これは今から2 年ほど前、マネージャー職について1 年ほど経った頃のことです。ちょうど、マネージャーの仕事も一通り経験し、組織強化や部下の成長に力を入れていこうと意識しだした時期でした。部下一人ひとりを成長させていくにはどうしたらいいのか。そう心を砕く私の気持ちなど知る由もない部下たち。そんな思いを何気なくこぼした時、娘が言ってくれたのが、このひと言でした。
昔から私たち母娘のコミュニケーションに欠かせない場が、お風呂でした。この時も娘とお風呂に入りながら、「私はこんなに部下のことを思っているのに、当の部下たちはちっともわかっていないのよね」なんて、無意識に口にしたのだと思います。そうしたら、何かを察したのでしょうね。「何か不満があるんだったら、私に話してよ。聞いてあげるから」と、娘が言ってくれて。気が付くと、娘を相手に抱えていたモヤモヤを吐き出していました(笑)。
すっかり愚痴っぽくなっている自分。そんな私に対し、娘が言ってくれたのが「お母さんって、本当に仕事が好きなんだね!仕事の話をしている時は、嬉しそうで目がキラキラ輝いているね」という言葉でした。これを聞いた時、正直、ハッとさせられました。改めて、自分は仕事が好きなんだと気づかされました。と同時に、幼い頃から寂しい思いをさせてきた娘が、働く私を誇りに思っていてくれていたことが嬉しくて、これまでやってきたことに自信が持てました。いろいろあったけれど、娘は着実に成長している。自分を信じて、部下の育成にも努めていこう。そう気持ちを新たにできたことは大きかったですね。
女性管理職の強みとは?
考えた末に見出した部下一人ひとりの育成
女性の管理職はまだわずかしかいない当社の中で、私は女性初の部長職についた二人のうちの一人でした。男性の管理職の多くは社内ネットワークを活かして情報を入手し、100 年以上に渡って培った組織的な知見に基づいてマネジメントをしています。しかし、彼らと同じスタイルを踏襲しても、中途半端になるのは明らかです。私の強みはなんなのだろうか。そう悩んだ末に見えてきたのが、"育てる"というキーワードでした。
男女を問わずマネージャーのミッションは、チームとして目標(数字)達成をすることです。そのためには、メンバー一人ひとりの成長、ひいては組織の強化が欠かせません。"育てる"というキーワードであれば、女性、そして母親としての視点も経験も活かすことができます。自分らしいマネジメントの基盤を見出したとはいえ、それが成果に結びつくまでには紆余曲折の、現在進行形です。
このひと言の件以来、日頃から仕事への取り組み姿勢や物事への考え方について、娘に話すようになりましたが、"これでいいのか"と迷う度に、中学生、高校生とたくましく成長していく娘の姿に何度も励まされていたような気がします。
~働く女性たちへのメッセージ~
プロとして、組織の一員として
思いを素直に伝えて自分なりの結果を出して
実は、娘と並んで私の重要なメンターは、主人。同じ会社に勤めている事もあって、何かと仕事の相談をしています。そして、主人に相談する度に、例えばプロセスだけでなく結果を出してこそプロであり、女性は結果に対するコミットメントが弱い傾向があるなど、組織の中で活躍する上で欠けている視点や姿勢に気づかせてもらってきました。厳しいコメントもありますが、じわじわと効いてくる漢方薬のようです。幸い、私にはそこを教えてくれる人が身近にいましたが、多くの女性社員には、そこを教えてくれる人がいません。女性社員の多くが、キャリアデザインや子育てと仕事の両立で悩んでいることを肌で感じ、自分の経験や知識が少しでも役立てばと思っています。実践の一環として、社内研修の講師をしたことをきっかけに、社内の女性たちに向けて定期的にキャリアに関するヒントやアドバイスをまとめたキャリアメール、通称「宮間メール」を配信しています。また、今までの経験の中から身近なヒントとして伝えたいのは、家族や同僚・部下などの身近な存在に対しても、思いを素直に伝えることの大切さ。例えば感謝の気持ちを持っていても、伝えないとわからないんですね。頑張るのは当たり前、結果を出してこそプロではありますが、素直に思いを伝えて、力みすぎずに時には上手に助けを求めることが、結果につながることもあるのではないかと思います。