J-Win10月度定例会議が、10月20日、TAC株式会社 渋谷校301教室にて開催されました。今回は、内永理事長の推薦により、株式会社コーセーにて35年間、美容研究等に携わり同社初の女性取締役を務められ、退職後は、「美・ファイン研究所」を初め、化粧品の開発やメイクアップスクールを開校するなど、起業家としても成功を収められた小林照子氏にご講演いただきました。Topを目指すためのイメージメイキング、女性の心身の健康を維持するための美容術についてお話をいただきました。
「『外見の輝き』は心の輝きを創り、人生を好転させる原動力となる」
美容研究家
株式会社 美・ファイン研究所 所長
株式会社フロムハンド代表取締役社長
[フロムハンド] メイクアップアカデミー校長
青山ビューティ学院高等部校長
小林照子氏
日本人は標準的な顔を好む傾向があります。東京大学の原島教授は、何百人という日本人の顔をコンピューターで重ねて合わせて、日本人の平均的な顔を割り出したことでよく知られているのですが、実際に多くのモニターを募りその標準顔を見てもらうと、ほとんどのモニターが「美しい顔」として認知したそうです。それぞれ個性があるのに、この標準顔に近づけるようにメイクする、ラインを作るとそれを喜んで受け入れる傾向があります。
日本女性のこのような傾向を、私はどちらかというと残念に感じています。私はニューヨークが大好きなのですが、それはあの街には顔はもちろん、自分の個性を主張する人があふれていて、そういった人々が放つ輝きが街全体のエネルギーになっているからです。
今、日本でも自分の個性を活かし自分をアピールして仕事をしよう、そういう意識を持っている人が、とくに女性に増えています。けれども、自分の個性を輝かせようと考える時、日本人はとくに精神面を磨くことで輝こうとしているように感じます。子供の頃から、両親や学校の先生から、「人間は中身だ」と教えられてきた人も多いことでしょう。たしかに精神面、つまり内面の輝きは大切。しかし、残念なのは、内面の輝きというのはなかなか他人に分かってもらえないということです。
一方で外見の印象というのは、初対面のたった数秒で「この人はこういう人(にちがいない)」と他人のなかに刷り込まれてしまう、このような専門家による研究結果があります。しかも、一度刷り込まれた印象を覆すのはとても難しいものです。
それならば、より良い印象、しかも「私はこういう人間だと思われたい」という印象を与える外見を創るほうが、効率がいいと思いませんか。外見を先に輝かせて、その輝きに内面の輝きを追いつかせていく、私はこの方法をおすすめしています。実際に、あるご縁で「一太郎」というソフトの開発で知られるフューチャー・アーキテクトの創立者、現在は会長をされている男性の髪型や服装のコーディネイトと、さらにその社員の方々の身だしなみ指導もさせていただいたことがあります。
ITのしかもベンチャー企業にお勤めの男性というと、中身は優秀でも、他企業に営業や打ち合わせで行く時にどのような服装をしていっていいのかわからない、あるいは自分なりのポリシーがありすぎて個性的な服装をしてしまう人が多いようです。けれどもやはり服装が決まっていないと、どうしても相手に見下されてしまいます。私は、その方に「侍のように颯爽と見える」印象を創りました。彼はそれを大変に気に入ってくれて、以後しばらくは私が提案したスタイルをワードローブにしていました。彼の大躍進は、この印象を変えた後から始まったのです。
さらに、川口順子さんがまだサントリーの役員をされていた頃、NHK教育の「視点 論点」という本人の顔だけが30分写る番組に出られることになり、私はメイクをさせていただいたのです。ナチュラルメイクですが、眉をスッと整えて肌を艶やかにして、彼女らしい清潔感がでるように意識しました。すると川口さんは「きれいにしてもらったおかげで、凛として自分らしく話すことができました」とおっしゃっていました。彼女は頭のいい人ですから、私のメイク術をすぐに覚えて、それを日々活かしてくださるようになりました。彼女が大臣になったのは、そのすぐ後でした。
遠い例ではなかなか実感が起こりにくいと思いますので、本日はJ-Winメンバーの方のお顔を拝見しながら、外見の印象の大切さをさらにお話ししていきましょう。さて、自らモデルに志願してくださった中山さん。とてもかわいらしい、いわゆる童顔ですね。若々しく見えるだけでなく、少年のような印象があります。すると、周囲の人はとても親しみを持って、特に年齢が高い人ほど可愛がってくれますが、同時に仕事を頼みやすい、そんな風に感じているはずです。「きっとフットワークが軽くて、急な用事もサッとこなしてくれるだろう」と思っているのです。ですから、スピードが必要な仕事をたくさんこなさなくてはならず、中山さんはそれができる人に成長しているはずです。
けれども実際の年齢は35才。もうそろそろ責任のある腰をすえてかからねばならないような仕事をしたいと、思ってくる頃でしょう。ではどうしたらいいのか。中山さんの鼻は鼻筋が通っています。高い鼻は、誇り高さを人に感じさせますから、その鼻筋を際だたせてあげればいいのです。そのために、眉頭から眉墨をひき、眉をきれいなアーチ状にしてあげます。そして、髪を耳にかけて頬骨の輪郭を見せる、これだけで大人っぽい印象に変わります。
