「想いを言葉にするチカラ ~表現力・コミュニケーション力養成!ワークショップ~」
文章表現・コミュニケーションインストラクター
山田ズーニー氏
「宇宙人発見のニュース、あなたは何で(どの媒体で)言われたら信じますか?」
ズーニー氏のこのひと言から、まずガイダンスがスタートしました。「何で言われたら」──その選択肢としてスポーツ新聞、インターネット上、テレビのお笑い番組でのニュース速報、NHKの『7時のニュース』、日本経済新聞の号外が挙げられ、会場で多くの挙手があったのは、NHKと日経新聞でした。このことからズーニー氏は問いかけます。「まったく同じことを言っているのに、なぜ私たちは信じたり信じなかったりするのでしょうか。このことから分かるのは、人に自分の話を聞いてもらいたいなら"メディア力"、つまり自分の信頼性を高めることが重要だということです」。
このメディア力を含めて、それぞれ身近に感じられるシチェーションと、数種類のメディア(手紙・メール・志望動機書)での例を挙げながら、人に通じるための要件をズーニー氏は7つのポイントとして挙げました。
①自分にメディア力があるか、②最も言いたいことは何か、③言っていることに論拠はあるのか、④どのような結果に結びつけたいのか、⑤自分の根っこにある想いは何か、⑥自分の問題意識はどこに向かっているのか、⑦相手の立場から見たら、その話は何なのか?
この中でも最も大切なものは⑤、小論文用語でいう「根本思想」だとズーニー氏は言います。「心が温かい人が言うと、"馬鹿"という言葉さえも温かく感じます。何を言おうとも根本的な想いは相手に隠しようがなく伝わってしまうものです。同時に、自分の根っこに通じている人、自分が本当に言いたいことが分かっている人の意見に対して、人は耳を傾けますし、その話は相手の心を動かす不思議な力があります。自分が自分に通じること、自分の深部につながるためには、『考える』という作業が必要。そこで『考える方法』を身につけるのが、今回のワークショップの目的です」
そして約1時間30分のワークショップが始まりました。ゴールは、最初に設定されました。「人にどう思われてもいい、自分が本当に思っていることが話せたという満足感を持つこと」です。
考えるテーマは「自分という人間」。それをつかむために、2人一組になってお互いに30分間のインタビューを行い、考える手助けをします。「知らない人同士で行ほうが効果的」とのことなので、ほとんどのメンバーが初めて言葉を交わす相手に、自分について語るという状況に。それでも、「スタート」の声とともに、広い会場がメンバーの話し声でいっぱいになりました。誰もが活き活きと語り、聞く側は真剣に受け止めました。
ズーニー氏が用意したインタビューの質問内容は、過去・現在・未来という時間軸と、自分の周囲・社会・世界という空間軸によって多面的に構成されています。質問に答えながら、そして質問をして返ってくる相手の言葉が自分の中に響き、相乗効果となって自分という人間の本質へとせまっていきます。
約30分の間に自分が話した言葉を振り返ってみると、よく知っているはずなのに不思議に新鮮な自分の姿を表現していました。
最後は、その言葉を使って4人1組で「自己紹介」をしあうワークを行いました。
どの自己紹介にも、思わず聞き入ってしまう共感する部分と、ハッとするような個性、そして発見もありました。「自分に通じている人の話は、相手の心を動かす不思議な力があります」。ズーニー氏は先にそう指摘していますが、女性メンバーの多くも実感したのではないでしょうか、誰もが清々しい表情をしていました。
大変に貴重な体験と楽しい時間を、その場にいた全員で共有することができました。
(記・J-Win事務局広報部)
【山田ズーニー氏プロフィール】
1961年、岡山県生まれ。
1984年、ベネッセコーポレーション入社後、進研ゼミ小論文編集長として、高校生の考える力・書く力の育成に尽力する。
2000年独立。フリーランスとして、執筆、講演、高校・大学での授業、社会人への研修、ワークショップなどを通して、文章表現力・思考力・コミュニケーション力の教育に取り組んでいる。
2005年、NHK教育テレビ「日本語なるほど塾」講師。
2006年、朝日新聞教育プロジェクト「オーサービジット」参加。
2007年より慶應大学湘南藤沢キャンパスにて「ライティング技法ワークショップ」「プレゼンテーション技法」の2コマを開講中。
著書は『伝わる・揺さぶる!文章を書く』(PHP新書)、『あなたの話はなぜ「通じない」のか』(筑摩書房)、『考えるシート』(講談社)など多数。インターネット『ほぼ日刊イトイ新聞』にて「おとなの小論文教室。」(http://www.1101.com/essay) 連載中。ラジオポッドキャスティング「おとなの進路教室。」(http://www.jfn.co.jp/otona/) 放送中。
※「ズーニー」はインドのカシミール語で"月"という意味