J-Win2月度定例会が、2014年2月19日(水)17時から、田町の女性就業支援センターにて開催されました。
今回は、ボストン コンサルティング グループ、シニア・パートナー&マネージング・ディレクターの津坂美樹氏より、「私のワークライフ・ブレンド」をテーマにご講演をいただきました。3人のお子さんを育てながら女性リーダーとして活躍してこられた経験、20年間のNY生活で知った日米の違いなど、充実したお話をしていただきました。
ここではその内容をダイジェストでご紹介します。
講演タイトル「私のワークライフ・ブレンド」
ボストン コンサルティング グループ
シニア・パートナー&マネージング・ディレクター
津坂美樹氏
「ワークライフ・バランス」とよく言われますが、私にとって「ワーク」と「ライフ」は、分けてバランスをとるものではなく、自分流にブレンドしていくものです。今回はそんなお話をしたいと思います。
私は商社に勤める父、教師の母のもとに生まれ、東京の公立小学校に3年間通った以外はニューヨークの学校で学びました。大学で知り合った日本人男性と結婚し、30年近くになります。卒業してすぐボストン コンサルティング グループ(BCG)に入社し、その後MBAを取得、以来20年間ニューヨークのBCGで働きながら子ども3人を育てました。2007年に帰国し、いま上の子2人はそれぞれアメリカとカナダで大学に、末の子は日本でアメリカンスクールに通っています。
●日本のダイバーシティーに思うこと
日本の男性は口では「ダイバーシティーが大切」と言いますが、「総論賛成、各論反対」のようなところがありますね。賛成はしますが、腰が重い。でも、100人の男性が100人とも変わる必要はありません。トップが真剣にアクションを起こしてくれればいい。「○年後に女性管理職○%」という数値目標も必要です。
ゴールドマン・サックス証券のキャシー松井氏は、日本の女性の就労率が男性並みになればGDPが最大で14%上昇すると推計しています。「女性の就業率が上がると出生率が下がる」と日本では考えがちですが、スウェーデンやアメリカなど女性の就業率が高い国は出生率も高い傾向があります。
今の日本に圧倒的に足りないのは働きながら無理なく子育てができる仕組みではないでしょうか。アメリカでは住み込みのベビーシッターが珍しくなく、私自身もそうした恵まれたサポートを受けて仕事をしてきました。ですが、同じことを日本でしようとすると非常に難しい。仕組みの面を考えると、子育ての期間の多くをアメリカで過ごせてよかったと思っています。
もちろん、アメリカで働く苦労もありました。「アジア系の女性」というハードルは確かにあります。また圧倒的に体の大きなアメリカ人男性の中で、いかに自分をアピールするか、を常に考えていました。第一印象の重要性を痛感し、何を着るか、話し方はどうか、声の出し方は……など自分なりに考えました。プレゼンのときなどは本当に何度も何度も練習し、練習のし過ぎで声が出なくなったほどでした(笑)。
●子育てが仕事に与えるメリット
子どもを持つか持たないかは、あくまで個人的な問題です。けれど、仕事をするうえで、子どもがいてよかったと思うことはたくさんあります。
まずは、仕事の効率がよくなったことです。子どもはいつ熱を出すかわからないし、3人いると必要な時間も3倍になりますから、"ワーク"部分の時間をどう増やすかをいつも考え、仕事は常時前倒しに進めていました。
また、3人の子どもは同じ親から生まれたにもかかわらず驚くほど違う人間で、彼らを育てるためのスキルはそれぞれ全く異なるものでした。この体験、一人ひとり違うという実感は、人を相手に仕事をするコンサルティングに非常に役立っています。
相手に響く言葉とはどういうものかも、子どもたちから学びました。これはチームメンバーなどへのフィードバックに役立っています。私たち女性はえてして自分を過小評価する傾向があるので、「本当はもっとできるはず」と、自分にも他人にも厳しくなりがちです。良い面のことは伝えず、改善点の話ばかりしてしまいます。でも「よくできたね」をまず伝えること、声のトーンに気を配り、同じ目線を意識し、その人にもっとも伝わりやすい言葉を探すことが大切です。余談ですが、私は金曜日の夕方にフィードバックするのは避けています。メンバーがすぐに対応しようとしても週末では手助けできませんので、週初めの方が良いのです。
私は仕事(ワーク)がとても好きです。けれど、ライフがあってこそのワークだということは確かです。みなさんもどうぞ、自分らしいワークライフ・ブレンドを追い求めてください。
<プロフィール>
ハーバード大学政治学部及び東アジア研究学部卒(Magna Cum Laude)、同大学経営学修士(MBA)。1984年BCG東京事務所入社後、20年間BCGニューヨーク事務所勤務。現在はBCGグローバルマーケティングのリーダーを務め、2013年12月よりエグゼクティブ・コミッティの一員としての責務も担う。 2005年Consulting Magazineの「The Top 25 Most Influential Consultants」に選ばれる。