「J-Win Executiveネットワーク1月度定例会」を、2018年1月15日(月)に港区赤坂のアークヒルズクラブで開催し、24名のメンバーが参加しました。
■人工知能開発には女性の感性が不可欠
今回は、1980年代から人工知能の研究に携わってきた、株式会社感性リサーチの黒川 伊保子氏を講師に迎え、「人工知能は天使か悪魔か」というテーマで講演が行われました。
これから本格的な人工知能時代を迎えるに当たって危惧されることや、AI開発において女性の感性に期待されることなど、研究者の目線からお話しいただきました。
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私は1983年にコンピュータメーカーに就職し、AI(人工知能)開発に携わってきました。1983年は、日本が人工知能の研究に取り組みはじめた年で、私たちの業界では「 AI 元年」と呼ばれています。1991年には、全国の原子力発電所で稼働する世界初の日本語対話型コンピュータを開発しました。それまでは、発電所でのトラブルの事例を調べるのに、情報を入力してから回答を得るまでに20分もの時間を要することなどが、技師たちのストレスになっていました。新しいコンピュータは迅速に回答を得られる処理を目指して開発されましたが、日本語の意味が通るように整った文章を瞬時に返すのは容易ではありません。男性開発者たちが頭を悩ませている中で、ヒントになったのが、「てにをは」を気にせず交わされる女性同士の会話です。入力された言葉をキーワードで引っ張ってきていくつかのパターンに当てはめて処理することで、スピーディーに回答を返すことに成功しました。しかし、時には適切な答えを返せず、技師に「ばかやろう」とコンピュータ上で叱られることも。そんなときには「ごめんなさい」と謝る言葉をプログラムに組み込みました。ある日、「ごめんなさい」というコンピュータの反応に対して、「すまない、俺も言い過ぎた」と返した技師がいました。私はこのやりとりのログを見て、AI開発者の責任として人の感性を解明しなければと決意したのです。機械がいつか人の心にすっと入り込んで、心を壊してしまうのではないかという恐ろしさを感じ、安易に人のふりをさせてはいけないことを実感しました。【黒川 伊保子氏のPROFILE】
株式会社感性リサーチ 代表取締役。人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家。
1983年 奈良女子大学理学部物理学科卒業。株式会社富士通ソーシアルサイエンスラボラトリにて、14年にわたり人工知能(AI)の研究開発に従事した後、コンサルタント会社勤務、民間の研究所を経て、2003年 株式会社感性リサーチを設立、代表取締役に就任。『アンドロイドレディのキスは甘いのか』『女の機嫌の直し方』『母脳~母と子の脳科学』『成熟脳~脳の本番は56歳から始まる』など著書多数。