2014年6月11日(水)17時から、6月度定例会が東京ウィメンズプラザで行われました。今回はJ-Winの内永理事長より、「経営戦略としてのダイバーシティ・マネジメント」というタイトルでご講演がありました。
「経営戦略としてのダイバーシティ・マネジメント」
NPO法人J-Win 理事長 内永ゆか子
●ビジネス環境の激変が、多様な発想を必要としている
みなさんは、各企業から女性幹部候補として、このJ-Winに送り出されてきたわけですが、企業はどうして今、女性管理職を必要としているのでしょうか?
ひとことでいえば、「ダイバーシティ・マネジメント」を志向していかないとこのグローバルな競争時代に、またビジネス環境の非常に激しい変化の時代に生き残っていかれないからです。ITの進展によって、国境、距離、時間、会社とか組織といったさまざまな障壁が低くなっていき、世界はフラット化しました。
例えば素晴らしいアイディアや、実現可能な実行プランがあれば、たった一人でモノ創りだってできる。世界中から投資する人を探し、それを作ってくれる工場をみつければいいのです。スマートフォンがあっという間に世界中に普及し携帯電話の次世代としてとって変わったように、ものすごいスピードで、市場も、ビジネスモデルも変わっていく。そういう時代に私たちは直面しています。そうなると、高度成長時代のように、1つの目標に向かってみんなが同じ方向を向いて頑張るのではなく、ダイバーシティ=多様な人たちの多様なアイディアが必要となるのです。その中から、新しい価値を見つけて伸ばしてゆく、企業戦略としてダイバーシティ・マネジメントを目指さなければならないのです。
●ダイバーシティ・マネジメントで公平な評価と組織の透明性を
IBMでは、1998年当時のルイス・ガースナー会長が、IBM再建のための企業戦略の1つとして、多様性、中でも世界共通の課題である「女性の活用」を、世界中のIBMに指示しました。私がかつて在籍していた日本IBMでも、女性活用のためのプロジェクトを立ち上げ、女性活躍の障害となっている要因について徹底的に調べて対策を講じました。
例えば、女性の離職の理由は、もちろん家事や育児の問題もありますが、実は「将来像が見えない」という理由が大きかったのです。何十年も在籍している女性は少なく、女性管理職もほとんどいないとなると、「この会社には希望がない」と思うのは当然のこと。やる気のある有能な女性ほど転職を考えます。その解決策として、女性のネットワークを作ったり、メンタリングプログラムを導入。また、子供を持っても働き続けられるよう「e-ワーク制度」(在宅勤務制度)を始めました。一方、個々人の職務責任を明確にし、業務プロセスの見える化を進めることで、公平な評価システムができました。でないと、ついつい遅くまで残業している人、上司との付き合いがまめな人などが高評価になりがちだからです。
トップエグゼクティブにもコミットメントをしてもらい、管理職の評価項目には「女性部下の登用」を入れ、管理職の後継候補には必ず女性も入れるなど人事面で大きな改革をしました。女性の幹部候補に対しては、キャリア開発の機会やメンターをつけて育成を図るなど、組織を上げて、女性活用の企業風土を作ったのです。これらにより、組織としての透明性、明解性が高まりましたが、その後もダイバーシティ・マネジメントに取り組み続けています。
最後に、J-Winメンバーとして企業から送られてきた幹部候補生である皆さんへのメッセージを。
キャリアアップは自己実現につながるものです。高いキャリア目標をおき、そしてチャンスが巡ってきたら必ず掴む。実力は後から着いてきます。そのためには、個人としての強み、これについては誰にも負けないという価値を持ってください。
そして、「1度馬に乗ったら降りない」こと。どうぞあなた方を送ってくれた会社から与えられたこのチャンスを生かして、キャリアとともにご自分の人生を豊かなものにしていってください!