「J-Win Executiveネットワーク 合宿」を、2020年2月15日にアークヒルズで開催し、34名のメンバーが参加しました。

【J-Win Executiveネットワーク 合宿　アジェンダ】
　■ 枝廣淳子氏　講演
　　　「サステナビリティの現況と、我々がこの課題に対応していくために大事にすべきこと」
　■ 青山剛氏　アクティビティ
　　 　「リーダーのための健康学」
　■ 内永ゆか子理事長　講話
　　　 「Executiveネットワークに期待すること」
　■ グループディスカッション
　 　　「Executiveネットワークの価値 － 私たちにとって、企業にとって
　■ 今年度の活動の振り返りと来期活動の方向性

2019年度の合宿では、環境ジャーナリストで有限会社イーズ 代表取締役の枝廣 淳子氏を講師に迎え、これからの世界を動かしていくうえで必要なサステナビリティの現況ついて教えていただきました。日本と世界では地球温暖化に対する意識に大きな違いがあり、私たちが今すぐにできることとして、意識を変えていかなくてはならない必要があることを実感しました。 講演の最後には、課題に向き合う組織リーダーとしてのあるべき姿や、「正々堂々と生きることがリーダーの根本」という日頃から肝に銘じておかなければならないメッセージをいただきました。

以下に講演の内容をダイジェストでご紹介します。
（＊肩書き等は講演当時のものです）


●温暖化は多重の悪循環　～サステナビリティの現況～
サステナビリティは前例が無い難しい分野です。サステナビリティの現況を理解するために、DSRというフレームワークをご紹介しましょう（Driving force＝原動力、State＝状態、Response＝対応）。「今の地球の気温」はS、「保険金の支払い」など企業の取り組みはRです。すべての事象をDSRで区分できるわけではありませんが、俯瞰して捉え、DSRに基づき整理することが大事です。
温暖化は悪循環が重なっています。
・温度上昇→大気中の水蒸気の増加→雨量増加
・温度上昇→乾燥→山火事の発生→CO2排出
・温度上昇→永久凍土の融解→メタンガス排出
このどこか１つにスイッチが入ると、温暖化が進みます。パリ協定では産業革命前の気温を基準に、上昇を2℃以内に抑えるという目標を掲げていますが、すでに0.85℃上がっており、世界的には非常事態であると認識されています。グレタさんに象徴される学生運動が起き、1400ほどの自治体が非常事態宣言を出していますし、それらに対し科学者が支持表明をするといった動きが急速に広がっています。

●地球温暖化が及ぼす日本への影響は？
日本の気温は、このままだと5℃くらい上昇するとされています。そうなると、洪水が増え、海面が60センチ上昇し、砂浜の85％が消えるでしょう。パリ協定には、各国の削減目標値から上昇気温を予測し、2℃以内を達成できない場合、目標を厳格化する仕組みがあります。日本の目標は「温室効果ガスの26％削減」ですが、このままだとさらに厳しい設定を迫られるはずです。企業は今後さらに厳しくなることを前提に、対策を考える必要があります。
最近、企業のあり方に地殻変動的な変化が起きています。マイクロソフトがCO2排出をゼロにすると宣言しました。EUでは大量にCO2を排出して生産された製品に対し、輸入時に課税する国境炭素税の導入を検討しています。資本主義について、株主利益を最優先する現在のあり方を問題視し、再定義する動きもあります。温暖化対策が進んでいるEUの動きは、特に注目してください。

●21世紀の世界を生き抜くために、リーダーに必要な７つの力
これまで話してきた課題に対峙するために、リーダーに必要な力を７つご紹介しましょう。
①長期的な流れの中に、現代を位置づける力
時代は必ず、前の時代の弊害を乗り越えるかたちで変わっていきます。中世ヨーロッパの客観性の無さという課題を解決したのが近代です。しかしその弊害が出ているのが今で、私は東洋思想のなかに解決策があると感じています。
②つながりをたどって、大きな全体像を理解する力
経済とは、材料を製品に変え利益を得ることです。その背景に材料を提供する自然資本があり、製品は幸せを創り出すものです。この「自然資本→経済→幸せ」のつながりをまとめた「ハーマン・デイリーのピラミッド」というフレームワークがあります。私たちは「持続可能か」「効率のみ追い過ぎていないか」「全人類の幸せになっているか」という視点で経済活動を評価する必要があります。
③あるべき姿からビジョンを描き、貫く力
ビジョンを作るには、現状に立脚するフォーキャスティング法と、ありたい姿から考えるバックキャスティング法があります。日本企業はフォーキャスティング法が得意ですが、これから必要なのはバックキャスティング法です。ぜひ、バックキャスティング法を身に付けてください。
④経済成長至上主義から脱却する力
地球は有限ですから、成長至上主義の呪縛を解く必要があります。参考になるのが、伊那食品工業の年輪経営、すなわち「企業は年輪が大きくなるようにゆっくり成長することが大事」という考え方です。
⑤あらゆる次元のレジリエンスを高める力
レジリエンスとは衝撃を受けたときにポキッと折れないしなやかさです。例えば、「1社依存」は短期的には効率的ですが、天災などの際は危機に陥りやすい弱さがあります。中長期的にみてレジリエンスを高めることは必須です。
⑥「違い」を「力」に変える共創力
多様性やインクルーシブが注目された結果、多様な人が集まるようになってきましたが、合意形成の方法がわからない状況に陥っています。これからは、多様性のある人たちが共創していくことが大事です。
⑦放勲と文思を統合する力
中国古典の書経に理想のリーダー像を示す「放勲欽明 文思安安（有無を言わせない強さ やさしさや思いやり）」という言葉があります。また、リーダーには男性性（論理性や分析力）、女性性（包容力や共感性）の両方が必要です。ご自分がどちらかに偏っている場合は、異なるタイプの人と組むことを考えてください。




J-Win Executiveネットワーク合宿では昼食を挟み午後からは90分間の「講演＆アクティビティ」で頭と体のストレッチをおこないました。


青山氏による講演は「健康」というキーワードからスタートしました。
健康というと数値ばかりを気にされる方も多いようです。数値も目標としては大切ですが、日々の健康に必要なのは「姿勢」「柔軟性」と「歩行」、つまりは歩き方です。毎日の生活の中で、まさに働き盛りの皆さんの貴重な時間を有効に使っていただきたい。ちょっとしたスキ間の時間におこなっていただきたい。そして今日覚えたことは今日から始めてください。
講演に続き、Executiveネットワークメンバー全員が会場いっぱいに広がって、青山氏によるリーダーとしての健康管理を体験から学ぶ「アクティビティ」へと進んでいきます。
先ずは各自がニュートラルな姿勢、「気をつけ」の姿勢のチェックから。直立不動のメンバーに「安定していますか」「快適ですか」と聞かれ、窮屈そうに「そうでもありません」との回答に笑い声が溢れる会場となりました。
リーダーのための健康法、それは正しい姿勢で、柔軟に、腕をしっかりと振って歩く。それを毎日、意識して続けていくことがとても大切なようです。