J-Win6月度定例会が、2012年6月13日(水)17時から田町の女性就業支援センターにて行われました。今回の講師は日本大学芸術学部教授で、パフォーマンス学の第一人者である佐藤綾子氏。「今をエンジョイするためのリーダーシップのパフォーマンス」というテーマでご講演いただきました。「パフォーマンスとは、全身を使ってのコミュニケーション」と話される佐藤氏の講演は、とてもエネルギッシュでユーモアたっぷり。まさにパフォーマンスのお手本でした。ご講演後のQ&Aタイムでは、女性メンバーから挙がった質問・悩みに対して、アンガーコントロールのための「10カウント法」や「論理療法」、「論理行動療法」など実際に実践できるものについてもご紹介いただきました。
休憩中、佐藤氏が作成した「心理テスト」を行い、その結果をもとに自分の強みと弱みを認識し、2人1組でペアを組んでそれぞれがアドバイスをしあうというワークショップを行いました。当初の予定を変更し、佐藤氏はワークショップにも参加。壇上を降りて直接女性メンバーたちにアドバイスをくださいました。
最後は女性メンバーの各担当から7月の海外研修を中心に連絡事項の確認がありました。
ここでは佐藤氏のご講演をダイジェストでご紹介します。
※5月度定例会の実行委員メンバー
実行委員長:降旗浩美さん(みずほ証券)
実行委員 :羽生ひとみさん(リコー)、後藤 美穂さん(日本政策金融公庫)、榊原泉さん(トッパン・フォームズ)、渋田聡子さん(日産自動車)、川口惠さん(双日)、大江有希子さん(ダスキン)、中原千里さん(富士通)、津田江利子さん(日本アイ・ビー・エム)
日本大学藝術学部教授・社団法人パフォーマンス教育協会理事長 佐藤綾子氏
J-Win女性メンバーのみなさんはダイバーシティについて学ばれていると聞いていますが、私の専門分野であるパフォーマンス学とダイバーシティは深い関係にあります。ダイバーシティな社会はダイバーシティな自己表現を要求しますから、その視点から今日の講演を聴いていただきたいと思います。
そもそもパフォーマンス学とは、「よりよい自己表現を研究データを元に分析し、心理学や社会学、演劇学、スピーチコミュニケーション学の領域から基本となる考え方とスキルを提供する学問です。1979年、世界に先立ってニューヨーク大学にパフォーマンス研究学科が誕生しました。このニュースをキャッチした私はすぐに渡米して、その学科の第2期生になりました。
もちろん日本にはもともとパフォーマンスという概念はなく、帰国した私はこの概念を広めようと活動を始めましたが最初はなかなか浸透していきませんでした。その大きな理由は日本文化の構造が伝統的に「高コンテキスト文化」であることにあります。コンテキストは状況や雰囲気と訳されますが、高コンテキスト文化とは「言わぬが花」や「阿吽の呼吸」という日本に古くからある言葉に象徴されるように、あえて言語化せずに状況を読みあうことで情報が伝わる文化のことです。強い主張敬遠されるこの高コンテキスト文化のなかで、自分の実力を表現する、つまりパフォーマンスすることは難しいといわざるをえません。しかし今、国際化が進むなかで高コンテキストスタイルに甘んじていられなくなりました。低コンテキスト文化の欧米などでは「表現されない実力は、無いも同じである」と見なされてしまうのですから。
そこで女性が自己表現をしようと決心しても、まだダイバーシティが進んでいない日本企業のなかでは男性には受け入れられず反感を買ってしまうこともあります。ですから、これから女性がグローバルリーダーになるためには、①男性を敵にまわさないこと="ガラスの天井"対策をしておくこと、②専門力はもちろん、タフで柔軟性のある自己形成をする、③相手が自分に心を自然に開いてくれる自己表現を覚え、④基本の話法3点を習得すること、が大切です。
これらは決して難しいことではありません。具体的には、じつは男性よりも空気が読める高コンテキストな女性は普段はその特技を活用しつつ、必要に応じて自己表現をするという柔軟さを身に付けること。いつもニコニコして上機嫌であることはとくに女性にとって大切な自己表現です。上機嫌でいるのが無理だというなら、明るい色合いの服を着て、口角を上げ大きな歩幅で歩くだけでOK。これで上機嫌に見えてしまう、パフォーマンス学の真骨頂ともいえるテクニックです。さらに、人に必要とされる自分を形成するためには、テイク&テイクにならないように人に提供できる専門性を身につけることです。
④の基本の話法3点のテクニックもとても単純なことです。1点めは大切な言葉はリピートするということ、2点めは会話のなかで共通点を見出しながら話をすること。これを私たちたちはブリッジング(橋をかける)と読んでいます。そして3点めは、言語調整動作という専門的な言葉もあるのですが、ようはあいづちをうって相手の言葉を促すということです。私の友人の林文子横浜市長もテンプホールディングス株式会社の篠原欣子代表取締役社長も、いつもニコニコしていて、さらに「そうなの?」「そう!」というあいづち表現のバリエーションが豊富で、「そう」のたった2文字をたくみに使うことで、スタッフとより濃密なコミュニケーションをとっています。ぜひ、みなさんも明日から真似してほしいと思います。
仕事は自分の能力を最大限に引き出すための、いわばスポーツです。そして試練は能力を引き出してみなさんを宝石にするためのもの。明るく、楽しく、自他のためになる="ATT"で行こうではありませんか。
【佐藤綾子氏のプロフィール】
博士(パフォーマンス心理学)、日本大学芸術学部教授、社団法人パフォーマンス教育協会(国際パフォーマンス学会)理事長、株式会社国際パフォーマンス研究所代表、「佐藤綾子のパフォーマンス学講座®」主宰。長野県生まれ。信州大学教育学部、上智大学大学院文学研究科(MA取得)、ニューヨーク大学大学院パフォーマンス研究学科修士課程卒業 (MA取得)。上智大学大学院博士後期課程満期修了。立正大学大学院心理専攻(Ph.D.)。1980年、日本に初めて「日常生活における自己表現」の意味での社会学的用語として「パフォーマンス」の語を導入。自己表現教育の第一人者として、政・財・医学界に多くの支持者を持ち、首相、国会議員、知事、市長のスピーチ指導でも定評があり、名だたるトップリーダーから自己表現に悩む若手ビジネスパーソンまで、スピーチやプレゼンをはじめとする自己表現教育に情熱注ぎ、研修希望者がウエイティング中である。ビジネスと人間関係づくりのためのパフォーマンス研修は、「佐藤綾子のパフォーマンス学講座®」(SPIS)として19年の歴史を持ち、3200人の卒業生を社会に送り出し、そのサイエンスに基づいた確実な教え方には常に高い評価あり。日本人の自己表現能力養成の功績により、社会教育功労者賞受賞。テレビ出演(NHK「あさイチ」・テレビ東京「たけしのニッポンのミカタ!」他)、新聞取材(日経・産経・朝日・毎日 他)、雑誌連載(「日経ウーマン」・「プレジデント」・「企業家倶楽部」など9誌)他、多岐メディアにて活躍中。医療・政治・ビジネス・教育、各分野のパフォーマンス心理学の著書 全168冊。最新刊は『もう、名刺交換はするな。―必ず「仕事につなげる人脈」のつくり方』(フォレスト出版)。