部教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授。慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授。経営戦略、競争力、グローバル人材を専門とする。「グローバル・アジェンダ・ゼミナール」「ダボスの経験を東京で」など、世界の課題を英語で議論する「場」の実験を継続中。