次にご紹介する山田さんのお顔ですが、こちらは大人の顔です。行動力や野性味、生命力や生活力、積極性とバイタリティのあるお顔です。生命力や積極性を感じさせる顔というのは、目から下の顔半分が発達しています。鼻が長く、頬骨やあご、えらも発達しています。このような人は、少女の頃から年上に見られていたので、性格も自然に大人っぽくなって、人に頼られ、それに答えてきたはずです。ただし、顔の下にボリュームが集まりすぎるとお人よしに見られてしまうので、髪形を思い切りショートにして頭のほうにもボリュームを持たせてバランスをとるといいでしょう。大人っぽいうえにとても上品な印象が加わります。
最後にもう1つ、みなさんへのアドバイスです。皮膚と脳は密接につながっています。ですから、例えばうまくいかないことがあった日こそ、顔のマッサージをしてあげてください。マッサージというと面倒に感じるかもしれませんが、夜、メイクを落とす際に親指の第一関節より上くらいの分量のクレンジングクリームを使ってマッサージしながら汚れを落とせば十分です。そして、肌にそっと触れながら「今日もがんばったね。ありがとう」と声をかけてあげてください。
肌は愛情を注がれると必ずそれに答えてくれます。そして、脳からストレスを追い出して、免疫力すらアップさせてくれます。その例として、このような人がいました。私がメイクをしたことがきかっけでメイクを始めとした美容術、もちろんスキンケアにも目覚め、59才で私のメイク学校に入って勉強し、60代で私の下で働き始めた女性です。じつは彼女は、肺の病気を患っていて、主治医から余命宣告を受けていました。家族は本人には知らせずにいて、残りの時間、せめて好きなことをさせようと、メイク学校に入学することを勧めたのだそうです。そして、彼女は69才で亡くなったのですが、亡くなる直前まで元気にメイクの仕事をしていましたし、「ほとんど肺の組織が生きていないのに、なぜ、こんなに長く生きられたのか」と主治医が驚いていたと、後から聞きました。
J-Winメンバーのみなさんは、これから企業や社会で先頭に立って活躍する女性リーダーになって行くわけですから、健康であること、そして自分らしい魅力を放って多くの人といい関係を築き、成功を引き寄せることが大切です。ですから、元気が出ないときはまず自分の肌を慈しんでみる。小さなことのように聞こえるかもしれませんが、行ってみると効果を実感できると思いますので、この知識を生涯の友にしていただきたいと思います。
【小林照子氏のPROFILE】
1935年生まれ。(株)コーセーにおいて長年にわたり美容について研究し、その人らしさを生かした「ナチュラルメイク」を創出。そのコンセプトに基づき、教育・商品開発に取組み多くのヒット商品を生み出す。メイクアップアーティストとして、広告・ショー・テレビ・舞台など、女優から一般の女性まで何万人ものイメージづくりを手がける。どんな人でもきれいに明るくすることから「魔法の手」を持つと評される。(株)コーセー取締役・総合美容研究所所長を退任後、独立。「美」と「輝く魅力」をテーマとした(株)美・ファイン研究所を1991年設立。独自の理論で開発した「ハッピーメイク」はマスコミの話題となり、サロンスクール、アドバイザリーコースを開講、個人のためのイメージメイキング、修了者によるハッピーメイクネットワークの会も組織している。また、[フロムハンド]では、トータルビューティの本格的プロを養成、数多くの卒業生を世に送り出している。また2010年よりビューティの基本に特化した高校「青山ビューティ学院高等部」を設立。
現在は、あらゆるビューティビジネスに向けてのプランニング、コンサルティング、社員研修の他、死化粧の理解を深めるエンゼルメイク研究会の副会長、メイクアップを軸に社会貢献を目指すジャパンメイクアップアーティストネットワーク(JMAN)の理事、医療と美容と心理学の面から人の外見が与える影響を考え障害を持つ人の社会復帰のあり方を研究する医美心研究会の世話人として様々な活動を意欲的に行っている。また、メイクアップアーティストとして、全身にメイクアップを施す「からだ化粧」でも世界的に高い評価を受けている。
著者は、「おうちで簡単アンチエイジング・ケア」(成美堂出版)、「ザ・ベストメイキャップ」(講談社)、「ザ・ベストメイキャップ 英語版」(講談社)、「自分の『本当の魅力』に出会う本」(大和書房)、「知性メイクが女を変える」(KKベストセラーズ)、「仕事も恋もメイクで変わる」(大和出版)、「50歳からのメイク」(日経事業出版社)、「メイクの新『基本』テクニック」(旬報社)、「小林照子のハッピーメイク」(日本文芸社)、「メイキャップアーティスト小林照子」(理論社)、「『温ケア&冷ケア』で肌は必ずキレイになる」(青春出版社)、「基礎からわかる!メイクアップのすべて」(美・ファイン研究所)、「スカルプケア・デトックス」(青春出版社)、「美容の極意」(扶桑社)、写真集「森羅 からだ化粧」(美術出版社)、写真集「からだ化粧」(日本芸術出版社)、写真集「素肌化粧『水の精』(光村推古書院)など多数。