2015年7月8日(水)17時~東京ウィメンズプラザに於いて、7月度定例会が開催されました。今回は、J-Win第1期女性メンバーで、住友化学株式会社 執行役員の坂田信以氏にご講演いただきました。
「私のキャリアパス with J-Win」
住友化学株式会社
執行役員
知的財産部担当
坂田信以氏
(*肩書は講演当時のものです。)
●目標を立て、それを達成しようとする中で仕事が好きになる
私が就職した時代は、4年制大卒女子を公募採用する一般企業はほとんどありませんでした。ですから理科の教師になるつもりでしたが、指導教授から住友化学を紹介されて入社しました。当時は男性社員とは新人研修も別で、給与も昇進も差がありました。仕事は研究補助だろうと思っていたら、私の上司が素晴らしい人でした。「ぼくは女性社員にも研究テーマを与えることができます。ですから研究をしてもらいます。論文をまとめ、学会発表もしてください」と。俄然やる気が出て、それから最初の10年間は研究活動に没頭しました。が、次に安全性試験データの信頼保証部門へ異動となったときは、会社を辞めようかと思うほど落ち込みました。データが正しいかどうかを検証・保証する、その体制を作るという研究支援部門に回ったからです。アメリカで医薬品の研究データねつ造が大きな問題になり、日本でも「安全性試験データの信頼性保証」が法制化されたのです。
そこで、私は2つの目標を立てました。1つは、これまでの研究成果をまとめて学位をとること。2つ目は、安全性試験データの信頼性保証という新しい分野で専門家をめざし、その先駆けとなること。目標をもって業務を進めるうちにだんだん面白くなり、2つの目標とも達成できました。後年、安全性試験の信頼性保証体制についてのOECDの会議で、私は日本の民間企業を代表して講演する機会にも恵まれ、専門家としての一歩も踏み出すことができました。
●信頼される人になる、これが大事
会社に長くいると異動はつきものです。その後、研究所外への異動を希望して本社事業部で防疫薬(殺虫剤)の海外登録業務を担当し、また研究所へ戻り、次は本社のレスポンシブルケア室へ、そしてまた研究所へと、東京本社と大阪の研究所の間で異動を繰り返しました。異動のたびに一気一憂するのはしょうがないですね。ただ、たとえ意に沿わない異動でもまず自分を省みて、いつまでも落ち込んでいないで必ず新たな目標を設定し、目標達成に向かって進むことで、自分が果たすべき役割が明確になり、自然とモチベーションも上がりました。こうして仕事に取り組んでいるうちに、思いがけない風が吹いてきました。「女性活用」の風です。
私は当時、研究所で担当部長相当に昇進し、そして本社のライン部長になり、次には理事で生物環境科学研究所の所長を拝命しました。私には、工場や営業、海外での勤務経験がなく、研究も安全性しか経験がありませんでしたので、自分のスコープの狭さをいつも感じていました。また、研究所長を拝命した際には、日進月歩の研究現場を離れて20年以上が経っていたので、不安もありましたが、研究方針の策定、予算や人事、組織体制の整備など研究所の運営全般を経験することができ、大変やりがいのある仕事で、思い切って引き受けて良かったと思っています。そして2013年、執行役員を拝命し、知的財産部担当になりました。
以上の私の経験から、仕事をする上で「私が心がけていること」をまとめると、
①チャレンジする目標を自ら見出し、また、常に自分を省みる
②専門性を高め、その分野の第一人者を目指す
③多くの分野・部署を経験し、スコープを広げる
④チャンスがきたら、必ず引き受ける
⑤人(部下・上司・社内関係部署・共同研究先・顧客等々)と仕事をするということを忘れず、信頼される人になる。
最後に、私はJ-Winの第1期女性メンバーでした。女性ばかり約200名も集まっての合宿とか、内永理事長の目から鱗のメッセージ、ノルウエ―・スウエーデンへの海外研修と驚きの連続でした。分科会活動も本当に手探り状態でした。会社と違って上下関係や利害関係のないグールプで人を動かす、リーダーを務めるというのは大変なことです。積極的に発言するとともに、発言した以上は自ら責任を持って実践・実行すること。意見を言うだけの評論家では、仲間の信頼は得られません。
今はJEN(執行役員以上の女性ネットワーク)の副幹事長を務めていますが、J-Winでのこうしたさまざまな体験は、①マネジメント力 ②人間力 ③ネットワーク力をアップすることにつながります。みなさんもお忙しいでしょうがJ-Winメンバーとなれたこのチャンスをぜひ生かし、活躍していっていただきたいと願っています。
【坂田信以氏 プロフィール】
1979年京都大学農学部農芸化学科卒業とともに住友化学工業㈱(現・住友化学㈱)に入社。安全性研究部門(現・生物環境科学研究所)で農薬の土壌及び土壌微生物による代謝・分解研究を約10年間担当したのち、安全性試験データの信頼性保証業務、防疫薬の海外登録業務等を経て、2010年レスポンシブルケア室(化学品安全)部長に。理事・生物環境科学研究所長を経て、2013年より執行役員・知的財産部担当に就任、現職。農学博士。