「J-Win Executiveネットワーク9月度定例会」を、2020年9月16日(水)にオンラインで開催し、44名のメンバーが参加しました。今回の講演はカナダ大使館との連携を得て、カナダと同時中継で行われました。

【アジェンダ】
■ 新メンバー紹介
■ 7月度定例会振り返り／連絡事項
■ ご講演 「カナダにおける経済成長と進歩の推進力としてのジェンダー平等」　
　　Tanya van Biesen (ターニャ・ファン・ビーセン)氏　
■ 質疑応答　モデレータ：　カナダ・アジア太平洋財団　副理事長　クリスティン・ナカムラ氏
■ オンライン懇親会


(＊肩書き等は講演当時のものです。)

●ビジネスそしてNPOの世界においてリーダーシップを担うまでのライフストーリー
●女性をリーダーシップに導き、機能的で包括的な企業文化やシステムを構築するために
　　J-Win Executiveネットワークのみなさまへお伝えしたいこと～カナダの
　　状況とそこから日本が学べること～
●社会の変化と女性活躍推進への影響（懸念）
●必要なのはリーダーの意思


～講演後の質疑応答より～
　　モデレータ：　カナダ・アジア太平洋財団　副理事長　クリスティン・ナカムラ氏
Q：　コロナのパンデミックにおいて、カナダが女性を支援し、女性活躍推進の歩みが後退しないためにどのような対策や措置をとったのか。
A：　"She-cession"と呼んでいるが、女性が不釣り合いに影響を受けないように、経済の回復の中でいかに女性が回復できるか、回復となったときに政府は州レベルでも連邦レベルでもどうしたら女性を回復できるか、再建できるかを考えている。数学的にコロナ前の経済レベルに戻るためには女性がすべて職場に戻ることが必要で、女性も戻ってもらわなくてはいけない。ただ、女性が戻るだけではなく、この機会を通じて、その仕事の状態を引き上げていかなくてはならない。多くの女性が、最初に経済危機があったら解雇されるような脆弱な立場にある。保育や学校再開で苦戦しており、いまの状況では女性が強制的に辞めさせられてしまう。保育のオプションがなく、子供を預けるところがないから辞めざるを得ない。こどもがオンライン学習環境で親のサポートが必要なため在宅するしかなく、女性が辞めるしかない。女性の30%が仕事を辞めることをパンデミック中に考えていた一方で、男性は20%弱という調査結果がある。
現在、いくつか考えていることがある。まずは、思いやりのケア。政府が国境を開いて「思いやりのケア」をできることを考えている。祖父母やおじ・おばがカナダに来てくれるのであれば、国境を開いてそういう人たちに来てもらえるようにする。
まだ行動には移していないが議論しているものとしては、アクセス性の高い、より安価な保育施設を全国で設けること。実現するかわからないが、国として討議をしているものとして、普遍的な基礎賃金、基礎所得を設ける。児童保育の費用を捻出できるようにする。通常は家計か保育かの二者択一となってしまう。カナダでも女性の活躍の30年分の進捗が失われるリスクがある。これは女性だけではなく、カナダの経済としても危機である。

Q：　テレワーク、在宅勤務、リモートワークができることは特権でもあるが、コミュニケーションの仕方がそれによって変わってきた。コミュニケーションをいかに効果的にとることができるのか、人事評価をどう行うかについてアドバイスはあるか。
A：　多くの人がテレワークできること自体が恵まれている。実際に物理的に職場に行かなくてはいけない人がいる。これは女性にとって機会にもなるが、「目に見えなくなると忘れられてしまう」という言葉がある。女性の育成や昇格を考えなくなるということがある。コロナの環境で評価の仕方を変える必要があり、女性にとっては戦いの場が同じになったという機会が生まれている。一方で、マイナス面としては、女性は家事の負担を負っており、祖父母のケア、掃除、買い物などが在宅勤務をしている女性にかかってくる。女性が複数の仕事をして、一日中仕事をしていることになり、そのような生活様式をずっと続けるわけにはゆかず、持続可能ではない。
評価の仕方については、Face Timeではなく成果物の質で判断する。正しい言い方としては、パンデミックにより多くの人が「家への移行」をした。グローバルなパンデミックの中で、食料品を買うのも難しいような状況の中で、ベストの仕事の成果を出そうとしているのだから、人事評価でもその点を考慮すべき。ダメージが大きいので、時間の長さで評価すべきではない。

Q：　会社で女性の活躍推進を進めることに対して男性が逆差別を考えるときがある。カナダはどうか。
A：　D&I推進において、ジェンダー・べ―スでも人種ベースでも必ず反動がある。自分がそのことによって犠牲になったと考える人がいる。完璧を求めてはいけない。すべての批判を避けられると思ってはいけない。いくつかのやり方がある。まず、経済の大命題であるということ。女性が職場にいて労働力になることは、国の成長にとって不可欠。カナダは移民の国。出生率が低くなり人口が縮小しているため移民が増えている。なぜこれが重要かを話すときには、まず、カナダの経済繁栄のために重要、そして、2番目に社会的にも重要ということ。逆差別だという男性に対して、自分ならこう言う。「差別は何世紀も続いてきた。それを差別と呼んできていなかっただけ。男性は女性とは違った有利な立場に立っており、何世紀にもわたって男性優位の制度が男性をサポートしてきた。男性の機会を奪っているわけではない。95％の企業で男性がトップに立っている。女性は平等の戦いを求めているだけ。」

～講演の感想～
-　 ジェンダーの多様性推進のキーポイントを明快にお話しいただき、ジェンダーの問題を経営の
　　アジェンダとして掲げ続けることの重要性を改めて認識しました。カナダも日本と同様な問題を
　　抱えていると感じた。
-　社会的な状況は、カナダも日本もさほど変わらず、カナダと日本のGGIの差異は、政治・経済分野
　　での、意思決定権のあるポジションにいる女性の少なさに尽きると理解した。やはり諦めずに
　　行動・情報発信していかなければならないと強く感じた
-　コロナ禍の中、女性が働く場所がなくなっている実情を聞き、危機感を覚えました。若手の就業に
　　対する意欲が低下しないための策を、まずは社内で議論していきたい -　女性の活躍については、
　　日本と比べ何歩も進んでいると思っていたカナダであっても、女性活躍における課題は同じであり、
　　国の施策と個人の意識・努力をテコにここまでこられていることが強く印象に残った。
　　特にCOVID19により何十年も時代が逆行してしまう可能性は世界中の課題であり、今の日本の
　　結果を憂うだけでなく、自身の努力と自社や業界、国の制度につながるような推進活動はより強く
　　行動すべきと思った
-　 GGIの高いカナダでさえ、ジェンダージャップの課題は多数存在し解消へ努力し続けられている事
　　に感動しました。ターニャさんより教示頂いた会社でダイバーシティを実現するために有効であった
　　事例、目標を明確に計測する事、男性をスポンサーとして関与して貰う等、当社内でも諦めず継続
　　していきたい