2011年9月14日、田町にある女性就業支援センター(旧女性と仕事の未来館)4階ホールにて、9月度定例会が開催されました。
内容は2部で構成されており、第一部は、在福岡オーストラリア総領事館・総領事/トレード・コミッショナーの
ウェンディ・ホルデンソン氏の講演。テーマは「グローバルビジネスでの女性の活躍」。冒頭、オーストラリアの
バンクスメドー小学校から東日本大震災の被災地に向けて製作されたメッセージVTRを紹介いただきました。
第二部は、「分科会スタートしました!私達の今後の活動、宣言します!」と題して、分科会による発表が行われました。
ここでは、第一部講演の内容をダイジェストでご紹介します。
※9月度より、定例会の準備・進行すべてを女性メンバーが行う、実行委員制がスタート。
メンバーは、浦早苗さん(KDDI)、吉村明子さん(エーオン ベンフィールド ジャパン)、
後藤亜美さん(プルデンシャル生命保険)、中田美樹さん(日本政策金融公庫)、福村由利さん(東日本旅客鉄道)、
外狩麻子さん(東日本旅客鉄道)、小杉乃里子さん(日本モレックス)。
在福岡オーストラリア総領事館・総領事/トレード・コミッショナー
ウェンディ・ホルデンソン氏
オーストラリア首相も連邦ガバナーも女性ということもあって、オーストラリアは多くのワーキング・ウーマンが活躍している国という印象を持っている人は多いようです。たしかに、おもに中小企業ではありますが、現在オーストラリアでは、3分の1に近い企業が女性経営者によって経営されており、さらに女性経営者は増え続けています。しかも、女性が経営する企業は、経営状態が良く、急速に業績も伸びています。またオーストラリアの大手銀行、バンク・ウエストにより、新しく事業を起こし成功した男性の数は、この5年間で1・9%の上昇率だったのに対して、女性は7%の上昇率だったという報告がされています。
このように躍進・成功をしている女性たちを分析しますと、女性は男性に比べ、「リスクに対して安全な選択を行う」ということと、「つねに自分自身はもちろんスタッフのワークライフバランスを意識したうえで難しいディシジョンメイキングを実行する」というリーダーシップ・スタイルの特徴が見られます。
一方で、大企業まで広げますと、シニアマネジメントを行う女性はたった8%で、企業全体の45%は管理職さえおりません。2011年8月の時点では、オーストラリア上場企業上位200社のうち、女性が取締役会メンバーに入っていない企業は36%もあります。これは大変に惜しいことです。先ほどの自分で起業をした女性経営者に見られるポイントのほかにも、女性は、幅広い観点や数々の仕事を同時に行う能力に長け、部下や上司などに対してつねに気遣いをし、高い管理能力を持ち、細部にわたる配慮をします。こういった能力が発揮されれば、高いビジネス成果を挙げることができます。ですから、もっと多くの女性に能力を発揮するチャンスを提供するべきで、それが企業の成長につながることなのです。
実際、オーストラリアのある企業では株主の女性たちの企業イメージをアップさせるために、女性取締役の存在をアピールたり、最近では世界最大の鉱山会社であるBHPビリトン社で女性が取締役として任命されました。つまり女性の活用は、企業の生産性だけでなく、革新性・社会性も高めるのです。
このような背景があり、女性が自宅や地方で仕事をすることを支援するための施策が、経済界でも活発に議論されています。政府でも、女性の活躍が国家経済の成長を促すものと考え、そのための政策作りを優先事項として取り組んでいます。その一つが2011年1月1日にスタートした「有給育児休暇制度」の導入です。2011年1月1日以降に出生または養子縁組した子供の働く親が対象で、雇用者が手続きをし、全国最低賃金相当額(現在税込週給570ドル)の公費支給を18週間受けることが可能です。その他にも、自宅就労者のための国内ブロードバンドネットワークのインフラ整備強化、スキルアップ支援政策も行い、女性の社会参加を総合的に支援しています。
このことをお話すると驚かれることが多いのですが、私のオフィスの駐在員は半分が女性で、家族で日本に移り住み、そのほとんどの家庭において夫が主夫業をしています。これは、オーストラリアでは決して珍しいことではありません。
さて最後に、グローバル・リーダーを目指すJ-Win女性メンバーのみなさんに、外国人とのコミュニケーションをスムーズにするコツをお教えしたいと思います。私は総領事として日本駐在を命じられた時、日本人との会話について指導されました。それは「すぐに回答を求めず、少々待つ」ということです。つまり、外国人にとって日本人のみなさんの会話は、ゆっくりとしたペースだと感じられていることを知っておいたほうがいいでしょう。そして、「それならば素早く話さなくては」と思わずに、最初に「日本人の会話はゆっくりペースなので、どうぞ宜しく」と伝えらたらベターですね。また、仕事をする相手の文化を、できれば同じ国の人から予めレクチャーを受けてしっかりと準備できれば、ベストです。
それから、会話にユーモアをはさむ、私自身もこれを意識して行っています。ユーモアをはさめるということは、どの国の人に対しても、自分に余裕があることのアピールになり、ざっくばらんでおおらかな印象を与えることができます。他に私が意識していることは、明るい色の服を着て、良い印象を残すように心がけることです。印象を残すということでは、仕事でお会いした方には、すぐにお礼状を書くということも行っています。文頭にはパーソナルな文章を添えます。
約束したことは必ず行うことも、外国人に対しては重要です。日本人は挨拶として「今度、遊びに来てください」と言うことがありますが、私たちは言葉通りに受けとりますから、どうぞご注意くださいね。広く深いネットワークは、キャリアを重ねていくうえで、必ず役立ちます。こういったことを頭の隅にとどめておいていただき、国外のネットワークもぜひ積極的に築いていってください。
【ウェンディ・ホルデンソン氏のPROFILE】
現在、福岡にてオーストラリア貿易促進庁トレード・コミッショナーとして、九州・沖縄・山口エリアの貿易投資促進業務を担当している。バイオテクノロジー、ICT, 最先端製造技術という、3つの分野において、オーストラリアのイノベーション技術の導入に力を入れている。
キャノン株式会社のマーケティング・コミュニケーション部門でキャリアをスタートさせたのち、三井物産オーストラリアのビジネス・ディベロップメント部門で日本輸出向けテクノロジーの開拓・査定に携わる。1990年代半ばには大阪オーストラリア総領事館に勤務し、海洋・マリン産業の商材を取り扱う。
マーケティング活動を通じて、アジア太平洋地域のエンジニアリング、エネルギー分野においても豊富な経験を持つ。これらの経験は現在、再生可能エネルギー、インフラ・サービス産業においての貿易・投資促進業務に大きく貢献している。
グローバル・ビジネスにおける女性の役割についても広く活動を行っており、2011年7月にオーストラリア主要7都市で行われたWoman in Global Business Seminarにはオーストラリア貿易促進庁を代表してスピーカーとして参加した。