J-Win7月度定例会が、2013年7月10日(水)17時から田町の女性就業支援センターにて行われました。今回の講師は、日本たばこ産業株式会社執行役員CSR担当でJ-Winエグゼクティブ・ネットワークの幹事長でもある永田亮子氏。「Lead the Self! 自分らしく輝き続けるために」というテーマでご講演いただきました。ご自身のキャリアの中での「4つのターニングポイント」を中心としたお話は非常に具体的でわかりやすく、ご講演後の質疑応答タイムでは「できるできない、ではなく、やるかやらないか」「正解を求めるのではなく、今できることをする」などの力強い言葉の数々が心に響いたという声が、多くの女性メンバーから寄せられました。
休憩後は、第4期分科会活動のキックオフとして、まず第4期幹事長の相原朋子さん(東日本電信電話株式会社)から分科会活動の進めかたについての説明があり、その後10の分科会に分かれました。各分科会では、担当幹事のサポートのもとテーマを議論し、リーダーを決めました。
最後は研修合宿の報告、海外研修・SWEのご案内、内永理事長の新刊のご案内、そして内永理事長の「男女共同参画社会づくり功労者内閣総理大臣賞」受賞の報告で閉会となりました。
※7月度定例会を企画運営した幹事メンバーは以下のとおりです。(敬称略)
相原朋子 (東日本電信電話株式会社)、高田麻里子(KDDI株式会社)、新庄浩子(エーザイ株式会社)、池田朋子(株式会社リクルートホールディングス)小林諭子(第一生命保険株式会社)、島津侑香(日本興亜損害保険株式会社)、遠山順子(株式会社三菱東京UFJ銀行)、藤本美幸(みずほ証券株式会社)、村上久乃(株式会社ベネッセコーポレーション)、吉田美和(あいおいニッセイ同和損害保険株式会社)
◆ここでは永田氏のご講演をダイジェストでご紹介します。◆
日本たばこ産業株式会社執行役員 CSR担当
JEN幹事長
永田亮子氏
日本たばこ産業株式会社(JT)の中核事業はたばこ事業ですが、医薬・飲料・加工食品事業も展開しています。私は主にたばこ事業部門以外の道を歩んできましたが今年6月にはCSR担当になり、新たなチャレンジを続けているところです。これまでのキャリアの中で大きなターニングポイントが4回ありました。ターニングポイントとは、その渦中にいる時には"自分はターニングポイントに立っている"とは気づきませんが、乗り越えた後に「あのときがあったから、今がある」とわかるものだと思っています。今日はその体験を中心にお話しします。
まず1つ目。1996年に、私はJTが設立したバーガーキングジャパン(株)で店舗従業員の教育訓練や店舗運営支援等を行うトレーニングマネジャーになりました。このときアメリカの会社であるバーガーキングのやり方を日本に取り入れなければならなかったのですが、日本サイドは「アメリカ方式は日本になじまない」と主張。一方のアメリカ本社は「なぜ言うことをきかない」と苛立ち、私は両者の間で板挟みになりました。悩んだ末、アメリカ方式のオペレーションを移植しつつ、日本式にアレンジすることを両者に提案し、説得。意見の対立を乗り越えると、信頼関係もできていました。衝突を恐れずにまずはやってみることが大切であること、そして、経験や知見は自分を支える拠り所にもなるけれど、変わらなければならないときには障壁にもなり得ることを学びました。
2つ目のターニングポイントは、1999年に食品事業部の商品統括部長になったときです。私にとって未経験の冷凍食品分野において商品企画及び開発の統括責任者を任され、いきなり約40人の部下を抱えることになりました。しかもほとんどが冷凍食品のプロで、年上の男性たちです。年下・未経験・女性上司ということで「お手並み拝見」という感じで迎えられましたが、一人ずつ腹を据えての面談を繰り返すことで、少しずつ扉が開いていきました。苦手意識のあった上司が実は私の成長を期待してくれていたことに気づき、見方を変えて接するようになりました。また、失敗については、同じ失敗を繰り返さないよう冷静に反省した上で、仕事の借りは仕事で返せばいいと考えられるようになりました。
3つ目は、2008年に食品事業本部の飲料事業部長に就任したときです。JTで女性初の執行役員になりました。それまで9年間、冷凍食品の分野で実績をあげていたので、異動は全く想定していませんでしたが、その居心地の良さが甘えになっていたのかもしれません。新しいチャレンジは想像を遥かに超えるものでした。事業のトップとして、顔も名前もわからない人も含め、約5,000人の部下を持つことになりましたが、目に見えないところまでカバーするのがリーダーシップなのだと実感しました。
そして4つ目は、CSRの担当役員になったつい最近です。これまでは事業部門に身を置く者として一円一銭を稼ぐ立場でしたが、今後は誠実な事業運営を推進し、得た利益でどのように社会へ貢献していくかを考える立場です。自分が取り組んできたことを一度全てリセットしなければならないという意味で、非常にチャレンジングな仕事だと感じているところです。
これらのターニングポイントを経ていま思うことは、役員はゴールではないということです。成長し続けなければ淘汰されます。
皆さんには「すごいリーダー」を目指してほしいと思います。それには当然、ある程度の能力が必要です。知識やスキル、特にコミュニケーションやプレゼンテーションの力は大事だと思います。また、人間力を磨くことも重要です。そのためには、興味や関心をもって部下や上司を観察することが有効です。J-Winなどで普通では会わない人たちと出会うことや社会に対する好奇心を持つことも、すべて人間力を高めることに繋がります。
そして、もう一つ、倫理観を持つことも大切です。「何をしてもいいわけではない」「道をはずれてはいけない」と自分を律することができるかどうかが優れたリーダーのポイントになると思っています。
最後に皆さんへのメッセージです。基礎体力を高めておいてください。挫けても最後は自分の意志で立ち上がる力を持つこと。「Lead the Self!」自分の生き方は自分で決めていかなければ何も動きません。ただし、すべてを完璧にこなそうとしないこと。子育てや介護など、人の手を借りられることは上手く使ってください。そして、自分の幅を更に広げていくために、ポジションをとることにもチャレンジしてください。立場が上になればなるほど責任は大きくなりますが、自由度も高まります。また、今の自分と「こうありたい自分」にギャップがあっても現在を否定しないこと。ありのままの自分を大好きでいてください。
これからキャリアを重ねていく中でいろいろなことがあります。そのようなときに自分を支える言葉を是非持ちましょう。私が自分を貫いていくための言葉は「夢抱くところに夢来る」です。
【永田亮子氏のプロフィール】
東京生まれ、東京育ち。1987年4月、日本たばこ産業株式会社に入社、関東営業本部にて営業事務の仕事につく。7月、医薬事業室にて健康関連商品(医薬部外品・健康食品)の商品企画。1991年10月、人事部にて採用を担当。1992年7月、フロリダ大学大学院に留学し、農業経済学修士(MS取得)。1994年8月、人事部にて能力開発・研修企画・運営。1996年6月、バーガーキングジャパン(株)に出向。トレーニングマネジャーとして店舗従業員の教育訓練及び店舗運営支援、マーケティングマネジャーとして日本オリジナルメニューの開発・販売促進施策の企画立案を担う。1999年10月、食品事業本部食品事業部商品統括部長。冷凍食品の商品企画・開発のトータルマネージメント。2008年6月、執行役員食品事業本部飲料事業部長。2010年、執行役員飲料事業部長。2013年6月、執行役員CSR担当。