「J-Win Executiveネットワーク11月度定例会」を、2019年11月13日にアークヒルズで開催しました。

第一部は、10月度（前回）におこなわれた定例会でのアンケート結果報告とこれからの定例会講師の確認、研究会からは活動スケジュールが伝えられました。次いでグローバル委員会からは、10月に訪問したフィンランド大使館、ノルウェー大使館での面談概要が伝えられ、最後に、第9期High Potentialネットワークメンバーへの支援としておこなったラウンドテーブルの様子などが報告されました。

■ チャンピオンベルトを肩に、テーマソングとともに颯爽と登場

第二部では、新日本プロレスリング株式会社 代表取締役社長兼CEOのハロルド・ジョージ・メイ氏をお招きして、「イニシアティブがとれるリーダーシップ」についてご講演いただきました。
新日本プロレスリングの代表と聞いて、マスクを被った外国人レスラーを想像された方もいらっしゃると思います。
メイ氏はオランダ生まれ。グローバルでのビジネス経験も豊富で、企業の新ブランド育成やプロモーションなどを多く手掛け、ブランド構築を中心としたマーケティングに精通されているプロフェッショナル経営者のお一人です。
メイ氏のことは、当時、赤字経営に陥っていたタカラトミーを立て直し、大幅黒字に転換させるⅤ字回復に導いたばかりか、株価を４倍以上にしたことなどでご存知の方も多いと思います。
日本語、英語、オランダ語など6カ国語が堪能なメイ氏。日本が避けて通ることができないグローバルでの戦い方、企業のリーダーとして改革を推進するためのイニシアティブの取り方を、グローバル環境での活躍が期待されているExecutiveメンバーに向けて、流ちょうな日本語で熱く語っていただきました。


以下に講演の内容をダイジェストでご紹介します。
（＊肩書き等は講演当時のものです）


●ブランドマーケティングから企業マーケティングへ。

組織が転換期を迎えている今、リーダーシップがますます重要となっています。以前は、プロダクトマーケティングと言われたように、技術や品質など、既存品との差別化ができるものがあれば商品は売れていきました。やがて技術や品質において、競合品との差が無くなっていくとイメージを大切にするブランドマーケティングを重視するようになりました。
そして現在のマーケティングはさらに進化し、企業マーケティングが重要になってきています。どのような企業がつくっているのか、その企業のリーダーは誰で、どのようなことを考えているのか、といったブランドに至った背景まで関心をもたれるようになっているのです。このような変化に対応するためには、強いリーダーシップが必須となります。
私はビジネス経験を、外資系のグローバル企業と日本のオーナー企業で積みました。
全く異なるタイプの企業で培った経験から、社長のリーダーシップには以下の3つのタイプがあることに気づきました。
1．創業者（創業家）：創業のきっかけをつくり、己が信じた道を貫く熱意をもっています。絶対的な権力をもち、いざというときに決定力がある一方で、組織で上司や部下と対峙した経験が少ないため、人的スキルに乏しい面があります。
2．生え抜き：その企業のことを知り尽くしているので、人を適材適所に配置したり、誰からも反対されないような調和性の高い戦略を立てたりすることが得意です。一方で、リスクを避ける傾向があるので、改革には向きません。
3．プロ経営者：社外から招聘され、即戦力として組織を変えることが求められています。組織や業界のことを知らないため、客観的に物事を捉え、慣習に疑問をもち、メスを入れることができます。一方で、社員に受け入れられるまで時間がかかります。

●リーダーに必要なものは「イニシアティブ」と「熱意」

リーダーにもっとも必要な要素は2つあります。1つは「イニシアティブがとれること」。イニシアティブとは誰に言われなくても、新しいものや考え方を提案することです。人は変化を嫌いますから、社長が新たな方針を提示すれば、社員は必ず抵抗します。それでも貫くためには、社員の意見を聞くことが大事です。意見を受け入れる必要はありません。時間をかけて耳を傾け、意見を聴取する過程が重要なのです。加えて、提案や説得の際は、できるだけ数字を使うことも忘れてはなりません。言葉はその国の文化や受け取り手によってさまざまに解釈されますが、数字が表す意味は世界共通です。
もう1つは「熱意をみなぎらせること」。どんなに良い商品であっても、強い熱意をもって話さないと、相手の心に届けることはできません。伝えたいことが100あっても、相手に届くのはせいぜい70～80です。70～80を受け取った人がさらに次の人に伝達するときには、30～40になってしまいます。私は、伝えたいことが100あれば、200の熱意をもって話すようにしています。

●日本の経営課題を客観的な数字から考える

続いて、「日本の経営が危ないのではないか」ということについて、第三者が客観的に示している数字を使って、みなさんを説得してみましょう。
1つ目は、日本の上場企業の53％が同族会社であるという点です。日本は海外と比べ、同族会社が突出して多い国です。日本の経済を一部の人たちがコントロールしているとも考えられます。
2つ目は、日本の70%近い会社で後継者が決まっていないという点です。投資家は、後継者がいない会社に対しての投資に積極的ではありません。
3つ目は、世界の売り上げトップ2500社の過去5年間のプロ経営者率は23％という点です。日本のGDPは世界第3位ですが占有率は6％に過ぎません。日本が今後伸びていくには残りの94％の市場である国外に出ていく必要があります。その際、競争相手の4人に1人はプロ経営者となります。
4つ目は、世界の売り上げトップ2500社のCEOのうち、海外に住んだ経験があるのは45％という点です。約半分のCEOが異文化でビジネスをした経験があるということです。日本は何％なのかわかりませんが、半分ということはないでしょう。海外進出が必須なのに、これで大丈夫でしょうか。
そして最後の5点目は、日本の人口は1年に約1％減っていくという点です。これは、正確な数字ではありませんが、50年で50％減るとも言われています。市場が確実に毎年１％減っていくのに業績をプラスで維持していくには、海外進出しかないと私は思います。
こうした数字が示しているように、日本の経営にはさまざま課題があります。日本には独特な習慣があり、外国人プロ経営者が入りにくい面があります。しかし、グローバル化が進むことを考えると、外国人プロ経営者の思考についても知っておくことは必要ではないでしょうか。