2016年1月13日(水)17時より1月度定例会が、東京ウィメンズプラザホールで行われました。今回は、株式会社@アジア アソシエイツ ジャパン代表取締役の正宗エリザベス氏による講演「輝くリーダーを目指す!!」と、東京都総務局人事部職員支援課長の久保田直子氏によるワークショップ「女性のキャリア形成支援に向けて」が行われました。
講演とワークショップをダイジェストでご紹介します。
■講演
「輝くリーダーを目指す!!」
~外からの目線で見た日本のD&Iの現状を知る~
株式会社@アジア アソシエイツ ジャパン
代表取締役
正宗エリザベス氏
(*肩書は講演当時のものです)
●D&Iは"歩み寄りの精神"から
働くことは生涯にわたってのjourneyです。皆さんも仕事を通してさまざまな経験をお持ちだと思いますが、D&Iを広げていく上では"歩み寄りの精神"を忘れてはいけません。仕事は、相互理解のプロセスから生まれます。職場での仲間同士や、働く女性同士、仕事を持たない女性との歩み寄りも必要。常に相手の立場に立って考えることを念頭においていただきたいです。
●リーダーを目指す意義は?
リーダーというのは意義があって初めて務める意味があります。後から難問が出てきても、意義があるからやり続けられるのです。リーダーになれば、現状ではできないことも実現する可能性があるのではないでしょうか。熱意と意義があるならば、ぜひリーダーに挑戦していただきたいと思います。
女性はまじめなので、完璧に仕事をしたいと思いがちです。私は30歳過ぎで課長になり、初めて3人の部下を抱えることになりました。その内、2人は優秀で勤勉。残る1人は仕事が思うようにできなくて問題がありました。私はその時、その人の仕事を勤勉な部下に回していたら、部下からクレームがきてしまい、未熟なマネージャ-だということを実感しました。その人の限界を自分で決めていたのです。上に立ち、人に仕事を出す立場になると、我慢しなければならないことも数多くあります。部下の仕事が自分が思い描くように完璧にはできていない時でも、大きな問題はないと判断した場合は上にあげて進めていくことが彼らの能力をどんどん上げていくということも経験から学びました。
日本人の難しいところは本音を言わないところです。上司の前で問題を言わないので、コーヒーを飲む部屋で世間話をする機会を増やすなど、非公式な場を情報収集の手段として使ってきました。個人個人の愚痴に耳を傾けたり、部下が意義を感じる仕事は何かを考えて与えることで仕事への取り組み方も変わるということも実感しました。
●リーダーになるために必要なこと
リーダーになるときはいくつかの壁を乗り越える必要があります。
まず、ひとつは自信を身に付けること。経験のないことをまかせられると、女性は「私にできるだろうか…」と不安になってしまいがちです。私も不安で父に相談した時、「今までこれだけのことをやってきたじゃないか。自身を持ちなさい」と言われました。私は完璧でなければと思いすぎて、失敗を恐れていたのです。私のマインドセットに大きく影響したのはインドネシア駐在の経験でした。今まで行ったことがない場所で、知らない環境で働くことができたことで、次のステップに進む大きな自信になりました。
次に、自己アピールの仕方を把握すること。私も最初に管理職になった30歳くらいの時、女性で管理職なのは自分だけで、周りは男性ばかりでした。男性たちは自己アピールに積極的です。私は、自分の番を待っていても順番は回ってこないと悟りました。女性も自分からアピールしないといけません。管理職にとっては、チームで達成したことをアピールすることも大切です。それが部下をほめることにもなり、結果的に自己アピールにつながります。
他にも、リーダーシップスタイルや判断力・精神的な強さの育成、積極的にネット―ワークを広げていくことでの良いサポーターの構築も重要です。女性は適応力やコミュニケーション能力に優れています。ぜひその特性も生かしながら、女性らしく働き、プロフェッショナルを目指していってほしいと願います。
<正宗エリザベス氏 プロフィール>
1987年にオーストラリア貿易促進庁に入庁。東京をはじめ、東南アジア各地のオーストラリア大使館を拠点に活躍し、200人を超える部下を抱えながら重役を歴任。2015年に株式会社@アジア アソシエイツ ジャパンを設立し代表取締役に就任。ダイバーシティと異文化コミュニケーションを中心にコンサルティング業務を行い、講師、評論家と社外取締役として活動。
■ワークショップ
「女性のキャリア形成支援に向けて」
~業種を超えた、課題とノウハウの共有~
東京都総務局人事部職員支援課長
久保田直子氏
(*肩書は実施当時のものです)
●キャリアアップと育児を両立するワークライフバランスを
私が人事部の管理職になってから、異業種の同じような立場の女性と話す機会が増え、女性のキャリア形成は業種を超えたテーマだと感じています。私自身3人の子供を育てながら仕事をしてきましたが、妊娠、出産がキャリアアップの大事な時期と重なりました。どちらを選ぶべきか悩む方もいらっしゃいますが、悩んで時機を逸することはもったいないことです。従来は、休暇制度等を活用し、仕事と育児を両立するのが一般的なワークライフバランスの考え方でしたが、都も現在、キャリアアップと育児を同時に両立する方向を目指しています。育児中にこうしたワークライフバランスを志向してほしいと思います。
●管理職になってからの苦労、喜び
管理職の道には苦労もありますが、結果的に喜びが多い点で親業との共通点があります。最初は泣くだけだった我が子も、1歳、2歳になると、ママと呼ぶ日が来たように、管理職も部下を持って課長になっていく側面があります。また、親業も管理職も経験や能力だけでなく人間性が求められるので、経験不足を悩みすぎないことも重要です。部下やチームといった組織で何かを達成するのは、管理職ならではの喜びです。
●昇進と育児の両立ノウハウ
昇進も育児も、両方を完璧にやることは不可能です。自分ひとりで抱え込まず、他者の協力を得ながらやることが大切です。私も急な仕事で保育園のお迎えに間に合わない時、ママ友同士まとめて連れ帰って面倒を見るような関係を築きました。みんなの力を借りながら全体を動かしていくことは、どこか管理職の仕事と似ています。また、子供にもどんどんお手伝いを任せています。実は子供にとって水や火を扱うお手伝いは、おもちゃ遊び以上にわくわくするもので、それを通して成長します。これも部下に仕事を任せ、活躍の場を作る人材育成に似ています。配偶者との協力ももちろん重要ですが、育児は夫婦の義務でもあり、愛情表現の一つととらえてもよいのではないでしょうか。
●自身の成長を周囲へ還元
仕事は社会との接点でもあり、顧客、組織、自身の成長に加え、将来の社会を担うわが子のためにするものでもあります。こうした姿勢で仕事に取り組む姿を見せることは子どもに誇るべきことです。よく「育児はいつ終わるのか」と聞かれますが、子供が大きくなっても親の心配と愛情が尽きることはなく、その出口は遠いものです。育児の終了を待つことは、自分の成長期を逸失することにもなりかねません。仕事も育児も頑張るうちに、いつしか子供が社会を意識し、自分の応援団になる日がきます。ぜひ、自身の成長を止めることなく、我が子のためにも迷わずキャリアアップを目指していってください。
<久保田直子氏プロフィール>
1995年に東京都庁に入庁。3人の子供を育てながらキャリアを重ね、2013年より東京都総務局人事部職員支援課長、2016年より調査課長を務める。