J-Win9月度定例会が9月15日、東京・大手町のみずほ証券株式会社の本社会議室で開催されました。今月の講師は、著書『不機嫌な職場』や『フリーライダー』が各方面で高い評価を得ている、主に人事戦略・教育研修のコンサルタントとして活躍する河合太介氏。職場のモチベーションを高める真のリーダーシップについてお話いただきました。
「人としてのリーダーシップ」
株式会社 道 代表取締役社長
早稲田大学大学院商学研究科非常勤講師
多摩大学経営情報学部非常勤講師
河合太介氏
採用されたばかりの頃は、いわゆる"血統書付き"だったはずの新入社員が、時が過ぎ、ハッと気付いてみたら珍獣に変わっていた。言葉は悪いですが、思い当たる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
珍獣にも色々な種類がありますが、特に厄介なカテゴリーを私は「タダ乗り族(フリーライダー)」と名づけ、警戒を呼びかけています。タダ乗り族は、「アガリ型」…いっちょうあがりのベテラン社員、「暗黒フォース型」…できない理由を見つけることが得意な社員、「アイデア盗用型」…他人のアイデアを平気で盗む社員、「クラッシャー型」…人の感情を逆なでする発言をし自分がされたら逆ギレをする、自分の実力が分かっていない社員、などがいます。
このような社員が職場に誕生してしまうのを防ぐ方法と、たとえタダ乗り族たちと同じ職場に居合わせてしまっても、誠実にやる気をもって仕事をしているメンバーが日々「努力が報われている」と感じてもらうための具体策、そしてタダ乗り族をもとのチームメンバーに戻す方法は、ほぼ同じであると言うことができます。このあたりの詳細は、拙著『フリーライダー』(講談社)に記載していますので、ご興味がありましたらどうぞ読んでみてください。
もちろん、それはリーダーの手腕が大きく影響します。職場のモチベーションを高め、組織の連帯感を作るのは、リーダーの役目だからです。
そもそもリーダーシップとは、まったく違う力を持つ人々をつなぎ合わせて、組織を作ることを言いますが、どうしたら身につき、また深め高めて本物のリーダーシップへと育てることができるのでしょうか。これは私の持論ですが、本物のリーダーシップとは、「振り向けばついてくる人たちがいる」ということ、つまり、性別や国籍も関係なく信頼ができて、チャーミングであるこということだと考えています。
そして、そのようなチャーミングリーダーを数多く取材して分かった、チャーミングリーダーの基本条件は、"効力感"を与えられる人である、ということです。効力感とは、自分が行ったことに対して、何かしらの手ごたえ、さらに言えば存在感を感じることです。これが欠けている環境に置かれ続けた人間は、「その環境から自分など消えてしまえばいい」あるいは「そんな環境は、消えてなくなればいい」という、非常にネガティブな発想を持つ危険性が高まります。しかも、その発想は大変に大きな負のパワーとなり、組織全体を蝕むものです。ですから、リーダーは、つねに「自分は効力感を与えられているか」という視点で、自分自身を見つめることが重要なのです。
職場に効力感を与えるために行うべきことは、じつは単純なことです。感謝の気持ちを「ありがとう」という言葉にして、こまめに表現することと、ひとりひとりの個性と長所を見つけ、認めて、その能力にあった仕事を与えることです。これによってすべての人間が主役である職場が実現します。
具体的には、職場に限らず「ありがとう」がすぐに口から出るように、できるだけ多く言って口の筋肉を慣れさせたり、「感謝日記」を書いて、人や自分に対しての肯定感情を強める。また、職場のメンバーと面と向ったコミュニケーションを取り、時には相手が本音で話せるように自分を"見える化"する、つまり腹を割って話すといったことが効果を奏します。
「そんなことで」と思うかもしれませんが、日本の職場の多くは「やって当たり前」の空気が蔓延しています。その空気を吸っている自分、その空気に不満があったけれども乗り越えてきた自分も「やって当たり前」の感覚は染み付いていないでしょうか。こういったことにリーダーのひとりひとりが目を向けることで、J-Winが目指す、ダイバーシティ&インクルージョン化された組織、企業がさらに増えていくはずです。
【河合太介氏のプロフィール】
株式会社道(タオ))代表取締役社長。早稲田大学大学院 商学研究科 非常勤講師、多摩大学 経営情報学部 非常勤講師。
成長、変革、戦略推進のための組織人事を専門とし、現在特に中心とするテーマはリーダーシップとチーム力と職場コミュニケーション。
その他、事業プロデューサーとして実務の戦略、マーケティングにも明るい(事例:スイーツマジック http://www.kando-keiei.com)。
金融系総合研究所、外資系コンサルティングファーム経て現在に至る。代表的な著作に26万部超のベストセラーになった
『不機嫌な職場』(講談社)をはじめ、ケビン・D・ワンのペンネームで10万部超のベストセラーとなった『ニワトリを殺すな』(幻冬舎)、
『サバイバル脳』、『Answer アンサー 『転覆の時代』を乗り越える職場』(ともに経済界)。
最新刊は『フリーライダー~あなたの隣のタダ乗り社員』(講談社)。