「J-Win Executiveネットワーク10月度定例会」を、2019年10月8日にアークヒルズで開催し、29名のメンバーが参加しました。

第一部は、9月度（前回）定例会のアンケート結果報告、グローバルネットワーク委員会、メンバー拡大委員会からの活動報告に続き、10月16日におこなわれたHigh Potentialネットワーク支援、Executiveネットワークメンバーによるラウンドテーブルの様子が報告されました。

■ 女性で外国人　困難な状況で見せたリーダーシップとは

第二部では、日本マクドナルドホールディングス代表取締役社長兼CEOのサラ・カサノバ氏をお招きして、「マクドナルドの回復と継続的成長」についてご講演いただきました。
女性で、外国人という、日本の上場企業経営者としてはきわめてマイノリティでありながら、業績不振に不祥事が重なり、危機的状況に陥った日本マクドナルドの業績をV字回復させる経営革新を主導したカサノバ氏。
マクドナルドが愛され続けるブランドであるために、お客様やスタッフの意見を直接聞くことから始めたビジネスリカバリープランとは。そして困難な状況で見せたカサノバ氏のリーダーシップとは。
それぞれの企業で、数少ない女性役員として奮闘しているExecutiveメンバーに向けて、身振り手振りをまじえながら、もちろん英語でパワフルにお話しいただきました。


以下に講演の様子をダイジェストでご紹介します。
（＊肩書き等は講演当時のものです）


●マクドナルドが好き　だから私はここで働きたい

物心ついた6歳のころから私はマクドナルドが大好きだった。それはずっと変わることなく、MBAを修了した後に目指した会社も、もちろんマクドナルドだった。応募に対して一度は入社を断られてしまったものの、どうしてもマクドナルドで働きたかった私は、カナダのCEOに直接手紙を書き、入社することができた。この経験で、私は入社前からマクドナルドの大切な価値観を学んだ。それは、決してあきらめないことだ。
ロシアへの異動の話があった時も断ることはしなかった。結果、私にとっては素晴らしい最初のアドベンチャーとなった。
2004年には最初の来日。その後マレーシア、シンガポールと異動し、2013年にはCEOとして日本に戻ってきた。振り返ると、変革を行うには最高のタイミングであった。

●現状に満足してしまうことが成長を妨げる

日本マクドナルドが1971年に銀座に１号店をオープンしてから、お陰様でマクドナルドは大きく売り上げを伸ばしていった。しかし、うまくいく中でも問題は出てくる。現状に満足してしまうことが一番危険。成功は成長を妨げる。
2010年ごろ、マクドナルドは手詰まりとなっていた。世の中が変わっていったにもかかわらず、マクドナルドは変わらなかった。お客様の声を聴くことを止め、業績は下がりっぱなし。2013年には非常に厳しい状況となり、顧客も失っていった。さらに食の安全にかかわる問題が起きてしまい、売り上げはさらに落ち続けた。2015年は2010年の3分の１の業績となり、250億円の赤字となった。しかし、どん底に落ちたたら後は上がるだけ。どんな危機も無駄ではない。

●リーダーシップ　カスタマーとの関係性を再構築

まず私たちはお客様との関係を再構築するため、４７都道府県を訪問しお客様の声に耳を傾けた。お客様から直接ご意見を伺うことは非常に大切だ。お客様に何をマクドナルドに求めるか聞いたところ、美味しいバーガーとポテト、気さくな雰囲気、クルーのおもてなし、そしてスマイルが輝く、マクドナルドらしさを取り戻して欲しいという声を多く聞くことができた。
こうしたインサイトをもとに、2015年4月にビジネスリカバリープランを策定した。よりお客様にフォーカスしたアクション、店舗投資への加速、地域に特化したビジネスモデル、コストと投資効果の改善が4本柱だ。メニューを見直し、QSC&V(クオリティ・サービス・クレンリネス＆バリュー)の基本に立ち戻った。店舗の改装を進め、本社をNational Restaurant Support Officeと改称し、現場へのサポートを強化した。加えて、すべての投資の目的をお客様の店舗体験向上に集中させた。
しかし、どんなに素晴らしい戦略があっても従業員の強いコミットメントがなければうまくいかない。そこで私たちは2016年にキックオフミーティングを再開し戦略を共有した。そして「POWER of ONE」というテーマを全社で共有し、結束を高めた。
一丸となって取り組んだ結果、昨年は、上場以来最高益となり、お客様の満足度も過去最高となった。

