2015年9月9日(水)17時~東京ウィメンズプラザに於いて、9月度定例会が開催されました。
今回は、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社取締役専務執行役員 金杉恭三氏より「私のワークライフ・マネジメント ~~企業のリーダーとして~~」と題してご講演いただきました。
「私のワークライフ・マネジメント
~~企業のリーダーとして~~」
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
取締役専務執行役員
金杉 恭三氏
(*肩書は講演当時のものです)
●問題の多い支店、リーダーのあなたならどうする?
入社してすぐ支店の営業配属でした。毎日遅いのは当たり前。当時はワークライフ・バランスなどという概念もなく、男は仕事に邁進するものと思っていました。しかし、入社間もなく結婚し子どもを2人もうけましたが、その直後に妻が病に倒れ闘病した後、他界しました。このような家庭環境であったため、私は月曜日から金曜日でなんとか仕事を仕上げ、土日は家庭サービスという生活でした。再婚後も生まれた子供が知的障がい者であったこともあり、この生活スタイルは今も続いています。2001年に会社が合併後は、社長室直轄の構造革新グループのリーダーに任命され、相変わらず忙しい日々を送っておりましたが、2003年に東京中央支店という大型営業店の支店長として赴任することになりました。様々な問題を抱えた支店でしたが問題点の1つに、長時間残業も入っていました。
さてここで、皆さんにも一緒に考えてほしいのですが、次のような問題の多い支店の場合、あなたは支店長としてどのような手を打ちますか?
都心にある支店で、リテール営業が中心業務、営業課は1~5課あり、支店全体では約80名、男女は半々です。問題点は、
◎合併後の混乱がまだ継続している
◎毎日各課で数名が深夜残業をしている
◎営業成績、業務品質共に全国最下位である
◎内部監査をしようにも、監査不能。
私はまず30分程度、全員を集めての全体会議をやりました。そこで、こういう支店にしたい、だからみなさんにはこういうことを期待している、と私のビジョンをはっきりと話しました。そのうえで、個人面談です。職種・ポジションにかかわらず全員と。「この1年のあなた自身の目標」を聞くとともに、意見や要望も出してもらいました。一人20~30分ですが、80人分となると約30~40時間。でも、やる価値は十分あります。問題がどこにあるのか、どういう手を打たなければならないかが見えてくるし、実際にそれを実現すると、社員のモチベーションは確実に上がります。まずはすぐ出来ることから着手し改善することも重要です。
一方で支店の正常な業務を大きく阻害している要因の排除、環境整備に着手しました。その最大は一部の大口のお取引先に関する多大な業務負荷の是正でした。思い切って改善の申入れをし、一定期間経っても改善に応諾して頂けなかった先については、取引の解除もさせて頂きました。事務職については、実はここがしっかりしていないと支店の運営はうまくいかないのですが、事務リーダー会議をもって業務改善に取り組みました。すぐには解決できない意見や要望については、その取り組み状況がどうなっているかを情報開示しました。また、それぞれが支店全体の業務を理解し、情報共有できるようにするとともに、各種研修、勉強会などを充実させました。個人面談によって、こうしたさまざまな施策は自分たちが提案し、実行したのだと思わせることが大事なんです。
その結果、翌年には、5つの課全てが営業店表彰を受け、業務品質でも東京で1位となったのです。着任してすぐに夜11時には消灯としたのですが、業績の上がった2年後には8時に消灯、水曜日は定時退社にできました。
●リーダーは部下との関係が大事
リーダーと部下との関係ですが、私がよく分かっていること、得意なこと、これは部下に任せます。しかし、良く知らないこと、苦手なことは部下任せにはしない。判断のモノサシが自分にないと、リスクも見極められないから部下と一緒に考えながら進めます。
部下のほうがその業務に精通しているという場合は知ったかぶりをしたりせず、謙虚に教えてもらいます。
皆さんはこれからトップリーダーを目指すわけですが、ラインの課長、ラインの部長の在任期間は本当に短い。長くて8年から10年。その間に2~3か所異動をするわけですから、1つの部署は3~4年です。その間に成果を出さなければならない。とくに着任直後が大事、直属の部下はもちろん、会社も注目をしていますからロケットスタートをしてください。
また、課長は務まるけれど、部長は・・・と言う人もいますが、それはマネジメントに求められることが違うからです。せいぜい10名程度までのリーダーなら、ダメな部下がいても、自分がカバーすれば済みます。しかし、部下が20名を超えると自分がフォローするのではなく、任せるところは任せてチームワークを管理するのです。
また、全く新しいところへ異動した時は部下に業務知識で負けないように徹底的に勉強することが肝要です。その業務のリスクはどこにあり、どうしたらもっとよくなるか、業務改善を常に追求することです。いくつになっても自学自習を忘れないで、ぜひトップリーダーとなってください。楽しみにしています!
【金杉恭三氏プロフィール】
1979年大東京火災海上保険入社。支店・支社と本社とを異動しながら2001年あいおい損害保険(合併により社名変更)社長室構造革新グループ長。経営企画部長、人事企画部長などを経て'08年執行役員に。常務執行役員、合併によるMS&ADインシュアランスグループHD執行役員を兼務ののち、'13年より取締役専務執行役員になり現職。'16年4月より、代表取締役社長に就任予定。