2011年10月12日、田町にある女性就業支援センター(旧女性と仕事の未来館)4階ホールにて、10月度定例会が開催されました。
今回の定例会では、本格的に始動した女性メンバーの分科会活動をより円滑に進めていくために、各種コンサルティングをはじめ、
会議におけるファシリテーション技術の指導も行う株式会社日本能率協会コンサルティングのチーフ・コンサルタント佐伯 学氏に
ご講演いただきました。
第二部は、佐伯氏の講演を受けてのワーキングセッションとして、ファシリテーションの実践を行いました。
※ 今月の実行委員メンバー:寺本真紀さん(キャタピラージャパン)、手塚佐恵子さん(クリナップ)、
大木実和さん(ジェイティービー)、上田由紀さん(パナソニック)、小安美和さん(リクルート)、
田口紀子さん(三井住友銀行)、小川春美さん(三菱東京UFJ銀行)、小堀有子さん(ダスキン)、
大井美樹さん(フジタ)、佐藤隆子さん(日本アイ・ビー・エム)
株式会社日本能率協会コンサルティング チーフ・コンサルタント
佐伯学氏
ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)、つまり多様な人間性や文化背景を持つ人々が集まって、それぞれの個性を取り入れることで、イノベーションを起こす──J‐Win活動を通じて、女性メンバーであるみなさんが学んでいることではないでしょうか。
チームの活動方針が決まる、あるいはアイデアの交換がされる会議の場において、D&Iが発揮されれば、その成果は大変大きなものになります。
ところが実際には、それまでの仕組みに固執して「何にでも反対する人がいる」、「結論は結局上のポストの鶴の一声で決まる」、「限られた人の独壇場になる」といったことが起こる。あるいは女性や新人などは会議の場で萎縮してしまい、せっかく発言しても「話題が脱線する」、「要領を得ない発言をする」という印象を持たれたり。出席者全員が有意義だったと感じられ、目に見える成果があったという会議はなかなか実現しないという相談をよく受けます。こういった事柄を防ぐ、 あるいは解決するために「ファシリテーション技術」は大変に有効です。
ファシリテーションとは、簡潔にまとめれば「参加者の主体性を促し、参加者それぞれの経験や専門分野を尊重しながら、アイデアや意見を最大限にひきだし、限られた時間の中でその場の目的達成を促進する働き」と言うことができます。これがうまく行きますと、議論の効率化、ダイバーシティの推進、 主体性の向上、メンバー同士の信頼度の増大といった効果も期待できます。そして、この一連の流れを整理して行うのが、ファシリテーターです。ファシリテーターはただの司会進行役ではありませんし、リーダーとイコールでもありません。むしろ明らかに職位の高いリーダーは、発言に影響を与えてしまいますから、陰のファシリテーターとして見守る立場にあるほうがいいでしょう。
さて、私たち日本能率協会コンサルティングではファシリテーションの基本スキルを次の3点にまとめています。
また、ファシリテーターが意識すべき、メンバーから意見やアイデアを十分に引き出すためのコツとして、①発言者の話をよく聞く、 ②発言者の思考が活性化するような質問を多用する、③刺激となる情報をタイミングよく提供する、 ④小グループに分かれて議論する場を作る、⑤書くことを活用する、⑥メンバー同士の物理的な距離を縮める、 ⑦同質なメンバーばかりでなく異質なメンバーも意識的に交える、といったことも是非取り入れていただきたいと思います。
ここで、J‐Win女性メンバーのみなさんも活用されているSNSでの議論をより有効なものにするためのヒントに話題を進めていきましょう。
相手の顔や反応が見られない分、デリケートにスタートさせたほうがトラブルは少なくて済みます。ゆるやかに、そして積極的に自己紹介し相手との共通点を見つける、そして読むこと、コメントすることを強要せず、読んでくれたりコメントをくれたりしたことには感謝の気持ちを必ず明言する、ここから始めてみてください。
そして、SNSでの議論をよりクリエイティブなものにしたいなら、とくにポジティブなメッセージを送ることを心がけ、参加メンバーの発言を促しましょう。反論や揚げ足取りはしないこと。特定の発言者がフリーズワード(ネガティブな言葉)を浴びせられた時は、ファシリテーターは「あえて~ということをひとつの意見として提案してくださったのですね」と客観的に位置づけることが重要です。
そして、SNSでの議論は、「意見やアイデアの発散」には向いていますが、それらを収束させることは難しいこと、抽象論は誤解を生みやすく端的な「結論」が求められること、議論の流れができると後戻りが難しく、「期限」を決めないと前進しにくい、という特性があることも覚えておきましょう。ですから、ファシリテーターの役割は重要で、期限の設定や具体的なテーマの絞り込みを行い、主導権をしっかり握って進行を行い、抽象的な発言は、具体的な言葉に直し、意見の収束もファシリテーターが行うとスムーズです。
また、議論を始める前に、グランドルールを作っておくことも大切です。「最低一度は意見を言う」、「人の意見は尊重する」、「発言がない場合は、無視でははく賛成とみなして、前に進める」など。
最後に、ファシリテーションは筋トレと同じで、経験すればするほど力がついていきます。ですから、経験が浅い人は遠慮するのではなく、失敗を恐れず積極的に挑戦してみてください。そして、ファシリテーションを知っているメンバーが多いほど、議論の進行はスムーズになりますから、メンバー全員が持ち回りでファシリテーターを経験するといいでしょう。
【佐伯学氏のプロフィール】
(経歴)
1987年3月、明治大学商学部商学科(経営学・マーケティング専攻)卒業。オリックス株式会社に入社し、 審査部、営業本部を経て、1991年1月、株式会社日本能率協会コンサルティング入社。1997年4月よりチーフ・コンサルタント。
(主要領域)
営業競争力強化、マーケティング、戦略マネジメント、リーダーシップ開発、情報系システム構築、 コンタクトセンター、公共マネジメント、ホワイトカラー生産性革新、経営幹部養成、次世代リーダー養成、 メンター養成、トレーナー養成、プレゼンテーション、ファシリテーションの領域で、コンサルティング、 研修、講演、執筆、コーチング、研究活動を行う。
(資格等)
日本のコンサルティング業界でもっとも権威のある社団法人全国能率連盟主催、 第48回全国能率大会論文発表で最高の通商産業大臣賞受賞。 全日本能率連盟認定マスター・マネジメント・コンサルタント(認定番号:J-MCMC20020)。 国際機構ICMCIによる国際資格称号CMC(国際ライセンス:CMC20039)。 CTIジャパン(the Coaching Institute Japan)のコーアクティブ・コーチング応用コース修了。