●マクドナルドが愛され続けるブランドであるために

しかし、現状に満足してはならない。お客様の好みやライフスタイルは常に変化し、競争も激化している。そしてテクノロジーの進化により、ビジネスの在り方も変わってきている。しかしこれらすべてはマクドナルドにとってはビジネス機会だ。
現在私たちは、「未来型店舗体験」を導入している。店舗では、おもてなしリーダーがお迎えし、クルーがお食事をお客様のテーブルまで運んでくる。テクノロジー面では、モバイルオーダーというシステムを使えば、いつでもどこでもご注文いただける。
また、従業員の満足度にも更に取り組んでいく。現在クルーの満足度は８４パーセント。これらを更に向上させ、そして今年も約一万人を新たに採用していく。 一方、私たちは自社のビジネスのスケールとサイズを利用して、社会問題にも取り組んでいく。

マクドナルドはチャレンジングであればあるほど、やる気を奮い立たせることができる企業だ。
現状に満足してはならない、なぜなら、マクドナルドにはこれからも成長の余地があるからだ。
継続的な成長のために、それぞれのお客様に合わせたサービスを展開していく。より良い雇用主となれるよう努力していく。そして、環境問題への取り組みでも、業界を牽引していく。そしてお客様に愛されるブランドになれるよう取り組んでいく。


　Q) 事業が非常に厳しいときに日本に来てCEOとなられた。どうやって従業員の信頼を得たのか？
　A) 秘策はない。まず逃げないこと。オフィスを出て店に行き、人と会い、スタッフと話をすることに
　　　時間を費やした。毎月自分が出るビデオを作り、マネージャー、フランチャイジー全員に毎月送り、
　　　コミュニケーションを取った。結果、全員の目指す方向性が一つになった。
　　　また、顧客を重視した「Customer Focus Plan」と作り実施した。Customer Voiceを尊重した計画に
　　　は誰も文句を言えない。
　　　さらに小さい成功をみんなで祝うこと。これがマクドナルドを一つにする結果となった。
　Q) グローバル展開をする中で日本でのローカライズはどの程度の自由度を持って進めることができたか
　A) マクドナルドのフレームワークがあり、その中で動く限りは活動であれメニューであれ自由である。
　　　ルールに従う限りは問題ない。

　Q) 意見の違う人と働くために必要なことは？
　A) 人はみな違う意見を持っている。まず聞くことが一番であり、カスタマーボイスが一番大切。
　　　顧客の視点を把握し、事実を知れば誰も反対できない。まずは聞くこと。

　Q) 日本のダイバーシティをどう思うか。
　A) 確かに日本では女性のリーダーは少ないが、カナダやアメリカも10年前は同じだった。
　　　それらの国に追いつくべき。
　　　政府や企業もだが、女性もチャンスが来た時に決して拒まないこと。
　　　我々は誰かのサポートを受けてこのポジションにある。同じことを後輩にGive backをすべき。
　　　自信のない女性にはサポートすべき。皆さんはそれをする立場である。

　Q) なぜマックのCEOが日本のCEOにあなたを選んだと思うか？
　A) 日本でのマーケティングチームとしての経験があったこと。2013年にカスタマーの信用
　　　をなくしていたとき、カスタマーに何が必要かを考えた。自分がマーケティングのバックグラウンド
　　　があったからだと思う。戦略を立て、カスタマーに寄り添うことができるかどうか。たまたま自分は
　　　女性だっただけ。